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日本の定理・下巻  作者: 泉川復跡
【『算額主義』編】第廿章。黒蛙、青蛙、白蛙
12/16

20.3. 四文字『名衣紋式』はどうやって企画を面白く出来るか?

 10月18日の水曜日。授業時間が終わってから私達の本番が来る、という習慣は続けている。町役場に行く代わりに、私達は学校の専用馬車に乗ってずっと前から行きたがっている『若原屋』に連れて行って貰った。最早一ヶ月八日ぶりだ。倉崎さんも当たり前に私達と馬車に。一方、深本さんは私の自転車を借りた。私達を先生達と乗せる馬車が走って数分後、高橋ちゃんと吉岡君が先頭な仲間達が自転車に乗って後ろから付いてきて、この凡そ10キロメートルの経路でまるで一気なパレードをするように見えた。そう、喇叭とかドラムとか号令とか必要なく、ただ車輪の地面との摩擦音や、自転車のペダルと鈴の鳴りがあるパレードだった。

 やがて30分は風が吹くように素早く過ぎた。『若原屋』の南側の茜色の鳥居は黄昏の灯りにきらりと輝いて酒匂川の向こう側からルビーみたいに見せた。いつも通り、駐車場はこっち。酒匂の一番深い部分の上に硬くなりに再建された橋、鳥居へのコンクリート化された階段は相変わらずだが、草原はもう秋によって緑を欠かせ黄色に掛かり、すすきが特に多く集まり周りの野草と強く揺れていた。二台の馬車と48台の自転車は駐車場を満杯させ、八田蜜5年2組の全34人や白濱5年3組の全22人を現場に。まだ橋を渡っていないが、皆は走っている汽車の火室のように心臓がどきどきし、手に汗がびっしょり掛かり、緊張感を緩めるように話し掛けていた。渡ったら、坂の上に立ち待っている三人が見えた。日向町長、緒方(おがた)警察署長と城木先生。先生は公に私達と打ち合わせたよ、『東京大学化学部の教授室で籠って報道陣を躱した挙句』。

 『若原屋』と黄色く刻んだ額束をずっと掲げた、三ヶ月前ぐらい大工おじさん達と必死に引き立てた鳥居に拝み、祈り、くぐり、鱗模様のタイルを敷いた入口を歩いた。光っている両側の電灯、遠い裏のトイレ、かつて屋台だった虚な木屋の列はありのまま何か新しいのを待っていた。そう、広場には何かが結構新しくなってきた。ベンチの二列の間に、50脚の椅子は広場の長さに沿って5×10の長方形を形成した。もう二脚の椅子は特別ゲスト倉崎さんと深本さんに先頭で置いた。その前はかつて舞台だったが、もう解体され、U字の机や移動式黒板を配置した空間だった。川へ向かって、『花火團』はU字の右に、校長と学長方は左に、担任方は底に。両校の『民衆』は次々と席を取り、性が紛れ込まずはっきり男学校と女学校の学生として起立と礼の後に座っていた。交流電流の下に、会議は始まった。

 純彦君が立ち上がって開始の一言を言った。「はい、始まりますと、金塚先生、柳川先生、東京大学の大村教授、慶應義塾の常陸教授と早稲田大学の和久井教授は私達の山梨県から小田原への帰りをお待ち下さり、大変有難うございました。それに、我が校と大学とのご契約をお結び誠実性と合法性をお守り下さる日向町長と緒方警察署長、私達と松澤先生との企画にご協力下さる城木先生に心より感謝を申し上げます」

 その感謝に拍手喝采を送ったら、大村教授は返事した。「感謝するのも我々でございます。君達のお陰で我が校は危機を乗り越えました」

「実は子供達だけではなく、憲兵の方様も我々の教授もお助けになりましたよ。ですから東大化学部の松澤教授にご招待致しました」

「どういたしまして、和久井教授」と返した城木先生。「この会議の司会としてご招待頂き有難うございます。譲渡契約で始めましょう」

「はい。契約が出来上がっても未練はまだ残っておりますが、約束を守るしかありません。ここは開成村、松田村、大井村、南足柄村、小田原町に地理的に結ぶので、教育施設の管理を任せると合理的であろうと」、常陸教授は未練を真っ直ぐに述べながら契約を承認した。

 日向町長が声を掛けた。「この地は最初から小田原ではなく開成村、大井村と松田村の交差に位置しましたので公有地とされております。子供達はここを自分の夏祭りの敷地と選んで以降大量の売上を納めたのち、私はその三つの村と南足柄村の村長と会議を行い、税金としての売上の部分を摘出し『発展資金』として配分したんです」

