21.3. 那月さんの霊団はラッシュナトゥール人と生活している
やはり昼寝を過ごしたのは最高だ。時々徹夜したり夜寝が不足だったり体に損しか被らない習慣を付ける私達にとっては費やした時間を取り戻す貴重なものだ。3時半もまでうちで昼寝をしたら、私と倉崎さんと深本さんは日常の浴衣から企画制服に着替えた。厚喜さんの家に仕える深本さんや、かつて平均14時間掛かって裁縫を勤めてもう三年間自分の体で借金を返済する倉崎さんは初めて昼寝をして『生き返った』みたいな気持ちを持ったでしょう。こうやって倉崎さんを深夜まで覚醒させ、私達が最後まで抱える一番の秘密を明らかにしに待たせたよ。
お母様は抹茶、ビスケットや、薩摩芋・枝豆・人参から手作りのカステラを準備し、台所の右隣の『調理練習室』の食卓に置き、私達を下ろしに誘った。土曜日と日曜日はお母様の休日だし、私とお父様が留守した場合この家をどうか寂しくしないように面倒出来る。病気や国家の祝日につきしか休まないお父様と住吉おじさん以外、『あおゆみ』の料理人は二日の休日を割り当てられ、自分の休日は同僚の平日で逆もまた然りと守っているのだ。これからお母様と、道場の殺陣の準備かのように格好を付けている私達は優雅なおやつをのんびり楽しみ、少し雑談をし、友達の電話を鳴らしに促さなくても良い。
昨日の夜ご飯の際に、お母様は妊娠していると通知した。数日前、吐き気が始まったことで病院に出て、今日を含めてもう十日身籠ったと診断して貰った。このことを聞いた時、お父様どころか私が急に悲鳴を上げたほど喜んで、深本さんと倉崎さんお二人の心拍を一瞬急騰させちまった。この間、お母様は吐き気を抑えながら家でのおもてなしや『あおゆみ』での仕事を続け、家の新しいメンバーを抱える興奮をいつもの笑顔や美麗な顔として表していた。どうしてもこの家の余裕な空間を満たす為にもう人の声が必要だし、将来自分の道具を段々『若原屋』に引っ越す推移だし、私が姉になることは時間の問題だね。16歳もで姉の資格を取るなんて珍しくないが、まだ生まれない弟妹との年齢差を思い出すと自分が早く年を取る気だ。
おやつが終わったら、私達はお母様と盆栽と三つの大木に世話をしていた。秋が後半に辿り着いたところでうちの林檎、蜜柑、そして柿の木は果物がたわわに実っていて、11月中期までそれぞれの木で五個ほどの籠を収穫することもあった。先の数週間、湘南は一年の最大雨量を受け、熱帯から暖流が湿気を激しく連れてきて豊穣の収穫を齎してくれた。過剰になった果物ならうちで食べたり、溜め込んだり、周りの地方、横濱や東京に商ったり、料理の材料として扱ったりする。お父様は最初にこの三つの苗木を買ってこの45坪の庭の三隅で植え、『あおゆみ』の同僚にそうすると勧めた。笠人君もうちに一つあったよ。
これから採集した果物の部分を松澤先生の家に持って行き企画を立てる中に皆に共有する。松澤先生の家なら城木先生の家も同然。純彦君と智埼ちゃんに電話を掛け、夕食を8時に後ろ倒しにしてその時までに帰るとお母様と約束し、松澤先生の家へ出掛けた。案の定、倉崎さんは好奇に「どうやってたった三時間で企画を展開出来るの?」と質問した。それで、先生の旗本らしい家へ歩く速さが非常に増えた。松澤家は酒匂の東岸で白濱から近道を通して四つの家並みで隔てる。勢津子ちゃんは来ずに数学が苦手な仲間と一緒に、お父さんと純彦君の数学部に出題を教えて貰う。久保ちゃんも、松本ちゃんも、綾瀬ちゃんも。一方、私達は日向ちゃんの数学部と、高橋ちゃん、長谷川ちゃん、木下君と小林君と一緒に松澤家に来て、城木先生が見せると約束した新技術を楽しみに。
