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らいらいは、ためらいなく1番のレバーを引いた。
すると会議室の真ん中にあった丸テーブルが、ぶるぶる震えながらゆっくり割れ、中から金ぴかのエレベーターがせり上がってきた。扉には、でかでかとこう書いてある。
「ぜったいに押すな会議専用エレベーター」
らいらいは言った。
「押すなって書いてあるな」
すると壁のスピーカーが、あわてた声で叫んだ。
「押すなよ! 本当に押すなよ! 絶対だぞ!」
らいらいはちょっと考えてから、にやっと笑った。
「これは押してほしいやつだな」
ぽち。
次の瞬間、エレベーターの扉が勢いよく開き、中には黒いスーツを着たハトがぎっしり乗っていた。全員、首から社員証をぶらさげている。
「おはようございます」
「おはようございます」
「おはようございます」
「議題の確認をお願いします」
らいらいは一歩下がった。
「なんだこの圧の強い会社員ハトたちは!」
その中でもひときわふくらんだ胸を持つハトが前に出て、メガネをくいっと上げた。もちろんハトなので、くちばしで無理やり上げた。
「私、会議部長のポッポ山です。本日の議題は、“らいらいがなぜ毎回だいたい面白い目にあうのか”です」
「そんな議題、却下だろ」
「却下は却下検討会議を通してからになります」
「めんどくさすぎる!」
すると、エレベーターの奥から、さらに大きな椅子がごろごろ出てきた。玉座のようなそれに座っていたのは、まさかの――鼻の形をした王冠をかぶる、巨大なくしゃみ神だった。
「ぶえっくしょーーーい!」
神のくしゃみで、会議室の資料が一斉に空へ舞った。ハト社員たちも、わあああと飛ばされ、ぴたぴた壁に張りついた。
らいらいは目を細めた。
「おまえ、前にもいたな」
くしゃみ神は、ちょっと気まずそうに鼻をすすった。
「うむ。実はこの会議室、わしの管理区域じゃ。おぬしが1を選んだことで、“議論の間”の最深部まで来てしまったのだ」
「なんかすごそうだな」
「ここでは、どんなくだらない話でも三回会議を通すと世界のルールになる」
らいらいは固まった。
「それ、めちゃくちゃ危なくない?」
するとポッポ山部長が資料をひろげた。表紙には大きく書いてある。
「提案書:プリンは飲み物として正式認定すべきか」
「どうでもいい会議だった!」
「どうでもいい会議こそ世界を変えるのです」
と、ハトたちが一斉にうなずく。
さらに別のハトが手を挙げた。
「第二議案。廊下で急にスキップした者には拍手を送る条例について」
「それは少しいいな」
「第三議案。ラーメンの湯気に顔が見えたら先祖からの応援とみなす件」
「だんだん嫌いじゃなくなってきたな……」
だがそのとき、部屋の奥の巨大スクリーンが突然ついた。
映し出されたのは、真っ赤なスタンプを持つ謎の存在――議事録魔人ギロン。
ギロンは低い声で言った。
「会議の数が多すぎる。世界が書類で埋まる前に、今すぐひとつだけ決めろ。笑いを残すか、秩序を残すか」
ハトたちがざわつく。
くしゃみ神も鼻を押さえながらうなる。
らいらいは、しばらく黙っていたが、やがて机の上に飛び乗った。
「決まってるだろ」
会議室が静まり返る。
「秩序だけの世界なんて、つまらない。だけど笑いだけでも転ぶ。だから――笑って転んで、そこからまた立ち上がれる世界にする」
一瞬、沈黙。
次の瞬間、ハト社員たちが大騒ぎで羽をばたつかせた。
「名言です!」
「今の議事録に残します!」
「拍手条例がいきなり必要になりました!」
くしゃみ神は感動して、また巨大なくしゃみをした。
「ぶええええっくしょーーーい!」
その風で、天井の一部がめくれた。
そこには、上へ続く細い階段があった。階段の上には、小さな看板。
「次は 判決の間」
ポッポ山部長が青ざめる。
「まずいです。あそこにいるのは、すべてを白黒つけたがる“ジャッジうさぎ”……!」
らいらいは階段を見上げて、にやりと笑った。
「面白そうじゃん」
すると、階段の上から、こんこん、と木槌の音が響いた。
「被告、らいらい。入廷せよ」
空気が少しだけ張りつめる。
それでも、らいらいの足は止まらなかった。
1 判決の間へ入る
2 ハト社員たちと先に作戦会議をする




