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日本の定理・下巻  作者: 泉川復跡
【『算額主義』編】第廿二章。八卦の不等式
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22.1. レーザー介入、ペッパーズゴースト、体積画素、三次元追加、運動励起、理感注入

「はい、新人にご歓迎の椰子ジュースをお送りします。喉を涼しくするだけで覚醒を守れますよ」、以前と同じ、深本さんが澁嶺の名物である椰子をかち割り、中身の一リットルの水を流出した。青いゴムの合羽と手袋を着用した15人の『学者』と、受話器の方の騒がしい話し声は雰囲気をどんどん広げていったよ。

 私達が過去にも、現在にも、まさか将来にも直面するのは『立体映像』から生成された姿らのことが分かっている。私達と協力しているラッシュナトゥール人のパズルピースも、私達を狙っている謎の組織もその上級な技術で普段に出て来るのがあり得ないものらを召喚し、凡人の社会の常識を潰そうとする。レベルの差は著しいかもしれないが、「飛べ!」とか「出て来い!」とか命令を下した以上は、感情なあるかないかも、神様の代理で壮大なことをやるも同然。謎の組織は指令を遵守するほど機械的で無感情な軍団を呼び寄せる一方、ラッシュナトゥール人は感情ありで自ら働いて稼げるようになる個人達を。

 知るべきものは知るが、とにかく基本レベルの『立体映像』を生成しなければならない。空中でふわふわ浮いたり足踏みしたりする立体が出来ることに。基本のやつは二次元の写真から触れない蜃気楼のようなものを作る。そのうち、「光をたった一方へしっかり向けるにはどうすれば良い?」、「そんな光を作れるようにどんなものを要すべき?」、「その光は何回の変更を過ごして物体を投影出来るか?」という三問題は挙がってきた。光は自然だけのものじゃなく人工的にも出来るものだと初めて聞いた。赤外線眼鏡も光を作ると言われるのではなく、ただ弱くて視力が苦手な光を見られるように拡大する。今回はエネルギー源から全く生成。だから光の粒子と波動の二重性を究めなきゃいけない。

 慶應義塾の物理部のお陰で、今年はあまりにも奇跡の年だと気付いた。物理界に対してね。スイスのチューリッヒで特許検査官を勤めているアインシュタインさんは今まで三つの論文をプランク殿自身に雑誌に記載して貰い、特に物理部が知り合うドイツ人、スイス人の教授に届いてきた。那月さんのお兄さんは現在物理部の部長で、常陸教授や物理・工学科の教授に西洋との関係を深く発展させる手段を通して沢山依頼を委ね、そんな珍しくてさっぱり新鮮な論文を知って教えて下さった。最新なのはたった27日前公開されたの。赤外線眼鏡の電流を刺激する光電効果以外、アインシュタインさんの『特殊相対性理論』は基準系の相対性、ラッシュナトゥール人の博士達の仮想空間の仕組みに唖然とするほどのショックを避けてくれた一方、ブラウン運動は花粉の乱れげな泳ぎから原子と分子への真面目な視野を送り、光電効果と合わせると、『光子』すなわち『フォトン』についての認識を初めて広げたことだ。そう、フォトンは光の心臓であり、電磁力を刺激するやつだ。

 車の荷室から城木先生が二つのボンベを持って来た。「はいっ。ヘリウムとネオンのボンベは準備出来てます。この二つの稀ガスは私達が欲しがる新しい光線を生成する為の活性化環境を作ります」

「えっ?稀ガスなのにどないして反応出来ます?」と聞いた智埼ちゃん。

「反応が必要ありません。というより反応が出来ない方が安全です。このガラス管に稀ガスを入れれば、まもなく高電圧を掛けて放電したと、不活性の稀ガスの原子と付き合ったら物理的な衝突でましです。化学的なら別の元素の原子に変わってまずい」と返した城木先生。

