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らいらいは、光る床の上にそっと足を置いた。
さっき自分で選んだ**3番の扉**には、こう書かれていた。
**「会議しない会議室」**
どう考えても嫌な予感しかしない名前だった。
会議しないなら会議室である必要がない。
だが、らいらいがドアノブに触れた瞬間、扉は勝手に開いて、ものすごく気まずそうな空気が流れ出してきた。
中には巨大な丸テーブルがあり、その周りに妙な連中が座っていた。
ひとりはネクタイをしたカエル。
ひとりはメガネをかけたパン。
ひとりは腕組みしている掃除機。
そして一番奥には、王様みたいな椅子にどっかり座る、**白いハト型のコピー機**がいた。
「来たか」
と、コピー機が言った。
らいらいは一歩下がった。
「コピー機がしゃべった」
「失礼だな」
コピー機はムッとした。
「私はただのコピー機ではない。**議長プリントバード三世**だ」
「むしろ普通のコピー機より変だよ」
するとネクタイカエルが机を叩いた。
「静粛に! 本日の議題は、らいらいが本当にらいらいかどうかです!」
「いや見れば分かるだろ」
「見た目だけでは判断できん!」
とメガネパン。
「この世には、らいらいっぽい雰囲気だけをまとった別人もいる!」
「そんなやついるの!?」
「いるかもしれないから会議している!」
「最悪の会議理由だな!」
掃除機がぶおおんと低くうなった。
「本人確認には三つの試練が必要です」
「急にまともそうなこと言った」
「第一の試練。笑い」
「笑い?」
「第二の試練。ひらめき」
「うん」
「第三の試練。勢い」
「最後だけ雑じゃない?」
するとコピー機議長が、胸のあたりから紙を一枚ぺっと吐き出した。
そこには大きくこう書かれていた。
**本人確認試験**
**問1:一番えらいのは誰か。**
らいらいは紙を見た。
部屋を見た。
カエルを見た。
パンを見た。
掃除機を見た。
コピー機を見た。
そして言った。
「今この部屋で一番えらいのは、たぶん紙を出せるやつだ」
一瞬、全員が静まり返った。
コピー機議長は、ぶるっと震えた。
「……深い」
「いや、だいぶ適当だよ」
「深い適当こそ本物のらいらい……!」
とカエルが涙ぐんだ。
「うそだろ」
次の瞬間、天井からクラッカーが鳴り、紙吹雪が降ってきた。
その紙吹雪を掃除機が全部吸い込んだ。
吸い込みながら、自分で「わーい」と言っていた。
忙しいやつだった。
「では第二問!」
メガネパンが立ち上がる。
「ここに、普通のドアが三つあります!」
壁がウィーンと開き、本当に三つのドアが現れた。
一つ目には
**「開けると拍手されるドア」**
二つ目には
**「開けるとちょっと褒められるドア」**
三つ目には
**「開けると知らないおじさんが全力で謝ってくるドア」**
らいらいは眉をひそめた。
「どう考えても三つ目が気になる」
「それを選ぶ理由は!?」
とカエル。
「人生、そういう意味の分からなさに引かれる時がある」
「らいらいだ……!」
また感動された。
らいらいが三つ目のドアを開けると、本当に知らないおじさんがいた。
しかもすでに土下座していた。
「すまん!!」
「何が!?」
「それは分からん!! でもなんか、今までの全部が!!」
「謝罪のスケールがでかいな!?」
おじさんは顔を上げ、らいらいを見るなり泣き始めた。
「君だったか……この部屋の空気を変える者は……」
「いや、空気変えたのほぼおじさんだよ」
「受け取ってくれ」
おじさんは胸元から金色の小さな鍵を取り出した。
鍵には、小さく刻まれていた。
**「笑って開けろ」**
らいらいがそれを受け取ると、おじさんは満足そうにうなずき、そのままドアの奥に消えていった。
最後まで何に謝っていたのかは謎のままだった。
会議室に戻ると、コピー機議長がこれまでになく真剣な声で言った。
「その鍵は、奥の**爆笑保管庫**を開ける鍵だ」
「なんだよその名前」
