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らいらいは、目の前に現れた二つ目の扉――
**「なんかイヤに静かなほう」**を選んだ。
扉を開けた瞬間、空気が変わった。
さっきまでガヤガヤしていた廊下の気配が、すうっと消える。
そこには、やたらと広い円形の部屋があった。床はつるつるの黒。天井には、星みたいに小さな光がびっしり浮かんでいる。
そして部屋の中央には、ぽつんと一台だけ、**自動販売機**が置かれていた。
どう見ても怪しい。
らいらいは眉をひそめた。
「……こんな神秘的な部屋に、自販機?」
すると自販機が、勝手にしゃべった。
「いらっしゃいませ。こちらは**運命の飲みもの自販機**です。あなたにぴったりの未来を一本お選びします」
「うわ、しゃべった」
「なお、当たりが出ると、願いが一つ叶います」
「急にテンション上がること言うな」
自販機のボタンを見ると、三つだけ光っていた。
**・ぴかぴかレモン宇宙味**
**・やけに気になる麦茶ゼロ**
**・名前のない缶**
らいらいは少し考えたあと、なぜか一番地味な
**やけに気になる麦茶ゼロ**
を押した。
ガコン。
落ちてきた缶は、見た目は完全に麦茶だった。
だが、缶には小さくこう書かれていた。
**「飲むと、五分だけ“世界の本音”が聞こえます」**
「怖っ」
でも、こういう時に飲まないと話が進まない。
らいらいは覚悟を決めて、ぷしゅっと缶を開け、一口飲んだ。
その瞬間。
部屋じゅうの“本音”が、一斉に聞こえてきた。
天井の星の光がささやく。
「実はあれ、星じゃなくて小さい懐中電灯です」
床がぼそっと言う。
「本当はそんなにつるつるでもない。頑張ってる」
自販機が低い声でつぶやく。
「本当は炭酸も売りたい」
らいらいは吹き出した。
「なんだこの部屋、全員ちょっと切ないな」
すると、今度は部屋の奥の壁が、ぎぎぎ……と音を立てて割れた。
中から現れたのは、長い白いひげを生やした、妙に姿勢のいい老人だった。
だが服装が変だった。
上半身は賢者っぽいローブなのに、下はどう見てもジャージだった。
老人は重々しく口を開いた。
「よくぞ“本音の麦茶”を選んだな、らいらいよ」
「下ジャージなのに、声だけ重いな」
「わしは**本音の番人・ホンネール三世**」
「絶対あとでふざけるタイプの名前だ」
ホンネール三世はコホンと咳払いした。
「この先へ進むには試練を越えねばならん。
おぬしは今から、三つの声の中から“たった一つの真実”を見抜くのだ」
老人が杖を振ると、空中に三つの顔が浮かんだ。
一つ目の顔が言う。
「この先には宝がある」
二つ目の顔が言う。
「この先には罠がある」
三つ目の顔が言う。
「この先には宝も罠もあるし、なんならおやつもある」
らいらいは腕を組んだ。
「いや三つ目だけ、情報量が多いな」
すると、さっき飲んだ麦茶の力で、顔たちの“本音”が聞こえてきた。
一つ目の顔の本音。
「宝って言ったけど、ほんとは宝箱の形をしたスツール」
二つ目の顔の本音。
「罠って言ったけど、つまずきやすい段差が一個あるだけ」
三つ目の顔の本音。
「おやつはある。これは本当。しかもけっこううまい」
らいらいは即答した。
「三つ目!」
ホンネール三世の目が見開かれる。
「な、なぜわかった!?」
「おやつが本物っぽかったから」
「そんな理由で見破られたの初めてだ……!」
その瞬間、奥の扉が金色に光って開いた。
中から、ふわりと甘い匂いが流れてくる。
どうやら本当に、おやつはあるらしい。
しかし、扉の向こうからは、もう一つ別の音も聞こえてきた。
カタ、カタ、カタ……
なにかが、こちらへ歩いてくる音だ。
そして暗がりの奥から姿を見せたのは――
**巨大なビスケットでできた兵士たち**だった。
しかも先頭の一体が、妙にいい声で叫ぶ。
「侵入者発見!
おやつの間を守れ!」
らいらいは思わず一歩下がる。
「おやつ守る兵士、思想が強いな!」
ホンネール三世があわてて叫ぶ。
「まずい! やつらは**サクサク近衛兵**!
倒しても食べられるが、食べすぎると眠くなる!」
「最悪に平和的で厄介な敵だな!」
サクサク近衛兵たちは、一斉にらいらいへ向かって走り出した。
床にはクッキーの欠片が散り、部屋じゅうにバターの香りが満ちる。
逃げるか、戦うか、それとも食べるか。
らいらいの次の一手で、この奇妙な間の運命が決まる。
1. 正面から突っ込み、サクサク近衛兵を食べながら突破する
2. ホンネール三世のジャージを利用して、おやつの間の奥へ逃げる
3. 自販機にもう一本飲みものを出させて逆転を狙う