「高電圧なら電子も素早く動いて稀ガスの原子にぶつかってしまいますね。稀ガスとは言えガスの本質を持って原子がばらばら飛びますし、ぶつかったとこの管を明るくしますから」と言った木下君。

「色々読んでたね、クリッサンノール博士の送ったあの原子物理の本を。電流からの電子が稀ガスの原子とぶつかってエネルギーを解放し、温度を高くする。フォトンはそれから生まれる」と私が言った。

「うん、物理と化学はここで交差しますよ。でも解説し続けたら貴方達がもっともやもやしてしまうので、今から生成を行います」、城木先生が言ったのち、管を黒い蓋でぎゅっと閉め、松澤先生に発電機を持ち込んで貰い、発電機のプラグを蓋の長方形のコンセントに仕込み接続を開始した。智埼ちゃんは『小さな世界の大きな魔力』という原子論の本を読んだままきちんと観察していた。私は木下君のさっき読んだ『我々は一塊ではない』。先生達は二つのボンベの弁を開き、管の壁の真中の穴を開きゴム管を通し、ヘリウムとネオンを順序に入れ込んでいた。管を稀ガスで満杯して初めて、電気に介入する。

「スイッチオン」と松澤先生が命じながら発電機を起動し、放電を開始した。『高電圧』のボタンを押し、一万ボルトまでプラスのボタンを押し続けた。菅に平気に触れるのは手袋の仕事だ。ガラスは絶縁体だとしても、非常に大きい電圧を掛けた電流が流れた中身はコンデンサに過ぎなく、素手で触れば、電磁誘導によって容量性電流が出来て致命的に感電しちまう。交流電流によっぽど関わった私はそういう電流に手を焼けられちまったことが。厚喜さんと『栗鼠輪檻』を作る頃、コンデンサがすらすら回転するかどうか調べる為に勝手に試行し、火花が鍛治みたいにあまり散って一瞬火を起こしちまった。厚喜さんが緊急オフを押したが二人共が手に火傷を余儀なくされた。焦げなくて幸いだった。あれからの傷跡はまだ私達の掌に残って手相に勘違いするほどだ。

 ヘリウムとネオンが一万ボルトの電流を『浴びている』。一万ボルトなら六度の熱帯の台風に巻き込まれるぐらいだ。自由系の電子の狂おしい進軍は稀ガスのダイヤぐらい堅固な電子殻にまるでライフルを構えて数百個の弾丸を撃ち続けるように攻撃していた。彼奴らは最小原子番号の稀ガスであるヘリウムを狙った。たった一つの殻を持って一番イオン化されやすい。自由系の電子の恐ろしい衝突を受け、ヘリウムは自分の電子を一個ぶっ放し、より高いエネルギーのレベルに上昇させた。そのレベルはネオンのものに相応しいことで、ヘリウムはそれをネオンに渡し、ネオンを励起状態に越した。そのうち、ヘリウムから飛んだ電子は自由系の電子に一旦と加入して管の中の『雪崩』を起こした。『一旦』とは無数の衝突でヘリウムは自分か同士かの電子を受け止め、限りの一番激しい仕方で元に戻る、という意味だ。

 ネオンは近代化時代の初期以来ラッシュナトゥール人の都市を夜間で明るくすることに使い始めた。電球だけでなく、建物、塔、記念碑や並木道の枠沿いに飾られた遥かに更新済みのガイスラー管も都市を洞窟の壁にくっつく大理石みたいにきらりと輝いた。そう、病院も市役所も大統領府もネオンの光に看板を明かして貰った。ネオンの作った赤と橙の明かりは私達の目に留まりやすいが、ラッシュナトゥール人の目に逆に青と紫に比べて劣っちまった。なのに、彼らはネオンの使用頻度を圧倒的に上げると主張した。アルゴンの寒色からの紫外線が目に害を与えるのを下げる以外、「もう海に属さず陸の住民であった生物」と肯定する為だった。

