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日本の定理・下巻  作者: 泉川復跡
【『算額主義』編】第十九章。海に弾き語り
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19.1.「触手を伸ばしていくもんだ」

「それでは第十回戦でございます。下山組と向田組は最後まで点数と穴を争い合い続けてます。このゲームの勝者はどれでしょう?」

 下山君と向田君は偉そうな姿をして互いに見合って友情の微笑みをした。第七回戦ではスポーツの公式戦の雰囲気を齎して人が事故に遭ったり自分の友達を無意識に外へ投げたという山場が見られた。その微笑みは、「これは俺達が週末のはしゃぎの為に思いっきり楽しむただの遊びだ。その遊びが終わったら、うちに帰って親の飯を食って明日また一緒に学校に行くんだな」と伝えてきたわ。八人の子供達には汗が服をびっしょり濡らして、服がその中の細くて硬い体に貼り付けたほどだ。この勝負が終わったら一緒に温泉に入っては最高でしょう。

 下山組の『イの11』と『チの1』を上手く守った第八回戦。『ニの9』で駒形君が篠君に揉み合いを勝ったり、柴田君に会場の中心に立って小菅君の投げた球を飛び跳ねて捕まえて貰う賭けが効いたり、『への8シャープ』に球を入れ水上君と小菅君との繋がりを切ったり、水上君が『チの1』を佐藤君から取ったりした第九回戦。それで、この終幕前、向田5.5対下山6を果たした。向田組は五回目攻撃を担当。下山組は五回目防御を担当。攻撃になったら点数が上がる機会の方が大きいというのはもう適合ではない。攻撃組の二人を会場から一旦と追放しちまった第七回戦は一番の証だから。但し、向田組は会場の全四隅で勢いを構えたことによって、下山組はどうにかしてその恐ろしい長方形に『死ぬほど』圧迫されないようにしないと。

 案の定、下山組は四本の辺の中点に当て嵌まる穴を選ぶことにした。『ホの11』、『イの6シャープ』や『チの6シャープ』は彼らの視界に入った。残りの四点目は入場する部分にあったので、『変異点』として扱われる。以前の二回戦から手に入れた17個の球はまず三つの穴に分け合う。一個の穴に四個。次に残りの五個は駒形君に頼み、『変異点』に行って貰う。完璧な菱形は出来上がり、向田組の長方形を重ね右に一列でずれた。こうやって、もし下山組の一人が辺の両側の相手に狙われたら最高でももう一人が同じ狙われるしかない。ないしは、もし一人が一人を狙ったら、下山組は向田組に追われ、己の尻尾を噛む蛇みたいな環を生み出し閉塞に落ちる。相手に追い付かない限り、三分以内で走り続ければ結果は第九回戦から保存され、勝利を下山組が確実に得るんじゃないかね。実用主義者ならそう考えて相手を無力に悔しませるつもりだ。

 でも、向田組も同じ思い付きなんとかしても下山組の球を奪い取ってやる。始めの笛が吹かれた時、四人全員が四隅から垂直に下山組の菱形を襲った。垂直線はある頂点からある辺への一番短い線という原理を使っているね。『チの11』の向田キャプテンは先駆してこうして『ホの11』からの柴田君を迎えていた。篠君、小菅君と水上君はこれからこう従った。然し、『イの11』の篠君や『チの1』の水上君は「到着したらもう越えられた」という不利を被っちまったので、垂直線に代わって短い限りの適切な線を決めざるを得ない。二番短いのは一番合う。恐らく二等分線じゃないかが、小学生にとってあれを求めるとは難しい。

