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らいらいは、館の重たい扉に手をかけた。
ギィィ……という、いかにも「今から何か起きますよ」と言わんばかりの音を立てて、扉はゆっくり開いた。
中は思ったより広かった。
天井は高く、赤いじゅうたんはまっすぐ奥まで伸びている。壁には古びた絵画がずらりと並び、どの絵の人物も、なぜか少しだけ「何見てんの?」みたいな顔をしていた。
「感じ悪い館だな……」
らいらいがそうつぶやいた瞬間、館のどこかでカラン、と小さな音が鳴った。
そして次の瞬間――
パァン!
天井から紙吹雪が降ってきた。
「えっ」
さらに館の奥から、ラッパのような妙に陽気な音が響いた。
パパパパァーン!
暗い館の雰囲気をぶち壊すように、左右の扉が勢いよく開き、黒いスーツを着た小さな人形たちがぞろぞろと現れた。全員、なぜか蝶ネクタイをしている。
先頭の人形が、胸を張って言った。
「ようこそ、らいらい様! 名もなき森・第十三びっくり館へ!」
「びっくり館だったのかよ!」
「はい! 本日はご来館ありがとうございます! お一人様ですか!」
「見れば分かるだろ!」
「失礼しました! では、お一人様、絶望コースでご案内いたします!」
「コースの名前が嫌すぎる!」
人形たちは一斉にメモ帳を取り出し、何かを書き始めた。
カリカリカリカリ……と、静かな館に響く筆記音だけが、逆に不気味だった。
らいらいが一歩下がると、奥の階段の上から、コツ……コツ……と足音がした。
全ての人形がぴたりと動きを止める。
やがて、二階の暗がりから、白い服を着た少女が姿を現した。
長い髪、透き通るような肌、そして感情の読めない静かな目。
ただ、その手にはなぜか巨大な木のスプーンが握られていた。
「……遅い」
少女は、ぼそりと呟いた。
「え?」
「ずっと待ってた。箱を開ける人を」
館の空気が、一気に変わった。
さっきまで騒がしかった人形たちも、今は誰一人しゃべらない。
少女の言葉だけが、静かに、まっすぐらいらいに届いた。
「この館の奥にある箱を開けると、森の秘密がわかる」
「でも、失敗したら……あなたの名前が、この館に食べられる」
「名前を食べるって何だよ。概念の食事やめろ」
少女は少しだけ首をかしげた。
「簡単に言うと……二度と自分を自分だと思えなくなる」
それは、冗談では済まない響きだった。
らいらいの胸が、どくん、と鳴る。
その時だった。
館の左の廊下から、バタン! とものすごい音がした。
人形の一体が青ざめた顔で駆け込んでくる。
「た、大変です!」
「地下の“古い日記”が勝手にページをめくり始めました!」
「しかも今、文字が増えてます!」
少女の表情が初めて揺れた。
「……始まった」
館の壁に掛かっていた絵画たちが、いっせいにらいらいの方を見た。
今度は確実に、見た。
「うわ、ちゃんと動いた!」
少女は階段を降り、らいらいの目の前まで来た。
そして巨大な木のスプーンをすっと向ける。
「選んで」
「地下の日記を見に行くか」
「奥の箱を先に開けるか」
「それとも、この館の主に会うか」
らいらいの足元で、紙吹雪がくるくる回る。
さっきまでただの演出に見えたそれが、今は妙に意味ありげだった。
館は静かに、次の答えを待っていた。
選択肢
1. 地下へ行って、勝手に文字が増える古い日記を読む
2. 館の奥へ進み、謎の箱を先に開ける
3. この館の主に会わせろ、と少女に言う