 そういう赤と橙の明かりもこのガラス管の中に見られた。ネオンの原子は励起状態に上昇したら、しばらく偶然に低下しフォトンを放った。水素を汲み上げる風船と同じ。地面から離脱するに連れ下がる気圧に対して中の気体は体積が増えて風船を爆発させる。そのフォトンは他のネオンを貫き、他のフォトンを生み捲る。フォトンはまだ一本の線を引いていない。彼奴らを整列させる為、城木先生は放電した五秒後に発電機との接続を切り、管の両頭で鏡を出して本当のガイスラー管に見えさせた。フォトンはその二枚の鏡に左右して弾み、自分が築く電磁力で同士を誘導し、軍隊の号令のようにばらばらな集団を纏まりに揃わす。やがて赤と橙の色が管を輝くことから一本の線へと残ってきた。

 挿絵(By みてみん)

「出来た、『ヴァブスター(Vabustar)』。私達の時代の超大国御蔵山(みぐらざん)は金属産業の為に初めて製作したんです」

『ヴァブスター』はこの光線にラッシュナトゥール人が付けた名だね。「金属産業ですか?あ、金属の原料を片々に切れるようにこの光線を使ったことありましたね、先生」

「そうですよ、倉崎さん。実は御蔵山人は軍隊に向かって機密として発明しました。敵の戦闘機、装甲戦闘車両を専用弾丸に代わって破壊することに非常に役立ってました。数百万ボルトの電流を放電出来る発電機ぐらいを手に入れた上は、伝説の太刀みたいに金属だけでなく絹もプラスチックも二等分に割れるんです」と言った城木先生。

「数百万ボルトですね。ということはこの光線より数百倍強いものですか?」と聞いた小林君。

「そう。実際、電圧がいくら高いとしてもフォトンの強さに関係がありません。ただフォトンの密度は別に関わってます。電圧が高いに従って電場を強く刺激し、交流電流の正弦上の振動と共に電子を連続的に励起させ、もっと多くフォトンを生み出すんです」、城木先生の言葉ではなかった。彼の計算機から女性の声が発声した。

「あそこからの声は、まさかクリッサンノール博士の?」と私が好奇になった。城木先生、松澤先生、那月さんは一斉頷いた。

「私の計算機はずっとオンにならなければいけませんし。企画に特殊なプログラムを書いたり、貴方達を付き纏い者みたいに観察したり、同僚と連絡したりする為でしょう。自動通訳プログラムで便利ですね」と快く言った城木先生。

「つまりクリッサンノール博士は母語を話してます?」

「そうよ、雅實ちゃん。そのプログラムを無効にしたと、博士のオスフォミエー(Osformier)方言ですけど。クリッサンノール博士は北方地方出身で」と言った那月さん。「通訳プログラムは円滑過ぎて雑音とか重複とかとか機械らしい訳文も聞こえませんね」

「円滑過ぎは何百年も改善させたでしょう、綾小路さん?その改善の速さに負けないように私もちゃんと日本語を勉強してます」と返したクリッサンノール博士。「そろそろ『ヴァブスター』を空間に射し込んで頂戴。部屋を暗くしておいてね、サピエンス達」

「了解、マンゴー割引のお嬢様」と揶揄いげに返した城木先生。「この光共振器はまだ透明ですけど、もう少し梃子を上げたと、真っ黒な箱になるんです。さて、『ヴァブスター』を差し出しましょう」、城木先生が共振器を右端に放線の先頭を黒板に向け、松澤先生に黒板を卓に接するほど移動し、感光剤を塗った枠を磁石で付けて貰った。松澤先生も二枚の鏡、二枚の凹レンズ、一枚のビームスプリッターとするアルミ箔を貼り付けた鏡、そして一個のマンゴーを用意した。ビームスプリッターを『半伝鏡《はんでんきょう》』と呼ぼうと。半伝鏡はまず共振器の放線の先頭の前に、次に二枚の鏡を半伝鏡と直角に、マンゴーの皿をその間に、一枚のレンズをマンゴーに、残りの一枚を黒板に向かって置いた。