「着きました。先生の家です」、30分ほどの散歩で松澤家に着いた。何回も訪れたが、庭での矢印のような杉を見渡してはならなかった。
「確か松澤先生は城木先生の末裔だね。こんな大きい数寄屋造りの主だとしたら最低でも幕末から建てたかもしれない」と言った深本さん。
「はい、先生の父親自身はこの家を築き上げてやがて先生が生まれ育ったです。当時抜群な建築家でしたし。とにかく第三代の末裔です」
倉崎さんが門の錠に気付いた。「入口の錠が変だね。掛かって鍵入れ用のものじゃなくてボタンみたい。押してみて良い?」
「当たり前です。門の特徴なんで、先生の家に入るなら押すしかありません。一気にね」、私の言う通り倉崎さんが赤いボタンを押し、そのボタンを支えるばねが門を動き出させ、ボタンの下で真中の長方形の積み木をひっくり回転させた。積み木は二つの仕切りに分け合った。上は数学問題を書く巻紙を入れ、下は八数字の番号錠を仕込んでいる。そう、この門を開くには数学問題を解かないと。
「面白ーい。まさか毎日先生は解答の番号を変更してるの?」、『数学の信者』らしい『防犯技術』に倉崎さんが興奮に聞いた。
「そうです。生徒が来る度、松澤先生は出題して生徒に解錠して貰います。松山先生と同じ、うちで塾を開いてるし、訪れた時に私達が解錠だけで悩んでます、たまたま。だが夜中で防犯して朝で間に合って来校するよう、特定の暗号を設定するのです。勿論無知です、あの暗号は」
深本さんが少し笑った。「自分で出題して朝自分で解くなんて笑えるもんじゃ。けどなんで番号を交代し続けるのに錠が対応出来るか?」
「そりゃ入ってから説明します。じゃあ問題内容を見せておきましょう」
「ちょっと待って。こっちの方を待たずに勝手に巻紙を開くなんて狡いの」、左から智埼ちゃんの声だ。付いてくるのは日向ちゃんの率いる六人の数学部。澁薙君と降恆ちゃんは昼ご飯の直後に秦野に帰った。笠人君もいなかった。彼は見た目で全然治っていざり車にもう頼らなかったが、自宅で谷子おばさんとちょっと時間を過ごして体を整えなければならないと、私が散歩中に電話を掛けた。良かったら、この後彼も電話で連絡を。ならば、秦野も小田原に真っ直ぐな糸みたいに繋がれる。
「そうそう、私達数学部より先にお邪魔するとは良くないの。物理部なら軽部先生の家の方が任意だ」、日向ちゃんがいつもの教室の時の偉そうな声を上げた。丁度良く、両校の物理部の幹部も右から姿を現した。
「そういう錠が出来たのは軽部先生の手伝いがあったよ。それに、物理はなかったら数学は紙にしか乗らない」、高橋ちゃんが学級委員長の声で反駁した。智埼ちゃんもそっと微笑んだ。
「ひひっ。やれやれ、この二人の委員。先生は中からずっと待ってるからさ、取り敢えず解錠しとかないと」、この互いの揶揄いを私が中断した方が。委員長と町長の娘は互いに近付いたと女王の勝負に見える。さて、どの算額問題は巻紙にあるか?紺青に塗った菱形は60度と120度という二等の対角を持ち、大きさ1を持つ。水色に塗った正方形は菱形に内接し、四つの三角形の区域を残す。二等の鋭角三角形の内接円の半径を求めよ。
典型的な算額だ。60度と120度を与えたのは立派に助かった、偶然な角度を与えて正弦と余弦を無理矢理に暗算することなく。菱形といえば垂直に交わる二本の対角線をまず見る。縦のやつをと横のやつをとすると、d1は60度がある二等辺三角形の辺であり菱形の大きさ1に等しい。一方、d2は余弦定理により120度に頼ってsqrt(3)だ。日向ちゃんは正方形の大きさをxとして赤い円形の半径をxをもとに求める。内接円の半径は三角形の面積や周囲の半分の商。正三角形の面積はx^2 * sqrt(3) / 4、周囲の半分は3x/2のことで、半径はx * sqrt(3) / 6となる。これから問題は正方形の大きさを求めることに移動した。