 大村教授が感想した。「田舎の団結はさすがに強いんですね。小田原は身勝手に領地を広げてうちの村を合併する野望を抱えるなどと勘違いして心配するのではなく、この単純な田舎の祭を出来る限り遠くへ広告し生活を改善させる為に、その子供達の意見を一緒に絶賛し我々に一時所有して頂くことにしたという訳か。君達子供も出来る限りこの荒野を破壊してなかったでしょう」

 純彦君が応えた。「はい。ここに何を建てる前に神道の儀式を行われければなりませんでした。二つの鳥居を立てるのもここをもっと神聖にさせて頂くつもりでした。以後もう一軒、二軒の建物を築き上げると、木造と石造にしてここの芝生は一部分で剃られてしまったもののまだ生き続けられるんです。会議後に帰る時、電気を消したと、蛍が多く見えます」

 常陸教授が少し笑った。「今は秋ですから蛍が見えませんよ。その代わりには百舌鳥(もず)。以前の日にここを視察してた間、百舌鳥の鳴き声が聞こえました。確かそっちの屋台の上に乗って鳴いてきた二、三匹が」

 私が言った。「はい、毎日周りの芝生に水を撒いたり、広場と屋台を洗ったりして頂いてますし、たまたま小動物はここに通ってるのです」

「どうりで直本君、厚喜君と武蔵野君は君達を後輩としては相応しいですね。だから我々は、自分の生徒ではなくただ中学生に関する催しに二回も参加したでしょう」と感想した和久井教授。「さて、あの契約書には残り六つの署名で効力が出来ますんで、宜しくお願いします」

「承知しております。山梨県にて先生方の契約書の内容を松山先生と松澤先生を通じて拝読しご同意をご確認致しましたけれども、小田原に帰ってから正式に署名をお書きすることに。ではお書きします」と返した純彦君。

 それから、緒方さんは黒革張りの書類挟みを机に出した。その書類挟みには契約書や、蛇腹風に折られた氏名記入用の証書だ。夏祭りを作りに尽力した両組の全42人、小田原政府の代表日向町長・苅田《かりた》副町長・東堂《とうどう》秘書、法執行機関の代表緒方警察署長・黒岩《くろいわ》隊長、大学の学長、両校の校長、八田蜜の松山先生・葛城先生、白濱の松澤先生・森坂先生、そして先輩達の署名も紙に見えてちょっと驚いた。学長先生達に聞いた時、大村教授は代表を務めてその書類挟みを先輩達に送り、氏名を記した後に翌日送り返して貰ったと答えた。その為、編纂して沢山の署名を受けたのに、その契約書は『花火團』が名前を入れるまで効力になっていない。契約書をもう一回読み、松澤先生が手紙で送った内容をちゃんと覚えたら、全然一致したと確信した。厚喜さん、直本さんと武蔵野さんにも見せたから、裏で修正することなんてない。

「ったく、そんな疑り深いのは必要ありませんよ」、大村教授が私の仕草を結構笑って話した。「無断修正はあり得ませんから」

「あっいえいえ、『花火團』で最初に記入するのは私ですし、企画を作る途中で権利が保証出来るようにちゃんと暗記しておくからです」

「こうやったらどなたが『花火團』の首領かお前のことを勘違いしてしまうんだ」と純彦君がにっこりしながら言った。

「文部省に通過して頂けるのは簡単なもんじゃありません。この地を『大学の臨時的管理の下の土地』にすると和久井教授が閃かなければこんな上手く行けるとは果てなかったです。臨時的ですし、君達に譲渡することが時間掛からず『本当の地主に譲る』という策を守れるんです」

「お金が目で見えて初めて彼らが考え直したでしょう、常陸教授。お金を稼いだ子供達に投資しない理由がありません」と言った金塚先生。

「はい、だから四年を規定しました。高等学校に進学せずに、子供達はどう昇進出来るか調べたがるんです」と返事した常陸教授。

「ご記入致しました。お願いします」、降恆ちゃんが最後に名前を入れた。「四年だったらお賭けに過ぎませんでしょう。もし四年で活躍したら先生方の大学に入りませんし、もし失敗したら完全損失ですし、一番良い場合ならば先生方に研究を補助して頂くとは」

「それは第四条に表現されました。君達がお助けを求めるまで、私達は部外者であります。だからこれから関係が切れてしまう訳ではなく、遠慮なく補助を求めるのが強く励まされますよ。例えば阿波郎教授。教授と一緒にまだ経路がありますでしょう」と言った大村教授。

「はい。それでは阿波郎先生、昨日から絶賛した次の内容をお願いします」と純彦君が求めた。

「はい。必要な署名を全部集めたことで、譲渡契約書は本日より効力ありとされます。続いては私達の最新企画の中心である、倉崎沙也香さんに『若原屋』の学生資格を承認させて頂きます。倉崎さん、立ち上がってご自己紹介お願いします」