 篠君と水上君は下山キャプテンと駒形君を逃すことになった。一方、向田キャプテンと小菅君は柴田君と佐藤君と激しく揉み合い、互いに道を塞ごうとしていた。相手に必死に追われ続ける下山君と駒形君は柴田君と佐藤君を補助しに駆けていた。現場に来た時、柴田君と佐藤君が一瞬に仲間に自分の四個を渡した。陸上のリレーレースで選手がバトンを仲間に渡すのと同じ感じだ。勿論、高速度だし、それに初めてだし、数個を落としたことがあった。勿論、向田組はそれを掠め取るに決まっている。下山君と駒形君はアメリカンフットボールだけでなくイギリスのラグビー風もに『追っ手』から逃げながら赤ちゃんを抱えるように球を運んでいた。「最大で回戦の半分以内で穴を見付けて入れること。超過すれば回戦が即終了し穴持ちの組に3点を追加」という規則を逆らわないよう、自分が平気に守れる何処かを一刻も早く探っていた。

『ヘの6シャープ』と『ハの5』は決めた。数個の球を犠牲にして向田君と小菅君から上手く逃げた柴田君と佐藤君は再び二人の仲間に合流し、球を分かち、『イの6シャープ』に帰ったり『変異点』に一番近い『ハの1』に届いたりした。向田組は前の穴から球を全て引き出し下山組の新たな穴の近くに入れた。両組は殆ど前の穴を使っていなかった。下山組は終わりの笛が吹かれるまで自分の作った菱形の中で球を持って行ったまま何処にも移動する。入れ、引き、また入れる。向田組はもう追い付きたくないし、結末に値するこの勝負の山場を考案していた。菱形の軌道に走っていると分かったし、その菱形の四辺にあった全ての穴を開けようとした。そう、時間に追い付きに高速度で走り掛ける下山組が空の穴に落ちちまう意図なのだ。一人の手と足が入れるぐらいわざと設計された穴は、自らの構造が向田組の面白い悪戯に役立つわね、遂に。

「汚ねえぞ、おめえら」と下山君が笑って叫んだ。駒形君が一番速く走っていたんで一番足を穴に落としちまった。足がまるで浅い井戸に「ほっ」と落ちたなんて不快な気持ちだった。下山君も佐藤君も同じ事情に遭ったことに。一番遅く走る柴田君だけは開いた穴を間に合って飛び越えた。それでも、向田組の悪戯は成功になって結構多くの球を手に入れた。周辺の観客もその悪戯に驚いたり大笑いしたりして見せた。向田7.5対下山9から、向田10対下山9に変わった。あと30秒でゲームが終了。なんとかしなきゃ悔しく負けちまうし、柴田君は必死に仲間を穴から引き上げていた。そのところ、下山君が突然『最後の手』を思い付いた。

 柴田君と佐藤君に以前の穴から球を出し、仲間が引っ掛かった穴に入れて貰うことだ。向田組が気付いた時は二人が全ての球を引き出しちまった。もう最後の争奪の為に、篠君と小菅君は柴田君と佐藤君の仕業を邪魔しようと頑張った。柴田君は大きい胴体を使用して細い相手を簡単に越え、『変異点』で待ち受ける佐藤君に球を投げた。下山組の菱形はてっきり野球場に変わった。『変異点』は『透明な塁』という本当の役割をした。篠君の強烈な阻止によって的に届きづらいにしても、身を右に寄せて踝をひっくり返しそうに佐藤君が必死に走っていた。柴田君の補助で、佐藤君が到着し球をそれぞれの『罠の穴』に入れ、下山君と駒形君に『生の蓋』にして貰った。

「勝ちそうだぞ」というのは、たった今下山組の頭でしか残っていないはず。穴にいたままで球を守るのが一番効率的だ。鱒の視線からといったら、それは「隠れ場所に親は子供と一緒に入れば、安全性が倍上がる」という訳だ。「まやかしと認められるけど、反則する訳じゃなくて賢いよ」と私達があの時褒めていた。向田組のうんざりな顔を見たと、もう勝利はどっちかもよく考えなくて良い。ゲームの最後の30秒はこうして過ぎて審判が終わりの笛を吹いたまでだ。八人の溜息が会場全体に共鳴し、観客全体に響き、まるで倒れる寸前努力の最後の一滴を放出するようだった。下山組は10対12で勝った。