若林ちゃんはデカルト座標系に図を投影すると挙げた、相似の罠に嵌まらないように。時計回りに菱形をABCD、正方形をEFGHと付け、A、EとBは全正数の座標を持つと分かる。原点Oを菱形の中心にすると、Aは(0; 1/2)、Eは(x/2; x/2)、Bは(sqrt(3)/2; 0)。よって、AB辺を示す関数を書けるようになる。ABは下降する推移なので傾きは負数である。傾きは-1/sqrt(3)のことで、ABを示す関数はy = -1/sqrt(3) * x + 1/2。EはABにあった故に、座標を関数に引き換えれば、xはsqrt(3) / (sqrt(3) + 1)である。最後に、内接円の半径の長さは[sqrt(3) / (sqrt(3) + 1)] * [sqrt(3) / 6] = (sqrt(3) - 1) / 4、凡そ0.1830127なのだ。遠藤ちゃんの無理数の記憶はさすがに無双だ。3の平方根を1.7に限らず1.7320508までもさっぱり読んでいて、番号錠の限定八数字を満たすことだった。
八桁でも八つ長い有理数でもこの錠を解かす限り問わない。六つのつまみを回し、『パキン』って聞こえた時、早速何かがこの門の二枚の扉をくっついた力を抜き出した。二枚の扉が緩まって空気にふわふわしそうに揺れている。たった一本の指先でそっと押したと玄関への入口を引いてくれた。先生は玄関の前に出迎えた。派手な袴を格好にした私達はこうしてまるで禰宜の兵団みたいに進み込んだ。裏庭の塾に集まる時と同じ、先生の父親浅臣おじさんと母親檜重おばさんはちゃんと特徴のおつまみを用意して勉強会中にもてなす。城木先生も裏庭で垣型の瓦の鉢に育む花に水を蒔いていた。週末毎に実家に帰るという、めっちゃ兄貴らしい仕業だね。
この和風の屋敷は段々奥のラッシュナトゥールの色を醸し出している。上階の先生の部屋に上り城木先生の部屋に少し越したら、一番注目したのは机の上の壁に貼ってあって密集した澁嶺市の繁栄の頃の写真だ。全部は色付き。濾過器美術大会以外に、『波乗り』大会、『椰子割り』、凧型の帆を風の向きに張って海へと進む数隻の私船、鯨の肋骨にそっくりな『海中に浮く』漁船、昆布クリーム掛けのしゃこサラダ、電子効果から生成され空中に舞い踊る動物などの写真も。それはただ先生が属する世界のことに無知な皆の好奇心を刺激するつもりだ。勿論、人間が写り込まなければ、倉崎さんが目を張り付くそんな好奇心をくすぐらなかった。「人間なのに普通な人間に見えない」という感じ。
「では渡邊さん、日澤さん、深本さん以外、倉崎さんと皆に目隠しをして貰います」、サプライズを最後まで置いた為、城木先生は初心者達に黒い布で目を隠してあげた。国を震わせる機密に関わった気がする、と倉崎さんがそう感想した。高橋ちゃんと日向ちゃん達もよって緊張していた。「何処に連れて行かれるか?」ではなく「あの所はどうだろうか?」という緊張だ。だってパズルピースの明かりは彼らがずっと期待している。緑は幻想を閃く。青は危険を警報。茶色はパズルを出す。白は私達のピースを合金化。赤は不思議な世界に付き合う。但し、城木先生から聞き、ラッシュナトゥールのパズルピースは五つのみならず九つも光り、残りの四機能に相応だという訳だ。
