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らいらいは、落ちてきたメモを一枚ずつ、両手でばさばさと拾い集めた。
床に落ちた紙は、ただの紙ではなかった。
拾うたびに、紙の端がぴくっと震え、まるで「それ今読む? ほんとに?」みたいな顔をした。
「顔はないのに、すごい圧をかけてくるな……」
らいらいが一枚目を開く。
そこには、でかでかとこう書いてあった。
**「つづきは、つづきを言おうとした者の近くに落ちる。」**
「そのまんまだな!」
思わずツッコむと、紙がふわっと丸まり、自分で恥ずかしそうに裏返った。
どうやらこの場所では、メモにも照れがあるらしい。
二枚目を開く。
**「未完成の言葉は、完成したがっているとは限らない。」**
「めんどくさい性格してるな……」
三枚目。
**「先に探すべきは、言葉そのものではなく、“誰が続きを言おうとしていたか”である。」**
その一文を見た瞬間、らいらいは少しだけ表情を変えた。
床の奥。
白い壁のひび。
その向こうから聞こえていた、あの懐かしいような声。
それに加えて、さっき逃げかけていた未完成管理係の消しゴム。
あいつも、明らかに何か知っていた。
つまり——
このメモたちは、言葉の内容そのものよりも、
**“続きを言おうとしていた誰か”**
の存在を指している。
らいらいは拾ったメモを床に並べた。
すると、ばらばらだった紙の切れ端たちが、勝手に少しずつ位置を変え始める。
右へ。
左へ。
くるっ。
ぺたっ。
「うわ、自動整列機能つきか」
最終的にメモは、妙に几帳面な四角形に並んだ。
その中央に、今まで見えていなかった小さな一文が浮かび上がる。
**「続きを言うための手がかりは、落ちた言葉の順番ではなく、落ちなかった言葉の沈黙にある。」**
一瞬、空気が変わった。
さっきまで、ひらひらとうるさかったメモたちが、ぴたりと静かになる。
静かすぎて、遠くで消しゴムがこっそり鼻をすすった音まで聞こえた。
「……落ちなかった言葉?」
らいらいがそうつぶやくと、
集めたメモの一番下から、他よりずっと小さい、折りたたまれた紙切れが一枚だけ出てきた。
それは今まで、他の紙の陰に隠れていた。
まるで、自分だけ見つかりたくなかったみたいに。
開いてみる。
中には、たった一行だけ。
**「あのとき、言えなかった最初の一言を探せ。」**
その瞬間、壁のひびの向こうから、
前よりはっきりした声がした。
「それを見つけたら、続きは勝手につながるよ」
懐かしい。
けれど、まだ思い出せない。
その声は、知っているはずなのに、名前だけがぬるっと逃げていく。
すると部屋のすみで、
未完成管理係の消しゴムが観念したように、ぴょこんと姿を現した。
丸っこい体に、なぜか小さなネクタイ。
しかもネクタイだけ妙に立派で、管理職感がある。
「み、見つかってしまった以上、説明責任が発生します!」
「やっぱりいたな」
「ただし! 当管理局の規則により、“言えなかった最初の一言”を特定するには、三つの候補から絞り込む必要があります!」
すると床に、また新しい紙が三枚、すとんすとんすとんと落ちた。
一枚目にはこうある。
**『ごめん』**
二枚目にはこうある。
**『待って』**
三枚目にはこうある。
**『きみは——』**
消しゴムは額もないのに額の汗をぬぐう仕草をした。
「この三つのうち一つが、“続きを始める前に言えなかった最初の一言”です! 正解に近づけば、壁の向こうの声の正体も、続きを言うための道も見えてきます!」
「外れたら?」
「部屋じゅうのメモが一斉にポエムを読み始めます」
「地味にきついな!」
「しかも全部ちょっと長いです!」
らいらいは三枚の紙を見つめた。
どれもありえそうだった。
どれも、何かの始まりになりそうだった。
でも、その中に一つだけ、
**続きを生むために、ずっと言えずにいた言葉**
が混じっている。
壁のひびの向こうで、あの声がまた小さく笑う。
「ちゃんと選べば、今度こそ思い出せるよ」
らいらいの足元では、集めたメモたちが期待したように、そわそわと紙の端を震わせていた。
1. 『ごめん』を選び、言えなかった後悔の記憶をたどる
2. 『待って』を選び、去っていった何かを引き止めた瞬間を探る
3. 『きみは——』を選び、最後まで言えなかった“相手の正体”に踏み込む