 下山君と駒形君がとうとう仲間に引き上げられ、勝利の歓喜で抱き合い、兎みたいに会場の上に飛び上がっていた。負けた向田組は逆に負けた顔をちっとも出さず、お互いに背中を「ぽん」って叩き、下山組をも後ろから叩いた。どうせゲームだから。詰め込みをまた迎える月曜日の明日が来るまでに取り敢えずはしゃいどこう、ってずっと考えているのだ。両組はゆっくりと会場を降りて観客列の友達の歓喜が沢山な呼び声や拍手を受けていた。八人のプレーヤーはそれに友達に髪がぼさぼさするまで頭を撫でられた、『学級の伝統』みたいに。と同時に、審判達が全40個の球を回収し、穴を閉める前に病院の用務員に会場を掃除して貰った。

「あら、用務員を手伝ってないの?」、ある声が私の後ろから聞こえた。深本さんの声。

「数日前おじさん達としてたんで、今は用務員に任せたのです、深本姉さん」、私が喜ばしく振り向き返事した。

 挿絵(By みてみん)

「お姉ちゃんの腰はもう大丈夫ですか?」、倉崎さんが笠人君と共に深本さんに付いてきて話しかけた。澁薙君の写真機を持って先ほどの勝負も、賞の授与式もを記録した。「駒形君と皆でぶつかって倒れたとは、麻酔から気が整ったお姉ちゃんがちょっと大変かもしれません」

 深本さんがそっと笑った。「ひひっ、マルちゃんの執事はそんなに脆くないでしょう。腰を回したり背中をほぐしたりしたら大丈夫だ」と言ったら、いきなり写真機を持ったままの倉崎さんをぎゅっと抱き締めた。倉崎さんが写真機を落とすところだったが、しっかり握って深本さんの背中に手を伸ばした。「この清々しい声が聞こえてもう三年ぶりだわ。過去に戻れるはずがないけれど、これまででは快くなってるんだ」

 泣きそうな深本さんの言葉に倉崎さんがなんと揺れた。「本当にすみませんでした、板美姉ちゃん。皆を心配しやがってて・・・」

 深本さんが返事した。「ううん、貴方の姿を三年間も見なかったし、こんなことがこれ以上も最悪にならないように、と私が祈るしかないの」抱き締めを抜いたら、彼女が言い続けた。「やはりマルちゃんが教えてあげたね。那月ちゃんがまだ生きてた時、貴方達が東京のあちこちに漂って写真撮ってた。現象の段階はまだ覚えてる?」

「もうちょっとだけです。覚えてなければ雅實さん達に頼みます。彼らも丸端君達に現象のやり方を教えて貰いましたから」

「手帳を持って来なければいつの間に忘れちまったのです、倉崎姉さん。大学級の化学にまだ曖昧な私達は手帳に書いて暗記しているだけましです。チサトちゃんすら同じことをしてるしね」と私が返事した。

「『すら』っちゅうなんかあたしのことを過大評価しとるやん。中学校の化学部の部長なら最高でも美味しい料理を作った成分が理解出来るぐらいの化学を身に付けるの。産業的な製作における化学はもっと時間掛かって学ぶ訳や」と智埼ちゃんが声を掛けた。

 笠人君が少し笑って反応した。「おいっ、料理を作るのを化学実験に変えたいのか?卵と魚と肉の蛋白質の反応式を書くつもり?」

「蛋白質の滅茶苦茶雑な構造は化学はおろか、生物学を学ぶ誰もが諦めやすくなる。写真現像の方が易しいで」と言った澁薙君。

 智埼ちゃんが少し速く応えた。「成分が理解出来るぐらいはそんな上級な化学を要せへんやろ。病気になったり難病を患ったりしひーんように成分分かってちゃんと加減する。一つを食べ過ぎたらあかんや」

「恐らく日澤ちゃんも詰め込みが苦手だし、仕組みが分かるまでお手本を見たり方程式を記入したりしなくてはならないもんね。良かったら沙也香ちゃんが彼らの手帳を借りて宜しいよ」