「パズルは赤くなったぞ」、うちの物理部達に私が目隠しを開けさせようとした。城木先生がたった3秒を許可したので、皆は目隠しをそっと瞼の上に引き上げ、ぴかぴかする赤い明かりを一瞬楽しく見た。それから、黒いトンネルが赤い明かりの磁力に応じて空間に自ら出てきて、皆が蛇型に並んで私と智埼ちゃんと深本さんが末尾で立ち入った。途中で、ピースはいきなり黄色く光って変なことを知らせたらしい。
「Adelous doye Cibreily!(澁嶺へようこそ)」、トンネルの出口を越した直後に、城木先生は被根橋語で皆に伝え、目隠しを外して貰った。初めての訪問より、もう夜間ではなく、太陽が目映く輝いたり、海がダイヤを被ったらしく穏やかな波を立てたりする昼間だった。砂丘に駆け上がった時、草原が緑と黄色の両色を塗った一方、椰子と木麻黄は異常にラクダの首のように曲がったまま、平尚山脈は遠くの前のまま、窯籠森林は遠くの西のまま。一番驚愕したのは海岸沿いに数軒の家がいつの間に立っている。道路も新鮮にコンクリートで敷かれた。道路も新鮮にコンクリートで敷かれた。まさかの人の住む土地に見えた。
「先生、まさかこのピースの黄色い明かりが・・・」
「そう。貴方達はパズルピースのもう一つの三部が出来たことで、この多次元の空間にもっと活気を汲み上げました。さもないと寂し過ぎ」
「あっちは先生の車やねん?以前見せた動画に登場したやつ」、椰子の陰に止まった蛙型の黄色い自動車に智埼ちゃんが指を指した。
「うん、私のマンネストローの矢波です。通りも敷いたんで、貴方達との約束を叶えるでしょう。さっ、皆乗ってみて」、城木先生がそう応えたと、一緒に行かなかったメンバーに私達が残念な気持ちになった。うちの仲間と倉崎さんはまだ初々しくて夢見心地に周りを見掛けたが、仕方なくこの15席の車に入った。見た目は控え目そうで七席なのに、中の空間は異常に大きくて倍の席があった。城木先生は左で運転手の席、松澤先生は右で、私達は残りの13席を満たした。
「Dschanem Abbregadte!(エンジン起動)」と城木先生が口を隣の小画面に当てて命じたと、車のエンジンは蛙が「ぐわぐわ」と鳴くように音を上げて起動した。側に置いたレバーを後ろに引き、ハンドルの下のペダルを先生が踏み出したと、車はぱっと後方に退いた。ハンドルを左右にぐるぐる回したと、車はボンネットを後方に向けて砂丘を去ってきた。こうやって車は私達を平野と草原を越して乗せていた。窓は閉まっていないし、外の光景を見たり涼しい風を迎えたりした。澁嶺は先日豪雨を一日中受けちまい、土に大きい水溜り、草に雨の雫が見えたよ。急に車はタイヤの様子を変更し、もう通りじゃなく土を走っていた。二億年もここの住人だったし、自分の愛車を私達と出会って初めてまた運転する訳じゃない。幾度も洗濯したり、同僚の所に訪れたり、暇潰しに他の地方に旅行したので、通りか草か荒い地面かを問わず先生が平気運転している。そう、この車は岳が雪に掛かる平尚山脈を峠抜きで渡れる。それに、控え目な見た目で雨林をも越せる。木の間の空間は十分な限りね。
新しく生まれた家といえば、木麻黄の下に立つ筏と小舟の販売屋、平野に散らかす肉の店、野菜の店、海産の店、伸部川沿いの黄色い畑を耕す農場、草原での牧場、そしてサバイバル道具屋なのだ。あれらの家は産業革命の前期を再現し、同じ『田幅画建築』で建てられた。但し、屋根は城木先生の家より長く延べ、鱗模様に並べた瓦に釉薬を掛けて酸性雨から内観を守り抜く。彼奴らは活気の証だったら運営されているはずだが、人はいるか?答えは、いるよ。越した時に誰かが店員、管理人として働いていると見えた。城木先生によると、彼らはラッシュナトゥール人もウルドロント人もじゃないということで、一体誰でしょう?