「これでよし。高橋君、両方の窓で幕を下ろして下さい」、松澤先生が高橋ちゃんに読書室を暗くして貰った。そして倉崎さんを呼んだ。「よし、倉崎君、共振器の放線ボタンを押して下さい」

 彼女がちょっと躊躇したが、松澤先生の所に近付いた。黒赤と合わせる紫の幕はよっぽど暗い雰囲気が出来た。倉崎さんは感電を予防する手袋をずっと嵌めて共振器の先頭に手を走らせ、ちっちゃい隙間が残った所に指先を当てて圧を掛けた。すると、赤と橙色の光線が放たれ、半伝鏡を一部分で射通したり一部分で反射したりした。射通したのも反射したのも両側の鏡にもう一回反射し、凹レンズに届いて発散された。発散された右よりのやつはマンゴーに被られ、左よりのやつは黒板に最後に反射してマンゴーに戻った。何があったのか?マンゴーの赤と橙色の姿は感光剤の枠に『印刷』された。『ヴァブスター』と全く同じ色。

「きらきらでしょう?これは立体映像の原始版です」、城木先生が枠の隣に来て授け続けた。「『ヴァブスター』に半伝鏡を光の波に分析して数回の反射と発散を過ごして貰ったと、右側の『照明光』は物体へ、左側の『参照光』はこっちの感光剤塗りの枠へ突入。波なら反射、発散、干渉という性質がありますね。物体に突入したと、この光は発散される。物体の色も光の波動によって変遷する波長に決められることで、二つの光はこの枠に合流したら、確実に干渉を起こし、波長に応じる色も再現するんです」

「先生、光の干渉といえば明るい部分と暗い部分も考察しますね。というか波の位相を」と挙げた私。

「そうですね。位相ならどっちは光が届くか、届かないかを発見してくれるんです。物体の凹凸、光の届く限界は物体の映像を三次元に出来ます」と言いながら城木先生は手を鏡の系に入れて光線に『貫通』され、マンゴーをぐるぐる回転した。黒板にマンゴーの動きも、先生の手も見えてきた。「立体映像の基礎はこれでしかありません。光干渉によって物体を波長の組み合わせに投影する技術」

「ただ本番はこの実験を100%企画に使う訳ないでしょう。物体の元の色を見せるならより細工な手段を要するんだという。更に、動ける立体を再現することだ」と言った松澤先生。

 受話器の澁薙君が何かを挙げた。「先生、『ヴァブスター』という光線を用いなくてもこういう現象が出来るんですね。まっちゃん達も聞いたことあります。光源に照らして貰う人物と、45度傾く透明なガラスでさえあれば」

「あー、ペッパーズゴーストだね。少年祭のお化け屋敷の為に仕掛けるつもりだったけど、最後まで財政的な上に出来なくなった。でも廃校で降恆ちゃんを怖がらせるのに使って良かったもんさ」

「君とナギちゃんは六つの鏡も廃校の上階で配置したね、確か。僕を頭が赤くなって血管が浮くほど怒らせる為に」と言った降恆ちゃん。

「んー、ペッパーズゴーストは確かに『ヴァブスター』を用いずに物体を別の鏡に投影する方法です。光源に照らされる物体は『派生の光源』となり上の鏡に反射して像に出来る。元の色も守れる。ただ物体の像ははっきりと見えるように鏡の透明さと環境の暗さに頼みます」

「立体映像の初級版は同じ短所が存在してるんじゃない、シルビー(Sylvie)君。でも『ヴァブスター』介入と違ってペッパーズゴーストは子供も出来るほど簡単で、遊びぐらいみたいに開発してしまって、第二級に値するよ」と言ったクリッサンノール博士。