「はい、是非借りさせて貰います。然し、フィルムだけを持って、補助の化合物などを持って来なくてかなり心配してます」

「だったら姉さんがフィルムのまま保存して。明日は私達が小田原に帰りますんで、どうせ『若原屋』それともチサトちゃんの家で写真を作って良いのです。深本さんと姉さんはチサトちゃんのでかい実験室を観覧しますよ」

「でかいのなら城木先生の作業室ぐらい大きいかもしれないね。もう二週間ぶりだわ、城木先生の家に訪れては」と深本さんが女子学生のように楽しく言って倉崎さんが好奇で堪らなかった。

「ということは皆があの城木先生の家で赤外線眼鏡を?でも先生は何処に住んでるの?」

「んー、小田原に帰る前に秘密のままです。ごめんね、姉さん。帰ったら城木先生だけでなく松澤先生もの家で茶会をします」と私が答えた。

「雅實さんがこう言ったら、あたしも小田原へ行ってしょうがない。そして、写真を現像して一冊にして今回の遊びに参加した子供達に送ることだ」と倉崎さんが楽しく反応した。

 下山君と向田君達も賞品を友達に見せたのちに私達の所に走ってきた。勝者の下山組は50銭や『虹鱒と茸』の箱を受賞した。向田組は負けたものの、30銭や『カステラと焙じ茶』の箱を手に入れた。河口湖の艶やかな虹鱒は横澤さん達が昨日の朝の丸ごとを過ごして釣り上げ、偶然に選んだ五匹を氷で冷凍し、生姜とコエンドロで生臭さを消し、きちんと並べて梱包した。茸は椎茸や舞茸を含め、中秋の湿った天気で河口湖の周りの林でばらばらに生えていて、野田さん達が一昨日の午後を渡って狩り四つの竹籠もを満杯させてきた。カステラは富士河口湖の最高旅館『尾靴井』の女将達が作ってあげた。旅館の裏庭で植えている苺とさくらんぼを採集し、種を摘出して保存し、果肉を潰し、砂糖を加えてイギリスのジャムみたいにした。それは塩でふわふわしたカステラの甘酸っぱい詰め物だ。焙じ茶は勿論、乾燥し同じ昨日馬車で運んだのが厚喜家自身だった。栗林《くりばやし》さんと深本さんが別々の道路を通してここに届いてきたね。

「ていうか、深本さんがここに来たのは栗林さんの配達に関係がありませんでしたね」と私が言い出した。

「関係がないと言われても良いけど、師匠がマルちゃんのお茶配達の求めを応答してくれなければ、私の山梨訪問を許可しなかったんだ。無意識に私がうちの会社の運転の検察者になって済んだかも」

「丸端君がもう水曜日帰ったけど、東京からこだわりのお茶を送ったのは、確か雅實さんとの通話からだね」と言った倉崎さん。

「はい、百キロメートルから即連絡出来るのはこの・・・」と私が返事を完成させているところへ、向田君が「伝書鳩だよね」と声を掛けた。私がちょっとびっくりしたが、向田君が間に合って声を掛けたので、『携帯電話』という、この時の子供達がさっぱり分からない用語を良いわなくて良かった。

「おっ、そうだよ。でも僕達が鳩を用いず鴉に頼んだ。うちの澁薙君が日常に飼ったり訓練したりする愛鳥で、僕達が何処に行っても付いてくるのさ。八咫烏の伝説は君達も知ってる?」と降恆ちゃんが言った。

 下山君がよく頷いて答えた。「うん。知ってる。神武天皇をお導きなさる三つ足のお鴉じゃ。親父とお袋に語られてて頭に刻んでる」

「もしかして兄さんと姉さん達が鴉を使う理由?神みたいな気持ちを掻くの?」と佐藤君が聞いた。

「神みたいな気持ちって大袈裟だなと思う。鴉が鳩より遥か頭が良い。鳥類の一番頭が良い奴の一つだ。僕の特訓に追い付くことの方が速いし、自分が何処にいるか、自分が何をしてるか分かるし、彼奴らにやることを任せた時、安心感を随分上げることになるんだ」と澁薙君が答えた。その後、彼が指笛を凄く大きく鳴らし、二匹の鴉が杉の上から飛び降りてきた。二匹の鴉が澁薙君と降恆ちゃんの肩に乗った時、子供達が異常に興奮した。「格好良い」と一斉呼び出した。

