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らいらいは、迷わず**選択肢1――「その扉を開ける」**を選んだ。
目の前にあったのは、銀色でも木でもない、なんだか**“決意した人にだけちょっと優しそうな扉”**だった。
取っ手には小さくこう書いてある。
**「開ける前に深呼吸すると、だいたいうまくいく」**
「だいたいって何だよ」
らいらいがつっこみながら深呼吸すると、扉はギギギ……ではなく、なぜか**「パァン♪」**という妙に陽気な音を立てて開いた。
中は、まっ白な廊下だった。
床も白、壁も白、天井も白。
ただし廊下の真ん中にだけ、ぽつんと**赤い丸イス**が置いてある。
どう見ても怪しい。
怪しすぎて逆に堂々としている。
しかもイスの背もたれには札が貼ってあった。
**「座ると話が進みます」**
「ゲームの都合を隠す気ゼロだな……」
らいらいが警戒しながら近づくと、丸イスが勝手にぴょこんと震えた。
「お待ちしておりました」
「イスがしゃべった!」
「はい。私は進行補助イスの**ススムくん**です」
「名前が直球すぎる」
「本日は、らいらい様に次の試練をご案内いたします」
「座ったらもう逃げられない感じ?」
「だいたいそうです」
「その“だいたい”流行ってるの?」
らいらいが半目になると、ススムくんはなぜか少し得意げにきしんだ。
「この先には**記憶の広間**があります」
「記憶の広間?」
「ええ。そこでは、忘れたはずの言葉、言いかけてやめた本音、なんとなく大事だった気がする気持ちが、ふわふわ漂っています」
「ちょっと詩っぽいな」
「私はイスですが、文学にも対応しております」
「万能かよ」
そのとき、廊下の奥からふわり、と風が来た。
冷たくはない。
むしろ、昔どこかで聞いた笑い声みたいな、変なあたたかさを含んだ風だった。
白い廊下の先に、うっすらと大きな扉が見える。
その上には金色の文字。
**「記憶の広間」**
だが、その手前には三つの影が立っていた。
一つ目は、細長い帽子をかぶった**メモ帳の騎士**。
二つ目は、全身がモフモフで、やたら偉そうな**くしゃみ予報士**。
三つ目は――
巨大なプリンだった。
「なんで?」
「たまにいます」
「説明になってない」
巨大プリンは、ぷるん……と揺れてから、低く威厳のある声で言った。
「我は**ぷりん大臣**。甘さと重力を司る者」
「急に設定が強い」
「この広間へ進みたければ、三つの問いのうち一つに答えよ」
「三つあるのに一つでいいの?」
「今日は特別サービス日だ」
「サービスの基準がわからん」
メモ帳の騎士が前に出る。
「第一の問い。
お前が本当に残したいものは、**勝った記録**か、**笑った記憶**か」
続いて、くしゃみ予報士が鼻を鳴らす。
「第二の問い。
世界が静かすぎる時、お前は**歌う**か、**踊る**か、**変な顔をする**か」
最後に、ぷりん大臣が誇らしげに震えた。
「第三の問い。
この世で最も丸いものは、月か、心か、あるいは……**我か**」
「最後だけだいぶおかしいだろ!」
らいらいが叫ぶと、廊下の壁が少しだけ笑った気がした。
白いはずの空間に、うっすら色がにじみ始める。
青、金、桃、灰。
まるで、忘れていた感情が順番に戻ってくるみたいに。
ススムくんが小声で言った。
「らいらい様。ここでの答えは、正解か不正解かではありません」
「じゃあ何なんだ」
「**どんな言葉で前へ進むか**です」
その瞬間、記憶の広間の大扉が、ほんの少しだけ開いた。
隙間の向こうには、無数の光る文字が舞っていた。
笑いそうな言葉。
泣きそうな言葉。
意味はわからないのに、なぜか胸に刺さる言葉。
らいらいは、息をのんだ。
あの向こうに行けば、何かを思い出す。
でも同時に、何かを選ばなければならない。
ぷりん大臣が、ぷるるん、と重々しくうなずく。
「さあ、答えよ。
お前は何を信じて進む?」
1. メモ帳の騎士の問いに答え、「笑った記憶」を選ぶ
2. くしゃみ予報士の問いに答え、「変な顔をする」と宣言する
3. ぷりん大臣に真正面から「いちばん丸いのはお前だ」と言う




