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らいらいは、金色のドアに書かれた「2」を、ためらいなく押した。
すると、ドアは静かに開くどころか、
「ピンポンパンポーーーン!! 二番を選んだ勇者、入場ーーー!!」
と、妙に陽気な声とともに、紙吹雪を噴き出しながら爆発的に開いた。
「うるさっ!」
思わずらいらいが一歩引くと、奥からぴょこぴょこと、三体の小さな生き物が現れた。
一体目は、ネクタイを締めたカエル。
一体目は胸を張って言った。
「私は執事ガエルのケロム」
二体目は、サングラスをかけたハムスター。
二体目は前足を腰に当てて言った。
「オレは案内係のハム・デ・ニーロ」
三体目は、なぜか食パンを頭にのせた白い猫。
三体目は小さく鳴いた。
「にゃ。パン長です」
「最後のやつ、肩書きが雑すぎない?」
らいらいが言うと、パン長は食パンを落とした。
ぽてっ。
そして悲しそうな顔をした。
「ごめん、今のは言いすぎた」
すると三体は一斉にうなずいた。
「あなたはやさしい勇者」
「見込みあるぜ」
「にゃ」
その先に広がっていたのは、巨大なホールだった。
天井にはシャンデリア。床は赤いじゅうたん。壁にはよく分からない肖像画がずらりと並んでいる。
ただし、その肖像画が全部、
鼻だけ異様に立派だった。
「なんで全員、鼻だけそんな気合い入ってるの?」
ケロムが静かに答える。
「ここは“びっくり館”の第二区域――鼻の間です」
「そのまんまだな!」
ハム・デ・ニーロが指を立てた。
「ここでは、偉大なる鼻の審判を受けなければ先へ進めねえ」
「鼻の審判ってなに」
「においで真実を見抜く儀式だ」
「嫌な予感しかしない」
そのとき、ホールの奥から重々しい音が響いた。
ゴゴゴゴゴ……。
巨大な椅子が回転し、そこに座る人物が姿を現す。
長いマント。
王冠。
立派なヒゲ。
そして、
ものすごく長い鼻。
その鼻は、もはや鼻というより小型のすべり台だった。
「来たな、らいらいよ」
低く、威厳ある声が響く。
「我が名は、ノーズ十三世」
「絶対ふざけてるだろこの世界」
ノーズ十三世は立ち上がり、鼻先でワイングラスを持ち上げた。
器用すぎる。
「貴様が真の勇者かどうか、この“真実の香炉”で試してやろう」
侍女たちが運んできたのは、金色の香炉だった。
だが、そこから漂ってきた香りに、らいらいは顔をしかめた。
「ん? これ……焼きそばパン? しかもちょっと高級なソースの匂いがする」
ざわっ、と場がどよめく。
ケロムが震えた声で言う。
「まさか……一発で当てただと……」
ハム・デ・ニーロがサングラスを外した。
「信じられねえ。オレでさえカレーパンと迷ったのに」
パン長は無言で、尊敬のまなざしを向けた。
ノーズ十三世は大きく目を見開き、ゆっくりとうなずいた。
「見事だ……。この香炉の中身は、三日前に失われた王家の秘宝、“黄金の焼きそばパン”」
「王家の秘宝が焼きそばパンなんだ」
「しかも一日目が最もうまい」
「じゃあもう遅いだろ!」
すると、ノーズ十三世は急に顔をしかめ、苦しそうに鼻を押さえた。
「ぐ……くっ……いかん……来る……!」
「な、何が!?」
次の瞬間だった。
「はっ……はっ……はっくしょーーーーーん!!!」
ノーズ十三世のくしゃみが炸裂し、とんでもない突風がホール全体を吹き荒らした。
シャンデリアが揺れる。
カーテンが舞う。
ケロムが飛ぶ。
ハム・デ・ニーロが回る。
パン長は食パンごと転がった。
そして、らいらいの足元に、ひとつの鍵がカランと落ちた。
銀色に光る、小さな鍵。
持ち手には、奇妙な文字が刻まれている。
「これは……」
ケロムが息をのむ。
「まさか、地下宝庫の鍵……!」
ノーズ十三世はくしゃみの余韻でふらつきながら言った。
「すまぬ……緊張すると、たまに城の重要物資を吹き飛ばしてしまうのだ……」
「王として致命的な体質だな」
だがその瞬間、壁に並んでいた鼻の肖像画たちの目が、一斉に光りはじめた。
ギィィィ……と不気味な音を立て、中央の一枚がゆっくり開く。
その奥には、真っ暗な隠し通路がのびていた。
通路の奥から、かすかに声が聞こえる。
「……たすけて」
「……パンが……」
「……いや、やっぱ水……」
ハム・デ・ニーロがごくりとつばを飲んだ。
「地下宝庫のさらに下……忘れられた“もぐもぐ牢”だ」
パン長が珍しく真剣な顔で言う。
「にゃ。あそこには、食べ物に執着しすぎた者たちの魂が眠る」
らいらいは銀の鍵を握りしめ、暗い通路を見つめた。
笑いの気配と、ちょっとした危険の匂いがした。
そしてその奥には、まだ知らない何かが待っている。
らいらいは、一歩前に出た。
「よし。行こう。この変な城、最後まで見届けてやる」
ケロムが頭を下げる。
ハム・デ・ニーロがニヤリと笑う。
パン長が食パンをかぶり直す。
こうしてらいらいたちは、びっくり館の地下――
“もぐもぐ牢”へと続く、奇妙な闇の中へ進んでいった。
選択肢
1.もぐもぐ牢に入って、謎の声の主を助ける
2.先に地下宝庫を開けて、中の秘宝を確認する
3.ノーズ十三世に、この城の秘密を全部吐かせる