「世界から消えた笑いがそこに眠っている」
「急に話がでかくなったな」
「しかし、開けるには条件がある」
「また試練?」
「うむ。最後の試練だ」
掃除機がすっと前に出た。
「らいらい。今から一分以内に、この部屋の全員を笑わせてください」
「無茶振りすぎる」
「失敗したら?」
「会議が延長されます」
「それが一番嫌だ!」
らいらいは額に汗をにじませた。
カエルは真顔。
パンも真顔。
掃除機は吸いすぎて逆に静か。
コピー機議長は紙を半分だけ出したまま止まっている。
重い空気。
まるで月曜朝の社内チャットみたいな空気だった。
らいらいは考えた。
ここで上手いことを言おうとしてもダメだ。
この部屋は、常識を踏み外したものしか通じない。
だから、らいらいは静かに椅子の上に立ち、
コピー機議長を指さして言った。
「議長。紙、口から出てるよ」
コピー機議長は反射的に叫んだ。
「知ってるわ!!」
その瞬間だった。
カエルが吹いた。
パンがテーブルに倒れた。
掃除機が「ブホッ」と変な音を出し、吸った紙吹雪を全部逆噴射した。
コピー機議長は自分で笑いながら、自分の顔を五枚連続で印刷してしまった。
部屋じゅうがぐちゃぐちゃになった。
「合格だ!!」
「こんなので!?」
「こんなのが一番強い!!」
カエルが叫ぶ。
「計算された笑いではない! 事故の美学!!」
メガネパンも泣いていた。
「本物のらいらいだ!!」
「本人確認、雑すぎるだろ……」
すると会議室の奥の壁が割れ、七色の光が漏れ出した。
その中心に、金色の錠前がついた大きな扉が現れる。
**爆笑保管庫。**
扉の向こうからは、誰かが笑いをこらえているような音が聞こえる。
くっ、くくっ、という声が、無数に重なっていた。
らいらいが鍵を握ると、コピー機議長が小さな声で言った。
「その先には、笑いの核がある」
「笑いの核?」
「世界が本気で沈みそうになった時、最後に残るものだ」
「そんな大事なもの、こんなメンバーで守ってたの?」
「そうだ」
「不安すぎる」
「だから君を待っていた」
らいらいは扉の前に立った。
鍵穴に鍵を差し込む。
かちり、と音がする。
だがその瞬間、背後で**別のドア**が勢いよく開いた。
振り返ると、そこには黒いスーツに身を包んだ三人組が立っていた。
全員サングラス。
全員無表情。
そして胸元には同じバッジ。
**「静粛庁」**
真ん中の男が低い声で告げた。
「その扉を開けてはならない」
「誰?」
「笑いを規制する者たちだ」
「嫌な組織来たな」
左の女が一歩前へ出る。
「世界は静かであるべきです」
右の男が続く。
「笑いは秩序を乱します」
真ん中の男が締める。
「特に、意味の分からない笑いは危険です」
らいらいは鍵を握ったまま、にやっとした。
「じゃあ、開けるしかないな」
静粛庁の三人が一斉に手を上げる。
コピー機議長たちも身構える。
会議室の空気が、一気に張りつめた。
次の瞬間、金の扉の向こうから——
**「ぷっ」**
と、誰かの吹き出す声が聞こえた。
それだけで、静粛庁の右の男の口元が一瞬ゆるんだ。
「あ、今ちょっと笑った」
と、らいらいが言うと、
男は動揺した。
「わ、笑っていない」
「いや今のはかなり危なかった」
「違う」
「口、ぷるぷるしてるよ」
「していない」
「してるって」
「していない!」
「してるってば!」
「して……ふっ」
右の男は、とうとう吹き出した。
その一瞬で、会議室の均衡は崩れた。
静粛庁の残り二人が「何をしている!」と叫ぶ中、
らいらいは金の扉を——勢いよく開けた。
扉の向こうにあったのは、
まぶしい光と、
ぐるぐる回る階段と、
そして階段の下から響いてくる、とんでもなく陽気な声だった。
**「ようこそ、笑いの地下心臓へ!!」**
そこで物語は、また新しい混乱に飛び込んでいった。
1. らいらいはそのまま地下心臓へ飛び込む
2. らいらいは静粛庁のリーダーに先にツッコミを入れる
3. らいらいはコピー機議長を抱えて一緒に突入する