 先頭で倉崎さんが皆の拍手にゆっくりと立ち上がって地味な緑の浴衣姿を構えた。包帯はもう彼女の頭を巻いていない。「皆様、こんばんは。改めてあたしは倉崎沙也香と申します。かつて苫賀井中学校の学生で三年半でした。うちが大借金を返済する為途中で退学届を送って縫製工場に働いてしまいました・・・言いづらいですけど、借金を返しにあの頃の給料が足りてなくて、縫製だけでなく店員、仲居など仕事を務めており、しかも、売春ですらお金を稼ぐこともありました。現在、その借金をほぼ返したのち、勉強の道に戻る望みが強く存在しておりますので、是非宜しくお願い申し上げます」言葉を終わらせるに連れ、倉崎さんが文字がそれぞれ自分の体の一部分で言った度にその部分を引き抜いたみたいに凄く重く話していた。彼女の最敬礼は体の中の重い息を放ち、私達の再びの拍手を浴びてきた。

 城木先生が優しく頷いて返事した。「自己紹介を心よりお送り下さり有難うね。基本的に倉崎さんはまだ卒業しておりませんし、弟が務めてる白濱中学校に入学届を送ったら良いが、20歳でも大丈夫でしょうか、柳川先生?」

「んー、我が校に普通より数年上で入学するのは珍しくありません。20歳で入学すれば理屈上は問題があまりありませんけれど、我が校に対して史上最年長の場合ですし、もし五年生として入ったらも生徒達の現在の卒業試験準備に追い付かない恐れがありますし、『若原屋』の学生資格を認めたらましだと思っておりますね。『若原屋』は白濱と八田蜜の合同財産ですから、倉崎さんみたいな特別な経緯がある生徒は二校の両方に訪れるのが許可されるのです。阿波郎教授、確か彼女に何か問題を以前与えましたね」

「はい、こちらは私の数学問題における倉崎さんの解答です」、城木先生が鞄から倉崎さんの『薔薇を噛む鱒』問題の解き方をきちんと記録した数枚の紙を柳川先生に渡した。「私達に助けて貰いましたけど、違う算法を考え出して解きました」

「三角形に紙を切り水域を示す多角形の部分に重ねる、という算法ですね」、白濱数学部主任でもある柳川先生が算法を直ぐに気付けた。先生も残りの先生に見せた。

「これを重ねたと、水域の面積が何差で増えるか、鱒の卵を守り抜く可能性が何割で高まるか予想出来ますね」

 金塚先生が感想した。「もう一つの方法がありますが。対称性ありのヴィ形の面積を1に正規化し、両方の半分は0.5とし、重複された底を削除したり上からの水域の面積増加を足し算に法則化したりしては上手く行けますから。でも、五年間中退の生徒にとって見事な結果でしょう」

「これから倉崎さんを『若原屋』の初めての学生と認められますか、お二人の校長方?」

「そうしましょう。倉崎さん、座って。但し、『若原屋』はどう発展すれば良いか、答えて初めて、倉崎さんは適切な資格を貰えるんです」

「良い質問です、金塚先生。『若原屋』はどんな教育制度に適当すべきか、どう仕組めば良いか、当たり前に『花火團』達に答えて頂きます」

 笠人君が発表の番を取った。立ち上がる中に隣の澁薙君と智埼ちゃんにぎゅっと支えられた。「改めて私は松兼笠人と申します。昨日と本日の授業時間で仲間と相談し、白濱の女性仲間の情報を収集した上で、『若原屋』の新施設を別々に両校のクラブに従って施させて頂きます」

 両組と先生達から立派な騒ぎをしていた。笠人君が言い続けた。「皆さん、お聞き続け下さい。松山先生と松澤先生に提案したのち、先生のお二人はこの地を『年齢無差別向け学校外教育施設』と分類すると考案しました。ですが、現在の教育制度に合うべく、『高等師範学校』と分類すると絶賛したんです。二つの中学校の管理下の高等師範学校、第二条に適当しますでしょう」

「だから半公共と言われるんじゃない、へへっ。両校に管理されたら、男性と女性は一緒に勉強しても構いませんね」と楽しく反応した和久井教授。「師範学校だとしたら、生徒達を教師になる為に教育するのではありませんか」

「はい、そうです。ただ私達の目指す将来の教師は普通の教師とちょっと違いがあります。両校のクラブに従って施設を建てれば、学生は色々な専門に訪れて自分が好きな専門を狙い、先生だけでなく仲間に補助して貰い、『学び合い』、『教え合い』と『作り合い』という方針を固められます。うちの学校の先生方の独自な教え方は私達に自分のクラブを創立させ、こういう考案の動機でした」と私が返した。

「ということは君達は別々のクラブ、それともクラブが専属な同じ専門に応じて建物を?」と問い続けた和久井教授。

「単に理科と社会に区別することです」と答えた智埼ちゃん。「校内のクラブは常用科目を専門にして活動しますので、理科と社会の配分にしたらとても簡単です。そのうち、数学は理科、文学は社会に特に含めるのです」