「わっ、彼奴ら自分で礼をしてる。これまで訓練したとはもう十年掛かったんじゃ」と駒形君が感想した。

「その十年間は僕の方。降恆ちゃんにとってはたった一年半ぐらいだ。多分、女性の母性は動物を異常に速く手懐けたみたいだ。僕の十年経験を加え、飼育の適応期間をなんか五倍以上も縮んだんだ」

「母性といえば俺達で降恆ちゃんが無双だろ。治療中の雅實ちゃんと俺を面倒するところ、なんか聖母マリアらしさをなるべく晒して振る舞ってきてる。叱らず、罵らず、優しい顔をして事情に取り組んで、患者を子供みたいに扱うんだなと思うんだ」と笠人君が言って、降恆ちゃんが十字架のネックレスを撫でながら赤い顔をして見せた。

「ったく、美男のお患者さんに褒められて嬉しい顔をしてんな。優しいのは病床で面倒する場合だ。緊急事態に応答したり手術を行なったりする場合は異常に冷たい顔をすることだ」

「そりゃ医者への規則なんじゃないか、ナギ師匠。病人は常人に違って守って生かす優先だ」

「そんな声は元虐め子から来たんだって。自分のお父さんを逆らって組を作って同級生を虐めてたなんて、今聖母マリアみたいに優しくて厳しくなってきた」と私が言って、子供達をその未来の女医が昔何者だったかに凄く驚いた。

「誰々を傷付ける前例がある人なら、雇われても恐ろしい偏見を受け取って耐えられないと思うよ。特に女。男の方は見逃されても良いことが多いという事情で、人を虐めると弱い者に相応しい価値観を投げるも同然だと歪まれるんだ」と言った深本さん。

「男が男か女かを虐めるとも男の権威を見せ付けるという訳。どうりで家庭でも学園でも暴力が滅茶苦茶です」、家庭暴力の12年経験者の笠人君が言った。更に、彼が子供達に伝えた。「俺は親父に幼稚の頃から殴られてた。あの悪魔の親父に弱い者と見做されない為、ちゃんと筋肉を鍛えて体を強く。純彦君と澁薙君と出会って二人の家族に保証して貰うまで、自分とお袋を守ってたよ」

「へー、だから青木ヶ原を出る中にお化け達と戦ってそんな怪我をされちゃったな、兄さん」と言った小菅君。「その二人の兄さんの家族に保証されたのは、まさか袖の下を?」

「んー、そうだな。罪のない人の命を救う為に、袖の下は全然悪い訳ではない。この時代で家庭暴力はまだ警察と政府に無視されてるところ、僕と純彦君の富豪な家庭はあの時浜松の警察に沢山のお金を注ぎ込んだりお土産を贈ったりして、笠人君のお父さんに手錠を掛けさせに何かの罠を仕掛けんだ」と澁薙君が説明して、子供達が、前に立つ五、六歳上の子供達が30代の大人みたいに色々なことを乗り越えた、と気付いた。

「笠人君の問題を解決する間、父ちゃんが浜松でうちの焼酎販売の支店を設立した。越川家の建設も静岡全体に影響圏を広げて、山口家の鉄道と競争。賄賂を合法的にしてすらすらと行けるように、まともにお金とお土産を酌む訳にいかなかったろ。触手を伸ばしていくもんだ」、純彦君が言って指をたこの触手みたいにくちゅくちゅ動かした。「こうやって笠人君と谷子おばちゃんを小田原に引っ越しさせたのだ」

 水上君が感想した。「んー、大人の経営はさ、皆そうやるんだな。利を最高に得る為に一番遠くへ影響を。それならば、僕達を贈る賞金は兄さん姉さん達がこの地に与える影響の果たしか?」

