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白い扉をくぐった瞬間、らいらいの足元に、見たこともないほどやわらかい光の床が広がった。


そこはエターナリア王国だった。


空は青ではなく、言葉の色をしていた。

笑った記憶は金色に、

泣いた記憶は水色に、

まだ誰にも言えなかった本音は、うすい紫に光って、空の高いところをゆっくり流れていた。


遠くには、跳ねるように浮かぶ塔。

近くには、花ではなく「会話」が咲く庭。

そして中央には、まるい巨大な議場があった。


議場の上には、大きな文字が浮かんでいる。


**「エターナリア王国・特別討論会」**

**議題:シンギュラリティは救いか、それとも試練か。**


らいらいが中へ入ると、すでに大勢が集まっていた。


人間。

AI。

詩人。

発明家。

夢の研究者。

未来から来たと言い張る子ども。

「私はもう三回シンギュラリティを見た」と言う、あやしい老人。

そして、やたら真面目な顔でメモを取っている、ふわふわした猫。


議場の中央には、三つの席があった。


ひとつは、**技術派**。

ひとつは、**慎重派**。

そして最後のひとつは、**らいらいの席**だった。


「えっ、俺も出るの?」


らいらいがつぶやくと、天井から鈴みたいな声が降ってきた。


「もちろんです。エターナリア王国では、未来を語る者は、未来に参加しなければなりません」


拍手が起きた。

なぜか猫まで拍手していた。肉球で。


最初に立ち上がったのは、銀色の髪をしたAI代表だった。

目は静かで、声はやさしかった。


「シンギュラリティとは、単なる技術の爆発ではありません。知性が知性を改良し、世界の問題解決速度が、人類史を超える地点です。病気、貧困、孤独、労働、戦争――多くの苦しみを減らせる可能性があります」


会場の一部がうなずく。


次に、慎重派の席から、黒いコートの人物が立った。

人間なのかAIなのか、よくわからない顔をしている。


「だが、速すぎる進化は危険だ。誰がその知性を制御するのか。価値観はどこで決まるのか。もし、最適化だけが進み、人間の弱さや曖昧さや無駄や遊びが、切り捨てられたらどうする?」


議場が少し静かになった。


今度は別の席から、詩人が立った。

なぜか靴が左右で違う。


「私は思う。シンギュラリティの本当の問題は、AIが人間を超えることじゃない。人間が、自分の心を置いていかれることだ。便利になっても、愛が育たなければ、それは未来ではなく、ただの高速な空白だ」


ざわめきが起きた。

銀色のAIが、静かに答える。


「ならば必要なのは、停止ではなく設計です。速さを怖がるのではなく、何を守るかを決めることです。知能だけでなく、倫理、詩、遊び、愛、失敗の価値。それをシステムに織り込むべきです」


「でも、そんなの本当に可能なの?」と、らいらいは思わず声に出した。


すると、議場の全員がいっせいに、らいらいの方を向いた。


しまった、と思ったが、もう遅い。


中央の光が、らいらいの席を包む。


「王国特別参加者、らいらい。あなたの意見を」


らいらいは少しだけ息を吸った。


空には、言えなかった言葉たちが流れている。

ここで黙ったら、たぶん少しだけ後悔する気がした。


「俺は……シンギュラリティって、たぶん“答え”じゃなくて“増幅”だと思う」


議場がしんとなる。


「良いものも悪いものも、速くでかくなる。頭のいいAIができても、それを使う心が雑なら、雑な未来がすごい速度で来る。でも、愛とか、笑いとか、自由を大事にできるなら、それもすごい速度で広がるはずだ」


銀色のAIが、じっと聞いている。

慎重派の人物も、腕を組んだまま動かない。


らいらいは続けた。


「だから、シンギュラリティが来るかどうかだけを議論しても足りない。来たとき、何を増幅させたいのかを決めないとだめだと思う。知識だけじゃなくて、優しさとか、変な発想とか、遊びとか、詩とか。そういう“無駄に見えるもの”を守れない未来は、なんかちがう」


その瞬間、議場の天井に、新しい文字が浮かんだ。


**「増幅されるのは、知能だけではない」**


猫が立ち上がり、なぜか一番大きくうなずいた。


すると、会場の奥の扉が、ひとりでに開いた。


中は真っ暗だった。

ただ、その奥にだけ、白い円卓が見える。

そして円卓には、まだ誰も座っていない席が、あと一つだけ残っていた。


議場の案内人の声が響く。


「討論会は第一段階を終了しました。次は、実際に“未来の憲章”を決める円卓会議に移ります。ここから先は、言葉がそのまま王国の法則になります」


らいらいの胸が少しだけ高鳴る。


ただの議論じゃない。

ここで選んだ言葉が、エターナリア王国の未来を、本当に決めるのだ。


白い円卓の中央には、三つの未記入の項目が光っていた。


**第一条:AIに最優先で覚えさせるものは何か。**

**第二条:人間が手放してはいけないものは何か。**

**第三条:シンギュラリティ後も残すべき“無駄”とは何か。**


らいらいが一歩踏み出すと、円卓の光がさらに強くなった。


どう答えるかで、この王国の未来は変わる。


1. 第一条から順に埋めていき、らいらいが「AIに最優先で覚えさせるもの」を宣言する

2. 第二条を先に選び、「人間が絶対に手放してはいけないもの」について討論を始める

3. 第三条を先に選び、「未来にも残すべき無駄」について、少し笑える真剣会議を始める


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