「確かにね。『ヴァブスター』など光を凝縮する複雑な技術の代わりに、見本、光源と鏡だけで良い・・・だったら、第三級はどうなりますか?ペッパーズゴーストを受け継いで物体をふわふわ浮くように投影しますか?」

「大体そういうものです、渡邊さん。というか計算機使用版のペッパーズゴーストです」と言ったら、城木先生が共振器をオフにして鏡と枠とマンゴーを整頓し、部屋の電気を付け、板型計算機を取り出した。「これから計算機を使い始めます。計算機に保存してある三次元の物体の画像をまるで複製するみたいにあげて角錐で包囲して、漏斗型の籠に見えるんです。うちの時代の博物館で展示品を紹介する為にこうしました」

 挿絵(By みてみん)

 すると、城木先生は板型を折り畳み式の計算機と接続して情報を同期化した。それで板型を立方体の箱に入れて透明な部分に画面を当てたと、折り畳み式で操縦するだけでまし。普通なレンズを使ったら像は画面に映る物体と同じ大きさで困るし、複数の凹レンズを組み合わせて鳥籠ぐらい形作った。レンズとレンズを繋ぐならシリコーンの接着剤を。勿論珪素ではなく、珪素が核である重合体だ。くっついたと、先生の二人は私達物理部に円柱の台を作って貰った。倉庫からのアルミニウムの輪、足、おねじとめねじを装ったら堅固な五徳に相違ない。箱を五徳の真中に鍋として入れ、切頂八面体に出来たガラスの鳥籠を被せたら、城木先生に折り畳み式で三次元の物体のギャラリーを活性化して貰った。固定するのも、固定したまま動くのもあった。農家、陸上選手、木、ワイングラス、貝殻、ルビー、クラゲ、トカゲ、海上の客船、噴火山。案の定、それらは全て真っ直ぐに立ち上がったように再現されていた。

「ありますよ」と城木先生が言いながら電気を付け直した。「ただガラスに頼らないまで辿り着くなら一世紀も掛かったんです」

クリッサンノール博士が直ぐに付け加えた。「『ヴァブスター』を使い直すけれど、連続波動ではなく拍動にします。それは瞬間的拍動系の『ヴァブスター』を通して空気実体積の立体映像生成、という技術なんです」

「瞬間的拍動?ってことは一瞬毎に放出するやつですか?」と聞いた遠藤ちゃん。

「一瞬ではない。一刹那だ。しかも一刹那より遥に短い」、那月さんが返して時間の0への漸近の恐ろしさを私達に感じて貰った。

「そういうことです。一拍は刹那より数千倍、数万倍も早くて普通の『ヴァブスター』に勘違いしてしまうほどです。だが粒子の視野に対しては大した差となる。貴方達の周りの空気は混乱してる無数の原子を含めていて、この『凝縮光』は自分の目に留まる全ての原子に引き金を引いて弾丸を撃つみたいな仕事をします。撃ち、弾込め、そして撃ち、弾込め、そのまま。原子は何かに撃たれたら何かを失ってしまう。それは何か分かってますね」と言った城木先生。

「電子ですね。電子を失ったら陽イオン。足したら陰イオン。イオン化と呼ばれる反応やさかい」と応えた智埼ちゃん。

「正解。イオン化される空気は致命的な危険を冒す。特に私達の呼吸系。その為、像の周りの空気部分全体を孤立させて初めて、プラズマを活性化するんです」と返した城木先生。『プラズマ』ってもう一つの新用語が聞こえた。

「『プラズマ』というのはひょっとして電子を失った原子と、原子から飛んだ電子が巻き込む状態ですか?」、受話器の加藤君が声を掛けた。

「さすが八田蜜化学部の部長。正しい推断です。以前の『凝縮光生成実験』によると、飛ばされた電子が原子に帰れるように相応しいエネルギーを解放しなければなりません。フォトンはそのエネルギーの付き添い。普段には、あんなに強い力を受けないので彼奴らは別れたままです。『電離体』とも呼ばれる為です」