「そうだよ。このゲームの80銭の賞金は私達の先ほどの企画の利益から摘出した。東京大学の30圓を銭と厘に変換して四割を君達に贈ったのだ。君達の努力に対しては大したもんじゃないけど、地方の産物と共に手に入れたのは勝者の組も敗者の組もかなり励まして、将来に積極的に響けば良いなと思うわ」と私が返事した。

「山地の小学生はそう受けたなら大したよ。このゲームはまもなく人気になってこの町の人が皆遊べる」と言った深本さん。

 下山君が凄くわくわくして言った。「はい。こんなでかい虹鱒と美味しそうな茸だけで素敵な焚き火の宴を開けるんだ。うちの仲間と絶賛した。今夜は親を誘ってあのほとりに集まっていく。兄さんと姉さん達も来て良い?」

 私が少し考えて返事した。「んー、ゲームの出場者が出たら司会者も出るんじゃないかね。湖畔で焚き火の宴を平気に開けるよう、どうか電気を付けてあそこの空間を明るくすることだ。こうやって材料を自宅で下拵えせず、現場でやれるから」

「だからお前達にもう一度頼んだんだ」、横澤さんが近付いてきた。「あの会場はまもなく町役場に移転され、共同教育向け道具にされる予定だ。お前達の青木ヶ原の旅、そしてこの遊びはこの町に旅行する人を増やしていくぞ。お前達が帰る前に、儂らが何か感謝祭を・・・」

「いえいえ、感謝祭は結構です。子供達と野外の宴会をするだけで宜しいのです。しかも学級全体、そしておじさんとおばさんも来るでしょう。暗闇に対して安全を守って山地らしく開いて下さい」と私が慌ただしく応えた。

「兄さんと姉さん達が、うちの盆踊りをまだ見てないはずだな。僕の仲間は今夜踊って見せる」、向田君が甲州の伝統的な踊りを紹介したくて私達をいくらでも今夜の宴会に登場させた。

 澁薙君が直ぐに期待感で応えた。「あっ、そうだね。山梨に一週間泊まってるのに文化の名物を披露して貰わなくて足りない気が。よし、僕は君達の招待を受け入れる。どうせ今日はツネちゃんとの実習の最後の日だ。まっちゃんは?」

「私は受け入れないと言わないでしょう。夜間の宴会は安全に開き切れるように勿論電気が満々だ。ただ気になったのは笠人君だ」

「そりゃ心配しなくて良い。笠人君を楽に乗せる道具があったよ。ちょっと待ってね」、降恆ちゃんが誇らしく応えた。彼女が病院に入り、少し後に私達に戻った、特別な椅子を連れてきて。その椅子は廃棄された会議用の椅子を型にして肘掛けを、背凭れに平らな枕を付けた。型にした椅子は後ろの持ち手のあった立ち台に固定され、その台は両側に二個の車輪が付加した。それにペダルのような足を置く台もあった。間違いなく、動きづらい人向けいざり車だ。「僕の三日間の成果だよ。ナギちゃんにすら言わずに今まで隠した。笠人君を小田原に乗せれば僕達の背中に頼ったままじゃ駄目でしょう」

「わー、凄い」、私が驚いて降恆ちゃんの製品に感想した。「まだ断片的だけど初心者にとって見事だ。まさか君は三晩徹夜して作ったの?」

「うん。寝る中に緊急事態に直ぐに起きたりすることに慣れたから、徹夜はもう問題じゃない。ただ連続三晩のせいに欠伸が止まらない」

「でも降恆さん、廃棄された椅子なら何処から拾った?病院の中、それとも」と聞いた倉崎さん。

「最初に病院の倉庫で探ってたけど、背凭れが短い奴や背凭れがない奴だけが見つかったし、その子供達の学校や町役場に来て一つを見付けました」と降恆ちゃんが答え、そして下山君と向田君達に伝えた。「君達の仲間に感謝してるよ、目ぼしい奴を教えてくれて」

