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了解。**選択肢2**で進める。


石畳の回廊に、妙な静けさが落ちていた。


さっきまで騒がしかったはずのエターナリア城の中庭が、まるで誰かに「ちょっと待て」と言われたみたいに、ぴたりと息を止めている。

らいらいは立ち止まり、目の前の扉を見つめた。


扉には、金色でも銀色でもない、説明しにくい色の文字が浮かんでいる。


**「笑う者のみ、先へ進め」**


「いや、急にその条件つける?」

らいらいは眉をひそめた。

「しかも曖昧すぎるだろ。“笑う”って何だよ。にやけ顔でも可なのか?」


その瞬間、扉の向こうから声がした。


「可ではない」


低く、やたらハッキリした声だった。


「うわ、返事した」

らいらいが一歩下がると、扉の文字がまた変化した。


**「作り笑い、不可。愛なき爆笑、半額」**


「半額ってなんだよ!」


すると床の紋様がふわりと光り、回廊の左右に二体の像が現れた。

片方は真面目くさった顔をした石像。

もう片方は、明らかにふざけた顔をした石像だった。鼻が無駄に長い。


そして中央に、小さな台座がせり上がる。

その上には一枚の札。


**【試練:この場でもっとも面白い一言を言え】**


「最悪だ」

らいらいは即答した。

「世界の命運を背負う主人公にやらせる試練じゃない」


すると、ふざけた顔の石像が口を開いた。


「なお、すべった場合は」


真面目な石像が続きを言う。


「少し気まずい空気になる」


「ダメージ少ないな!」


その言葉と同時に、奥の闇から足音が響いた。

コツ、コツ、コツ――ゆっくり近づいてくる。


現れたのは、黒いローブをまとった細身の人物だった。

顔は見えない。だが気配だけは妙に濃い。

ただの敵ではない。

むしろ、“言葉”そのものが人の形を取って歩いてきたような、不穏な存在感があった。


「ようやく来たか、らいらい」


ローブの人物は立ち止まり、静かに言った。


「私は**沈黙卿ちんもくきょう**。

笑いを忘れた世界の、最後の管理者だ」


「名前が強そうで嫌だな……」


沈黙卿は、すっと右手を上げた。

すると回廊の空気が重くなる。

声を出すことさえ、少し難しくなるほどに。


「この先へ進みたければ、証明してみせろ。

お前の言葉が、ただの音ではなく――

人を揺らし、空気を変え、沈黙すら跳ね返す力を持つということを」


らいらいは目を細めた。


なるほど。

これは剣の勝負じゃない。

魔法でもない。

**言葉の勝負**だ。


そして最悪なことに、試練の内容は「面白い一言を言え」である。


「……つまり」

らいらいは小さく息を吐いた。

「世界を救うために、ボケろってことか」


「そうだ」


「認めるんだ」


沈黙卿の背後で、闇がざわつく。

そこから、無数の黒い仮面が浮かび上がった。

泣いている顔。怒っている顔。無表情の顔。

そして、**笑い方を忘れた顔**。


「この者たちは皆、言葉に傷つき、言葉に疲れ、言葉を信じられなくなった者たちだ」

沈黙卿の声は、静かなのに重かった。

「薄っぺらい冗談では届かない。

本当に跳ねる言葉でなければ、彼らの心は動かぬ」


らいらいは、しばらく黙った。


ふざけるのは簡単だ。

でも、本当に面白い言葉は、ただ変なことを言えばいいわけじゃない。

ちょっとだけ悲しい場所に、急に変な風が吹いて、

その風で思わず笑ってしまうような――

そんな一撃が要る。


「……よし」


らいらいは一歩前へ出た。


「やってやる」


真面目な石像がうなずく。

ふざけた顔の石像は、なぜかもうちょっと鼻が伸びた。


回廊の全員が、らいらいを見つめる。

沈黙卿すら、じっと待っている。


らいらいは口を開いた。


「そんなに静かにしてたら――」


一拍おいて、言う。


「**おならした時に全部バレるぞ**」


…………。


沈黙。


完全な沈黙。


「終わった……」

らいらいは顔を覆った。

「やばい、終わった。これは終わった。帰りたい」


その時だった。


ぷっ――


誰かが吹き出した。


見れば、無表情だった仮面の一つが、肩を震わせている。

次の瞬間、別の仮面がくくっと笑い、さらに別の仮面が耐えきれずに顔を歪めた。


「ふ……ふはっ……」

「だ、ダメだ……そんな……」

「急に俗すぎる……!」

「静寂の空間でそれ言うな……!」


笑いは連鎖した。

回廊に満ちていた重苦しい気配が、少しずつ崩れていく。

真面目な石像ですら、口元がわずかにゆるんでいる。

ふざけた顔の石像に至っては、最初から限界だった。


そして――

沈黙卿が、初めて口元を押さえた。


「……く、くく……」


「おい」

らいらいは目を丸くした。

「お前、笑えたのかよ」


沈黙卿は顔を上げる。

フードの奥には、思っていたよりずっと若い顔があった。

そしてその表情は、どこか安心したようでもあった。


「……思い出した」

彼は小さく言った。

「笑いとは、完璧な言葉ではなく……

時に、どうしようもなくくだらない言葉が、心の壁を壊すものだったな」


扉が、重々しく開き始める。


ゴゴゴゴ……という荘厳な音のわりに、開いた先に見えたのは――

巨大な階段と、その上に置かれた**一本の白い椅子**だった。


そして椅子の上には、一冊の本。


表紙にはこう書かれていた。


**『らいらい日記・零の続き』**


「零の続き……?」

らいらいは息を呑んだ。


その本が、ただの本ではないことは見ただけで分かった。

あれは記録だ。

忘れられた言葉。

まだ生まれていない物語。

そして、らいらい自身すら知らない“先のらいらい”が、そこに書かれている。


だが、本へ駆け寄ろうとしたその時。

階段の上の空間が、ぐにゃりと歪んだ。


白い椅子の背後から、ゆっくりと何かが現れる。


それは人の形をしていた。

けれど顔がない。

顔のある場所には、ただ鏡のような面だけがある。

そしてその鏡には――


**今のらいらいではなく、王になった未来のらいらい**が映っていた。


「来たか」

鏡の存在が、声もなく語る。

頭の中に直接響く声だった。


「ならば次は、お前自身と向き合え。

笑いで開いた扉の先にあるのは、

お前がまだ認めていない“本当の名”だ」


らいらいは、白い階段の下で立ち尽くした。


沈黙卿が後ろから静かに言う。


「ここから先は、もう私でも助けられない。

鏡の王は、お前にしか越えられない」


回廊の風が変わる。

物語の空気が、少しだけ深くなる。


らいらいはゆっくりと拳を握り、階段の一段目に足をかけた――。


---


### 選択肢


**1.** らいらいは真正面から鏡の王に名を問う

**2.** らいらいは先に『らいらい日記・零の続き』を手に取る

**3.** らいらいは沈黙卿に「お前も来い」と言って巻き込む


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