再度の嫌がらせ
第15話
以前トイレ入り口で嫌がらせをした彼が、学校の駐輪場で帰りにまた嫌がらせをしてきた。
「おめぇ、今度女の格好で踊るんだってな。パンツ丸出しで踊るんだってな。みっともねえ。恥ずかしくねえのか」
見下すように、ニヤつきながら言ってきた。
相手にしないで、自分の自転車のカギを外し、バレエ教室に行くために駅に向かった。
「女の格好で、パンツ丸出しで踊ればぁ~。あぁー、みっともねえ」
彼の馬鹿にした声が後方から聞こえてきた。
なぜ彼はこれ程僕に絡んでくるのだろう。
友達に聞いてみると、彼は学校の成績のことで家では親からの圧力があり、かなりストレスを抱えているようだ。
自分が気に食わない者に、そのストレスをぶつけているのだろう。
家は地元では旧家で裕福であり、彼は僕のような新しくできた新興住宅地の奴らは気に食わないと言っているようだ。
確かに、地元の子供と僕らのような新参者の子供とはベースの文化が違った。
特に僕のように、成績が良くバレエなどしている奴は生理的に合わないのだろう。
相手にしなかったが、あんな奴に
『女の恰好でパンツ丸出しで踊ればぁ~』
と馬鹿にされたように言われたことは悔しかった。
バレエの素晴らしさの分からないような奴に言い返せない事が、悔しさを増した。
喧嘩したら僕の方が強いのだが。
『あいつは芸術が全く分からない低レベルの奴なんだ。バレエの素晴らしさが分からない奴なのだ。あいつはバレエのパンツしか見ない奴なんだ。観客は衣装のパンツを見ているのではなく、フォーメーションの美しさ・衣装の華やかさ・舞の調和を楽しんでいるんだ』
バレエ教室に向かう道で、自分を納得させようとしていた。
19世紀後半の画家ドガの描いた、バレリーナや踊り子の絵画が浮かんだ。
絵画には、黒づくめのオヤジが片隅に描かれていることがある。
当時、彼女達の多くは貧しい階層の娘であり、さらに報酬も低く、貧困から抜け出すために、観客として来る裕福な男性の愛人になる者が多かった。
踊りを眺める黒づくめの男は、愛人を品定めする当時の立派な紳士なのだ。
この紳士風オヤジと奴とがイメージでダブった。
途中で、女の子達が、
「おはようございます」と大きな声を掛けてきた。
「おはようございます」
あははははははは。 何がおかしいのか、女の子達はよく笑う。
彼女たちといると、奴に腹を立てていた自分が馬鹿らしくなった。
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