城木先生の家に二つの米袋を持って帰る途中で、私と倉崎さんは米倉庫の係員の顔を何処かで見たことがあった。というより、先生の車が減速して新規な家を次々と越えた時、家の主である人々は短気な顔ではなく、知り合いを迎えるみたいに意気揚々な顔を作っていた。そう、彼らは私達と同じホモ・サピエンス、同じ東アジア人、しかも日本人に似ている。多数派は男性で顎と口の周りで髭が薄いのも濃いのも。武士の風格が強い。その時、倉崎さんは、「ひょっとして彼らは青木ヶ原の時の武士霊団?那月ちゃんが頭取な霊団だ」と挙げ、私と智埼ちゃんを呆れさせた。本当に霊団だとしたら、あの廃校で私の命を救ってくれた武士も彼らの一人でいる。パズルピースの幻想は黄色い明かりの下で本物になった。那月ちゃんも幻想の本質なので、ここにもいるに相違ない。城木先生の家にかな?
アルべランド家の壁には三色のルーレットが黒と白の市松模様に交代された。「ただいま」と常例に駐車場に止まって車のドアを開けた時に声を掛けた城木先生。「お帰りなさい、教授」と誰かが家の中から返事した。女の声。玄関の扉を開けて迎えに来たのは、間違いなく綾小路那月さんだった。私達は予想出来たが、本当にこの仮想空間に泊まるとは驚いた。総髪のままだが、那月さんはもう袴姿を庭球の服装に着替えた。頭に付けた赤い帯、白の四割・黄緑の二割・灰色の一割のシャツと、黒のズボン。誰かと野外で庭球をやって汗が肌をきらりと潤したほどな格好。
「那月ちゃーん」、倉崎さんが不意に抱きに駆けた。「おいおいおい、サヤちゃん。私ぬるぬるの」と那月さんが反応したが、倉崎さんが一気に抱き締めて「どうせしばらく汗かくのじゃ」と肯定した。その抱き締めは親友との再会というより、本物かどうか調べに揶揄う気がした。
「さっきクリッサンノール博士と庭球をしてましたね、那月?」と話し掛けた城木先生。
「はい。あの姉さんのお陰でこの貴族優先のスポーツが出来たんです。午前4時半頃起床して博士の家の前へ。今はもう6時半ですね」
那月ちゃんの返事は倉崎さんと日向ちゃん達をこの仮想空間の論外な時間差に気付かせた。ここの時間は現実世界の時間より五倍遅い。いわゆる、ここの一日は外の4時48分しか過ぎない。前の企画を行う間に沢山経験した私達三人が仲間にそう繰り返してしょうがない。物理部のメンバーは懐中時計を持ってきて時間を調べる習慣を持って、確実に6時34分と確認したよ。全然違う基準系に移動したと時計が自動的に適応。
「さささ、皆ご入りどうぞ。今日は中々新しいお客様が多いっすよ」と松澤先生が促した。
「お邪魔します」と私達が次々と挙げた。倉崎さんがそう感想した。「これは皆が最後まで置いといた秘密ですけどね」
「そういうことです。時間と空間における常識をぶっ潰すこの空間で企画を行ったことある私達はそれをパンドラの箱みたいにパンと見せては駄目で、風呂敷の各層をゆっくりと解けて奥の中身を明らかにするという風に」
「パンドラの箱風にすれば夢を見るも同然だ。外から中へと、フィルムを流すのと同じ、君を皆と城木先生の車に乗せて二億年前の地球を観覧して貰って論外さを少々銘じられる」と言った松澤先生。丁度、那月さんが朝食を読書室に運んだ。
「あの眼鏡を作る頃、『外では夜中なのに、ここではまだ夜明けで朝食を準備してくれる』という事情に会ってましたね、渡邊さんと日澤さん」、那月さんが朝食を出しながら聞いた。
「はい、姉さんのと同じ、私達はシュアマン半島の鵞鳥の目玉焼き、山羊の燻製やソーセージを食事に与えてくれたのです。お陰で、徹夜するせいで倒れそうな疲れに掛かりませんでした」