「さて、生徒達に見せましょう、『空気実体積の立体映像生成』を」、松澤先生がそう求めた。

 ヘリウム・ネオンの『凝縮光』を生成する共振器は再び舞台へ。智埼ちゃんが円錐の先のプラグで共振器を板型を入れた箱に繋いだ。そう、それは普通な箱ではなく、上の空気部分を外に孤立させ『プラズマ化』する用がある。日向ちゃんが共振器の普通放線から瞬間的拍動に変換し、城木先生のプログラムの実行する拍動の周期を10^-12秒と決めた。一秒の一兆なんて原子のレベルに届けるぐらい平均な数。選択肢の一覧に10^-18もあって鳥肌が立ったよ。

 起動され、このプログラムは共振器と無線的に接続し、中の検知器に自分の指令を守らせる。しばらく、箱の上の枠の穴が開いて点々の列を引き透明な盾を築いていた。3メートル高い角柱の盾、ラッシュナトゥールもサピエンスもの身長を超えて。この盾は内観の空気を電磁場に巻き込み『厚くなる』かのようにした。「発射!」と城木先生が言って実行を開始した。やがて電気らしい『バチバチ』という音が途切れがちっともなく鳴り続け、何か透明な刃が空気を鉄の板として分割したみたい。それから赤と橙のドットは『ぽっ』と現れて整列してきた。一刻も早く人像が見られている。拍動を止めた直後、ドットはゆっくり明るさが減って消えちまい、枠の中の内観を原本の色で塗っていた。色付いたのは二次元の画素と違って、三次元の体積画素だ。こうやって『ヴァブスター』の創作者、御蔵山人の発明家ハモンド(Hamond)・リュエスキン(Roeskin)の姿が出た。

 挿絵(By みてみん)

 ただの像なので筋肉、骨、血管、臓器、神経も全然存在しない。幾何学的に再現された三次元の塊に過ぎない。那月さんなど、パズルピースの神技術に形作られた像は唯一の例外だった。第一級は『凝縮光介入』、第二級は『ペッパーズゴースト』、第三級は『体積画素』だとしたら、那月さんは第六級、最上級にしか属さない。第六級は像が本物の生物の特徴を与えられる『理感注入』で、私達も謎の組織も時間をどれぐらい必死に追い付くとしても届けないレベルだ。命を維持する機関のみならず、理性も感情も注がれ像の脳を無駄に大きい胡桃にせずに済んだ。でも、そうすれば像が人間の認識を手に入れ誰にも操縦され得ず自分の志に振る舞っちまう。次の仕業はどうなるかさっぱり分からぬ。善意はともかく、まさか悪意なら危険過ぎる。だから第四級と第五級を注目するのだ。

 挿絵(By みてみん)

『算額主義』の核はまさに第四級と第五級に頼るしかない。描いた図を本物みたいに現実世界に連れてくる為に、どうか二次元を三次元に変換したり運動の要素を加えたりしないと。第四級は『三次元追加』と呼ばれた。描いたのは立体だとしても回転性が不能故に第三級で投影出来ないとされる。そう、板型計算機での数値化の立体は自動的に回転したことで表側も裏側も見せられる。第四級は高さないしは厚さだけでなく、図が仕方なく隠した裏側をも付き加える、『双子方法』で。同一性の場合、表側と同じく。じゃない場合、算額問題の内容次第で表側と独立。立体は日常生活のものが多いので、数え切れない平面に対応出来るように、『平面は写真、写真は画素』というのを『平面は写真、写真は体積画素』で修正するし、面積分を使うと表側の面積分と裏側の面積分が交われば立体になる。