 下山君が返事した。「はい。彼奴らは結構上手いな、秘密を隠すことが。でもあの兄さんが座ってみないとあの椅子がどうか分からん」

「じゃあリューちゃん、座ってみて。僕支えるから」、早速降恆ちゃんが笠人君の腰を支え、笠人君がふわふわせず直に立ち上がり車に座るようにしていた。降恆ちゃんの表情でその車が出来上がったばかりで自分か誰かに試して貰っていないと分かった。人が重力に勝たず物が落ちるみたいにお尻を置けば大丈夫なのか、彼女が賭けてみた。やはり圧に掛かって「ギシギシ」って聞こえ、笠人君がお尻を置き、両手を肘掛けに置き、背中を少し後ろに反らした時、最後の「キー」という音が鳴って車が『機械状態』に整ったらしい。

「良かった。全然丈夫だ」と感嘆した倉崎さん。「こうやって持ち手を握ったら車輪が転がって笠人さんを乗せられるでしょう」

「はい、いざり車のそういう仕組みですから。もし誰かが捻挫したり足が折れたり麻痺したりするなどなら、これに頼れるの」

「但し、乗る人が自ら運転出来る梃子がないね。これじゃあ誰かに運転して貰わないとただの椅子に過ぎない」と笠人君が意見をした。

 降恆ちゃんが今更思い出して惜しんだ。「あっちゃ、なんて忘れちゃった。でも大丈夫。その後、椅子の両側で錐を揉んで穴を開けて梃子を挿入するよ。開頭して脳血腫を摘出する手術に似てるんだ」

「ひひっ、やはり医療三昧だね。もしかして手術の技をちゃんと覚えてこのいざり車を作った?」と快く言った倉崎さん。

「手術は工学にあまり違いではないからです。患者の代わりに、無生物なものに取り組みます。このいざり車にとってはもう二つの梃子を仕込んだら完璧。そしてこれを売ってマサちゃんと競えるのじゃ」、降恆ちゃんが言って声調がどんどん早くて楽しみが溢れていた。

「へー、私のことに追い付けばまだまだだ」と私が強調した。「まだまだだ」と一字ずつ言って親指を人差し指と中指に当てていた。降恆ちゃんが直ぐに私の腰をくすぐって返した。

「じゃあ皆は湖畔の焚き火の宴会に参加すると絶賛した?」ともう一度確認したい純彦君。一斉の頷きを貰った。「では子供達がまずうちに帰って入浴して着替えて下さい。俺達も旅館に帰って温泉に入る。その前に笠人君と倉崎姉さんの退院届を大沼院長に承認して貰う」

 私が懐中時計を見て返事した。「うん、分かった。今はもう2時45分。ゲームの開催、授与式、そして昼食からもう30分か。時間が惜しい。笠人君と沙也香姉さんの退院確認を待ってから私達が『尾靴井』旅館に帰る。下山君、向田君、お父さんに電球、電線、食物の材料、薪、調理器具を用意して貰って。踊りにお楽しみだよ」

 下山君が反応した。「はい。僕達は絶対に自分の披露で先輩達をがっかりさせない。草鞋を履いて踊るから山梨っぽさを披露するんだ」

 向田君も言った。「さー、おめえら家に帰ろう。汚ない体を綺麗にしとかんと。これから三時間後、あのほとりへ集まろうぜ」

 こうして、八人の子供達が絶賛し、横澤さんと野田さんの父子と打ち合わせて私達と別れた。降恆ちゃんは倉崎さんに笠人君のいざり車を押してみて貰った。病院の周りに行く間、完璧な円形に瀕した車輪が地面に「ガラガラ」と転がってちょっと凸凹する感じがした。もうちょっと削ったら複数で販売出来るかもしれない。入院して初めて、笠人君と倉崎さんが富士河口湖の路面を歩いた。病院から『尾靴井』旅館を通り過ぎて約束の湖畔に通うのは二人の好奇心を一旦と満たしたようだ。退院届が認められたら、『花火團』は全員あの湖畔で揃えて住民ともう一回の宴をはしゃぎ山梨の色を間に合って知る。必ず山梨に戻る気がしたが、いつ戻れるかまだ不明で、今直ぐ楽しまなくてはならない。

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