「ひひっ。蛋白質を普通より数倍の量で与えてくれるんじゃない。でもそれで徹夜しても良いと励ます訳ではないよ」と那月ちゃんが返事しながら一枚の皿だけじゃなく15枚もを手押し車から持ち出した。そう、15枚の皿の『Retel Brostoffekel』、シュアマンこと朱安漫地方の心であるブロストフこと穂門府由来のエネルギー豊かな朝食。「博士と皆も一緒に食べて。午後9時もまで勉強会を催す予定でしょう。企画をやるとはいつも通りエネルギーを沢山埋め合わせなきゃいけませんから」
倉崎さんがとうとう自分が私に聞いた質問に自ら答えを思い付いた。「あー、なるほど。3時間というのは15時間に変換か」
「そう。私がアルべランド博士の代理でこの机を面倒して皆をパズルピースを通して観察してるんです。皆ちゃんとエネルギーを吸収しないと、外に戻って夕食を食べる前にげっそりしちゃいます。企画の為に卓の整理が出来たので、皆座っておいて。私自分の体を綺麗にしなきゃ」
那月さんは城木先生の家のメンバーとして振る舞っていた。もしかして城木先生の二億年前の奥さんみたいかなと誤解されちまう。朝ご飯は前夜から準備出来て『マイクロ波の電気炉』で再加熱され、ボロンケルグ茶のカップと共に、先ほどの茶会による腹八分目の私達の食欲を甦らせた。浴室から那月さんは普通な袴姿に戻って読書室で私達と食事をし、何か謎を解くかのように話し合っていた。那月さんは城木先生のパズルピースの緑の明かりの具体化で、関連なる全ての不思議な現象を支配すると一番責任を取る。間違いなく、新しい家らを越した時に先ほど目に掛かった者達は那月さんの霊団。彼らはラッシュナトゥール人と生活している。
「いつから貴方はここに越したのですか?」と智埼ちゃんが質問した時、那月さんは今年の五月末だと答えた。彼女はここに住んで五ヶ月。それは松澤先生がパズルピースをお守りに入れて数学大会の前日に与えてくれた時と同時だった。一人のホモサピエンスにラッシュナトゥールのピースを渡した以上、残りのピースは信号を受け取り橙色を発光した。その明かりは特に私達が見ることが出来ない、まだ見つからないやつにしか発光しない為。厚喜さんと武蔵野さんの依頼に応答するよう、城木先生ことアルべランド博士・クリッサンノール博士・グロエフ博士といった被根橋共和国の代表は自分のピースの旅路を変更し、現世であてもなく彷徨っていた那月さんの魂を発見し、彼女に成仏まで臨時な肉体を与え、この家を新しい住所にしてあげた。肉体を持って彼女がこの仮想空間でも現実空間でもうろうろ歩けるようになるが、死亡の状態やピースの効果の下で一人の亡霊に過ぎないのだ。その効果は城木先生が『立体映像』と呼んだ。
「ご馳走様でした。うちの夕食の三時間前に朝食を食べるなんて奇妙過ぎですわ」、不思議な世界で生まれて初めての食事をした高橋ちゃんが感想した。日向ちゃんと数学部が気楽にお茶を啜って同じ感想を抱えたようだ。「城木先生、さっき言った『立体映像』というのはまさか私達が直面した謎を明らかに出来ますか?」
「そうですね。立体とは長さ、広さ、高さで表示出来る全ての物体ですね。写真を撮った度、対象とした立体は二次元にされ紙に映される。どんな三次元っぽい内容でも、写真は長さと広さしか表示しません。高さないしは厚さでも表示出来るように、全く新しい技術が必要です」