 第四級は伝統的な問題に向ける一方、第五級は動性がある新型の問題に向けるのだ。勿論、那月さんも、彼女の霊団も、平川と五十嵐の率いる霊団も第五級の技術を備えなければならない。『運動励起』と名付けた。あの夜で大砲の煙を利用して落下する彗星に変化したうちに、平川組もなんとか『凝縮光』を放つ機械をもって凝縮された煙の中で人像を作っていた気がした。煙はプラズマの籠となり、武士姿の像を険しい宇宙人を護送するみたいに地面まで運ぶかもしれない。出来るように、非線形運動は必須だ。動きはずっと直線に従う訳がない。問題に登場する人物、動物、事物の特徴によって様々な動き方がある。その時、体積画素が『増減算法』に整理されてから像がすらすら動ける。動き出す時、当たり前にその透明な盾を備える。但し、もう角柱ではなく像に近く寄せる像の形で甲冑に違いない。

 像の運動を操縦するには『時間』と『軌道』を把握することだ。空間座標系は物体の位置を教える一方、時間軸は物体があの位置へどう辿ったか決める。絵馬から飛ぶものは飛び続けることになるので、その組み合わせは大したものになる。反面、像がどんな遠くへ行っても問わないが、自分の『基地』となった絵馬に必ず帰らせる。軌道はそれから作る、出発点も到達点も絵馬であるように。この二つの要素だけで私達が作ろうとするプログラムの成功率を半分も占めると気になったよ。

 挿絵(By みてみん)

 手帳ぐらいの絵馬型の設備を私達は作ろうと思っている。使う人は算額問題を考え出すことに困っていても使える。この設備は蝶番蓋付きで、中には出題向け画面がある。専用ペンを使ってその画面を活性化するしかないね。活性化した時、『古典的』か『革新的』かという二択問題をまず表示する。『古典的』にすれば、対象の選択は図形と立体に限定される。一方、『革新的』は対象と背景を好きに決めても良い。ただ対象の大きさの入力、特別な数値の挿入、法則の設定、満たすべき条件の提案、ある線分の未知な長さ・周囲・面積・体積・最大値・最小値の求めは共通点だ。もう一つの共通点は、問題が出来上がった場合、プログラムの情報系統に入れる前に解答可能かどうか最後に確認して貰うこと。もし不可能だったらどちらを修正すべきかを即指名してくれる。

 問題が系統に入った上で、関数の一連を過ごして図の像を飛ばすのだ。「プログラムなら関数は肉体」とずっと刻んでいるわ。大体十もの関数を渡るかもしれない。

 一つ目は対象・背景・数値・条件・要求を別々に剥がし区切る『解剖関数』。

 二つ目は鉛筆を紙に擦るように背景を薄く形作る『スケッチ関数』。

 三つ目は数値に従って背景のものを測る『観測関数』。

 四つ目は凝縮光を生成し像の鎧を図案する『励起関数』。

 五つ目はプラズマを点け色を彩り像をぶっ飛ばす『離陸関数』。

 六つ目は体積画素を管理する『解像関数』。

 七つ目は初めに入れなくても良いが、数学部の中の三人のメンバー住吉桂子(すみよしけいこ)ちゃん、新田湯音(にったゆね)ちゃんと林秦江(はやしはたえ)ちゃんが提出した『列化(れつか)関数』は体積画素を蛇の身のような列に集め、像の運動に沿ってその列を『折線』で移動させ、色の様子を更新することで、認められた。ある物体は早過ぎも遅過ぎもなく運動すれれば、画素を増減するのが不意にプログラムの速度を抑制しちまうし、むしろありのままの画素数を群分に区切り『循環性の待ち行列』みたいに扱った方が最適でしょう、と湯音ちゃんが代理で説明した。

 八つ目は時間軸を追加する『時間関数』。

 九つ目は軌道を設定する『往復関数』。

 最後は解答後に結果を可視化する『模擬関数』。それぐらい先生の家で一日中にやり切るのが無理で当たり前だ。仲間達の出題の進捗と並行して次の一週間を多忙にしちまいそうだね。

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