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らいらいは、びっくり館のきしむ廊下を、そろりそろりと進んだ。
さっき選んだ「1」――それは、
**“光っているドアを開ける”**
という選択だった。
ドアには、金色の文字でこう書かれていた。
**「開けるなら、くしゃみを一回してから」**
「なんでだよ」
らいらいは思わずつっこんだ。
だが、びっくり館では、つっこんだ時点でもう負けなのである。
天井のどこかで、見えない誰かが
「その通り」
と小さく拍手した。
「いるのかよ!」
らいらいが言った瞬間、
鼻の奥がむずむずした。
むず……
むずむず……
む、む、む――
**へぷちっ!!**
その瞬間、ドアが
ガコン!!
と音を立てて開いた。
中は部屋だった。
ただし、普通の部屋ではない。
床一面に、プリンが並んでいた。
巨大プリン。
小さいプリン。
なぜか正座しているプリン。
そして一番奥には、王冠をかぶった、
明らかにボスっぽいプリンがいた。
「ようこそ」
と、王冠プリンが言った。
「しゃべった!」
「失礼な。プリンはしゃべる時はしゃべる」
「しゃべらない時のほうが多いだろ!」
「そこは個体差だ」
らいらいは一歩後ずさった。
すると、足元の小さいプリンたちがぷるぷる震えながら道を開けた。
まるで王の通る道みたいだったが、
通るのは王ではなく、ただのちょっと警戒しているらいらいである。
王冠プリンは、重々しく言った。
「らいらいよ。おぬしには試練を与える」
「また試練!?」
「うむ。この部屋のどこかに、
**“ほんもののスプーン”**
が一本だけ隠されている」
「それを見つければいいの?」
「そうだ。だが気をつけろ。この部屋には、
スプーンに見せかけた
**スプーンっぽいなにか** が大量にある」
「雑すぎるトラップ!」
そのとき、壁がゴゴゴと動き、
ずらりと棚が現れた。
棚の上には、
スプーン、
フォーク、
しゃもじ、
耳かき、
ミニゴルフクラブ、
なぜか銀色の靴べら、
そして「気持ちはスプーン」と書かれた木の板まで置かれていた。
「最後のやつ絶対違うだろ!」
「だが、心で食べる者にとってはスプーンだ」
と王冠プリンは静かに言った。
「急に哲学くるな!」
らいらいは棚に近づいた。
すると、左の壁からぬるっと、
長いヒゲの生えた執事みたいなゼリーが現れた。
「ご案内いたします」
とゼリー執事は言った。
「いや、ゼリーもしゃべるの!?」
「本日はプリン様の客人ですので」
「びっくり館、食べ物の知能高すぎるだろ……」
ゼリー執事は胸に手を当て、
ぺこりとおじぎした。
「なお、この部屋には一つだけ重大なルールがあります」
「今言うのかよ。先に言えよ」
「**プリンを踏むと、プリンたちが少しだけ悲しそうな顔をします**」
「いや、めちゃくちゃ嫌だなそれ!」
足元を見ると、小プリンたちがすでに
「踏まないでね?」
みたいな目でこちらを見ていた。
らいらいの良心は一瞬で削られた。
「よし……絶対に踏まない」
その瞬間、
天井から紙がひらひら落ちてきた。
そこにはこう書かれていた。
**『ヒント:ほんもののスプーンは、なぜか一番スプーンらしくない所にある』**
「もう意味わからん!」
らいらいは、まず棚を見た。
どれも怪しい。
いや、怪しくないものまで怪しく見えてくる。
銀のスプーン。
木のスプーン。
妙に自信ありげなスプーン。
「私は本物です」と札がついている怪しすぎるスプーン。
「絶対これ違うだろ……」
すると、ゼリー執事が小声で言った。
「らいらい様。プリン様は、見た目よりずっと気まぐれなお方です」
「見た目通りだと思うけど」
「先代の挑戦者は、
しゃもじを三時間見つめた末に泣きました」
「なんでそんな地獄みたいな履歴があるんだ」
らいらいは、部屋をぐるりと見回した。
その時だった。
奥の壁にかかった一枚の絵。
それは、海辺でスイカを見つめるスプーンの絵だった。
意味不明すぎて逆に今まで視界から消えていた。
だが、らいらいは気づいた。
「……あれ?」
絵の中のスプーンだけ、
ほんの少しだけ光っている。
近づいてみる。
すると額縁の下に、小さくこう書かれていた。
**『さわれ』**
「命令口調だな……」
らいらいがそっと絵に触れると、
額縁がぱかっと開いた。
中には一本の、
古びた、なんの変哲もない銀のスプーンが入っていた。
ゼリー執事が目を見開く。
「おお……」
小プリンたちがざわつく。
「ぷる……!」
「ぷるぷる!」
「ぷりーん!」
王冠プリンが、ゆっくりとうなずいた。
「見事だ、らいらい。おぬしは
**“選ばれしすくう者”**
となった」
「二つ名が絶妙にダサい!」
その瞬間、スプーンがまぶしく光った。
部屋中のプリンが一斉に震え、
床がゆっくりと左右に割れた。
その下から現れたのは――
**地下へ続く、ぐるぐる階段。**
冷たい風が下から吹き上がってくる。
そして、暗闇の奥から、
誰かの笑い声が聞こえた。
「ククク……
やっと来たか、らいらい……」
らいらいはスプーンを握りしめた。
「今の、どう考えてもボスっぽいやつだろ……」
王冠プリンは真剣な声で言った。
「この先には、
びっくり館の地下深くに眠る
**“逆さまの食堂”** がある」
「名前からして嫌な予感しかしない」
「そこには、
すべてをひっくり返す料理人――
**シェフ・サカサーマ** が待っている」
「ふざけた名前なのに強そう!」
すると突然、
らいらいの持つスプーンが
ぴくっ
と震えた。
そして、なんとしゃべった。
「早く行こうぜ相棒」
「お前もしゃべるの!?」
びっくり館、
知能あるやつ多すぎ問題が、
さらに深刻化した瞬間だった。
らいらいは、深く息を吸った。
「よし……
行くしかないか」
スプーンは言った。
「ただし気をつけろ。
逆さまの食堂では、
常識が上下左右ななめに壊れる」
「もう日本語から不安なんだよ」
こうしてらいらいは、
しゃべるスプーンを片手に、
ぐるぐる階段を下りていった。
その先に待つのは、
笑う料理人か。
ひっくり返る世界か。
それとも、ただのめちゃくちゃな晩ごはんか。
暗闇の奥で、
また笑い声がした。
そして階段の途中、
壁に赤い文字が浮かび上がる。
**『食べるな危険。ただし空腹時を除く。』**
「どういうルールだよ!」
らいらいのツッコミが、地下に長く響いた。
選択肢
1.逆さまの食堂にそのまま入る
2.しゃべるスプーンに作戦を聞く
3.いったん引き返してプリン王に情報をもらう




