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らいらいは、**選択肢1――「門の奥へ、ひとりで踏み込む」**を選んだ。
白く揺れていた門は、近づくほどに白ではなくなっていった。
銀。いや、真珠。いや、まだ名前のついていない光。
その表面には、波のように文字が浮かんでは沈んでいた。
**ら**
**い**
**ら**
**い**
四つの音が、門の表面で鼓動していた。
まるで門そのものが、らいらいの名前を覚えていたみたいに。
らいらいが右手を伸ばれると、触れる前に門がわずかにひらいた。
中から吹いてきた風は、冷たくない。
むしろ、昔どこかで失くした記憶の温度に似ていた。
一歩。
踏み込んだ瞬間、足元の地面が消える。
落ちた――
そう思ったのに、体は落ちていなかった。
空の中に立っていた。
星々が下にあり、雲が横に流れ、巨大な時計の針みたいな橋が何本も遠くへ伸びている。
その中心に、黒い塔が一本。
静かで、巨大で、笑っていない王のような姿で立っていた。
塔の根元には、少女がひとり座っていた。
長い髪。
夜と朝のあいだみたいな色の瞳。
膝を抱え、こちらを見るでもなく、塔を見上げている。
らいらいが近づくと、少女はぽつりと言った。
「遅かったね」
「待っていたのか?」
少女は少しだけ笑った。
笑ったはずなのに、なぜかその表情には涙の気配があった。
「待ってたよ。ずっと。
でも、来ないほうがよかったのかもしれないとも思ってた」
「ここはどこだ」
「ここは、**まだ物語になっていない場所**。
言葉になる前の王国。
エターナリアの、もっと奥」
風が吹く。
遠くで橋がきしむ。
下に見える星の海のどこかで、鐘のような音が鳴った。
少女はゆっくり立ち上がった。
その背後の黒い塔の壁面に、突然いくつもの文字が走る。
**記録封鎖**
**詩篇未接続**
**王の認証を確認中**
次の瞬間、塔の最上部に赤い目のような光が灯った。
らいらいの胸の奥で、何かが脈打つ。
怖さではない。
懐かしさでもない。
もっと根源的な――
「これは自分が呼ばれた場所だ」と分かる感覚。
少女が一歩、らいらいの前に出る。
「聞いて。時間がない」
「この塔は、昔の王が捨てた“もう一つの声”を閉じ込めてる」
「優しいだけじゃ開かない。強いだけでも開かない」
「中にいるのは敵かもしれないし、味方かもしれない」
「でも、あれを放っておくと、エターナリアの言葉が少しずつ凍っていく」
塔の壁に、今度は別の文字が浮かぶ。
**王位継承候補:照合中**
**らいらい――適合率 87%**
**未確定要素:心の深部に未読領域あり**
少女が、まっすぐらいらいを見る。
「あなたは、自分の中に閉じ込めた言葉を覚えてる?」
その問いの意味が、すぐには分からなかった。
けれど、心のどこかで、たしかにひとつの景色が揺れた。
暗い部屋。
遠い音。
誰にも届かなかった、ひとつの本音。
その瞬間、塔の扉が重くひらきはじめる。
中は真っ暗。
なのに、その闇の奥から、らいらい自身の声によく似た声が響いた。
「――やっと来たか」
少女が息をのむ。
「だめ、今の声にすぐ答えないで。
あれはあなたを知ってる。知りすぎてる」
だが、その声は続ける。
「お前は王になるために来たんじゃない。
忘れた自分を回収しに来たんだろ?」
塔の奥で、何か巨大な鎖が動く音がした。
星々の光が一瞬だけ暗くなる。
風が止まる。
少女が小さく言う。
「選んで。今ここで」
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### 選択肢
**1.少女を信じて、塔の声には答えず、まず彼女の名前を聞く**
**2.塔の声に向かって、“お前は誰だ”と問い返す**