城木先生がその後松澤先生に合図を送り黒板で解説して貰った。「はい。立体を四面体、四角錐や四角柱に簡単化しよう。誰かを撮った場合、撮る人は撮られる人の表側だけを写真に写す。あの人の裏側を投影すればもう一枚の写真を。こうやって複数な角度で三次元の対象を撮影して仕方ない。勿論あの人の頭上から下、足元から上。四面体はお名通り四面、四角錐は五面、四角柱は六面ある。『立体映像』は面数に応じて写真を撮り続け、辺数と頂数に基づき写真を組み立て、空間に投影するのだ。辺は二平面の交線、頂は三つ線以上の交点でしょう」
若林ちゃんが挙げた。「先生、立体の運動も記録しなければなりませんね。さもないと、那月さんも霊団も動き得ません」
「当たり前だけど、別により複雑な課題に入るよ。その課題は面数、辺数と頂数は無限まで増えて立体を滑滑にすれば、写真の技術はもう要らないかどうか気になる。答えはまだ要ることだ。でも、写真の技術は中々変更され、解析的な要素を追加されるんだ」
「解析的というと、画素の場面と同じじゃありませんか。赤外線眼鏡に仕込む数理モデルも画素の原理を利用して暗い景色を分析して見えるようにさせるのですが」、純彦君の声が私の電話から挙がった。
「わー、二つの世界は繋がってる」、長谷川ちゃんが感嘆した。
「こういう電話があったとわざわざお越しするのはもう要らないんじゃない?まっ、絲島君の言う通り、前回の企画に使う数理モデルは写真を数千の画素に分割し群分に配分し分析した。『立体映像』も少し似てる数理モデルを使ってるけど、相違点は無数の平面に応じる写真を画素と見做し、立体の部分に当たり群分を作り、最後に積分の法則を使って色の勾配を整えるのだ」
遠藤ちゃんが少し考えた。「勾配というのは・・・日光に従って色の薄さと濃さを?」
「そう。日光に限らず全ての光源だ。色の勾配を管理出来るには、大学級の数学の面積分に随分頼むから。面積分があったら運動の課題も出来る。では、ある立体は遅くか速くか動き出し、そのまま何も介入せずに『映像』にしたら何が起きる?」
私達が目を閉じた。一人の陸上競技の選手がレースに位置に付いて号令の発射に列車ぐらい素早く走っているのを私が想像していた。列車と競争出来るよう、彼の両腕と両脚が前後して振り捲って機関車の主連棒と船のプロペラに見えちまう。その時、私が手を挙げた。「立体がぼやけますね。動き出す時に立体の運動する部分は実際、左右前後に振動してます。振動が速ければ速いほど、画素とする平面が急騰して重複が深刻になって立体が変形しがちです。一方、遅ければ遅いほど、空白が存在して画素がその為勝手に大きくなって埋め合わせて色の勾配も不安定になりがちだと思います」
「つまり、あるものが遅く動いたと、折り目や欠点など細かい所は見られて画素が足りないというもんな」と言った智埼ちゃん。私が頷いた。
「そういうことだ。一側面は過剰、一側面は不足。そこで加減算法は使われるんだ。振動なら周波数と周期が伴うことで、周期をもとに画素の状態が過剰か減少させたり、不足か増加させたりしてあげる。よって、立体はすらすらと動き出して君達に直面出来る訳だよ」
「ってことは、9月10日の夜に小田原を襲った武士団も『立体映像』から作られましたね」と言った小林君。
「そうです。『立体映像』はこの時代で魔法使いとか呪師とかの能力だと思われてます。この時代でも世紀中期までも。だからこそ、レベルが私達に相応しくないとは言え、彼奴らは貴方達を襲って恐れさせる自信が余裕。たった今、貴方達は把握したところで、それと付き合って働けば今回の企画を派手に出来ますよ。『算額主義』の表側は自分が出題した算額をもとにゲームを思い付く案内簿だけど、裏側は算額の図を立体にして絵馬から飛びさせる技術。では、夕食まで企画をやりましょう」




