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音に囚われる街  作者: TOMMY


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8/11

理由

「アヒャヒャヒャヒャ。大正解。

地縛霊は人を鬼と間違えて襲うのです。

最高の演出でしょ!」


私は息をのんだ。


「何のためにそんなことを」


少年は笑いをこらえながら口を開く。


「黒い染みの量産ですよ。

地縛霊に殺された人は黒い染みになって、人を襲うのです」


少年は楽しそうに続ける。


「怖がれば怖がるほど、濃くなる。

逃げれば逃げるほど、増えていく。

怖がって、追いかけて、逃げて!

ね?ちゃんと“遊び”になってるでしょ」


病院や学校はそのために、利用された。

私は拳を強く握った。


「人の命を、何だと思っている!」


「あはは。遊ぶ人が増えた方が楽しいでしょ!?

ちょっとだけ、幻覚を見せてるけどね。ははは」


一瞬だけ、少年の目が冷えた。


「……誰も僕の遊びに付き合ってくれない。

一人は、つまらないんだよ」


礼子の身体がびくりと震えた。


「累さん……っ」


「礼子を離せ」


すると黒い染みが水溜りのようにブランコの下へ溜まっていく。

礼子の足はそこに浸かった。


「約束通り解放してあげますよ。人間という呪縛からね!」


少年が手を振り上げたその瞬間、公園に冷たい風が吹いた。

木の葉が宙に舞い、砂が渦を巻いた。


びゅん。

一瞬の突風。


目にも止まらぬそれは、ブランコに座る礼子をさらっていった。


「いつなったら、解放されるんだ!?」


その嫌味な声が、

今だけはひどく嬉しかった。


先輩は風のように礼子を公園のベンチに寝かせた。

彼女はすでに、意識を失っていた。


「累!鳴らせ!」


先輩は声を張り上げる。

私は革靴を大きく踏み込む。


コツン!


けれど黒い染みには、まったく効果がなかった。

ここには、人の温もりが足らない。


「あははは。

わかっているでしょう。それに何の効果もないことを」


先輩は少年の懐に一気に潜り込む。


「今はそれでいいんだ」


一閃。


ボンっという小気味よい音が鳴り響く。

先輩の鋭い突きが少年の身体を捉えた。


しかし、少年は笑みを絶やさない。


「ははっ!そんな拳に効果があると信じているのですか!?」


その刹那、パンッと少年を囲う黒い染みは弾き飛んだ。


「信じているさ」


先輩は幾重にも突く。

そのたびにボンッという音が鳴る。


「……まさか。なぜそれを」

少年の声がわずかに歪んだ。


少年は逃げるように跳躍し、ブランコを支える鉄の棒に立った。


先輩は拳を前に突き出した。


「外からの音はいくらでも防げる。

でも、身体の内側に響く音は防ぎようがないだろう!」


少年の顔に影が落ちた。

それと同時に、ブランコに溜まった黒い染みは霧散した。


少年は何も言わず、闇の中に消えていった。


私は礼子に目を向ける。

すると、礼子の身体から色が抜けていくように見えた。


私は礼子を抱えて、病院を目指した。

そのときは、何もかも忘れて、走っていた。

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