「ね、芸術も忘れなあかんで。ありゃ加えなかったら面白くないよ」と注意した高橋ちゃん。

「うんうん。堪忍堪忍。理科、社会、そして芸術」

「んー。理科と社会を二つの区分にするのでは。つまり、一つの科目にあたり一軒の専用建物ですかね」と確認したい常陸教授。

「そういうことです。常用科目は実際に様々な分野を含むものですから、分野に応じる部屋数に対応出来るよう、専用建物で良いんです。特には、建物の地上階で大学のものの半分ぐらいの一般講義室を仕切り、企画発表会や頭脳大会などの為に使います。勿論、娯楽の為にこの広場は是非保存します」と答えた澁薙君。「では、先生方、倉崎さんにどんな資格は合うと思いますか?」

「特別な師範学校だと認めなければならない為、倉崎さんのことを『学徒』と承認したら如何でしょう?『学生』と『生徒』を組み合わせなければ、『学び合い』、『教え合い』、『作り合い』という規則に人は教える人と教わる人の両方になる訳では」と常陸教授が答えた。

「『若原屋の学徒』と言いますね。そうしますと、倉崎君、最初の『若原屋の学徒』におなりになりおめでとうございます」

 松澤先生の祝う言葉はもう一回の拍手喝采を激動させた。倉崎さんは学問の道に戻れて素敵な笑顔をして隣の深本さんに共有した。高橋ちゃん達と吉岡君達は将来がはっきりと定められると確信した。吉岡君がそのうち声を掛けた。「これからクラブ共がどんどん熱く活動しないとな」

「ったく、明六社のようになることを期待しておりませんからね」、騒がしい群衆に感嘆した常陸教授。

「ひひっ、福澤先生の集団のレベルは手の届かないところだとは思います。自分の色のままで良いですから」と私が返した。

「はいはい、皆お静かに。今からこの会議の盛り上がりになります。『若原屋』で行われる企画の独自さをはっきりさせることなんです」、松澤先生が皆を知らせて騒ぎを鎮めようとしたが、より大きい騒ぎの動機となっちまった。

「ほらほら、騒ぎ続けたら企画についての内容が聞こえないでしょう。だから静かにして」、深本さんが静粛を男達に命じた、いつもの真面目な執事の音質で。「はい」と男達が一斉返事した時、笠人君も綾瀬ちゃんもぱっと笑った。笠人君はもし女になったら同じ音質で命じるかな。

「有難うございます、深本さん。さてと、以前の二つの企画に基づき、この地で学徒達が行う企画には何か特別があるでしょうか、体系化させて頂きます。松澤先生、松山先生、そして勿論『花火團』、夕べと今朝のお話し合いにより、お願いします」

「承知しております、阿波郎教授」、松山先生がまず立って後ろの黒板を使い始めた。今から皆の目線はあのタイヤ付きの黒板にしか留まらなかった。「松澤先生と絲島君と渡邊君達によりますと、ご企画はたった四文字に従って展開されることにします。『名(な)』、『衣(ころも)』、『紋(もん)』、『式(しき)』。すなわち『名衣紋式(なごろももんしき)』規則です」、松山先生が話しながら黒板を四列に分け合い四漢字を付けた。「考案したのは私の娘なんですが」

 お父さんに呼ばれて勢津子ちゃん自身が結構恥ずかしがったが、智埼ちゃんや隣の桐谷ちゃんから気合を入れたように立ち上がり皆に一般的に説明した。「初めまして、私は松山勢津子と申します。白濱の化学部と夏祭りの化学組の成員で服装の屋台を担当しました。衣に結ぶ将来を決めましたし、企画作業は綺麗な服を作るのと同じだと思います。智埼ちゃんのお母さんから習いましたと、綺麗な服を作る為に、まずどんな服を作りたいかを考え、どんな取材を使うべきかを選び、そして他の服に異なるところを新しいものに付け初版を縫い、最後に様々な着用者の為に襟、袖、裾などを測り次々の版を生産するんです。考えるのは『名』、選ぶのは『衣』、付けるのは『紋』、測るのは『式』に当て嵌まります」

「うん。最初で私達親子は『衣』と『布』とどちらの方が良い第二漢字なのかをかなり討論しておりました。『布』は取材をまともに示す一方、『衣』は『体に掛かるもの』を抽象的に示し『服』と意味がやや同じです。葛城先生の意見を参考にしたのち、『衣』は服装のみならず、誰かの外見と姿をどれほど表現して見せるかも示すし、『企画の外見』を表現するならば『衣』は決めたんです」

 智埼ちゃんが手を挙げた。「先生。なお、勢津子ちゃんも言葉遊びを入れたがったのです。『衣』と『紋』を組めば『衣紋』と読みます。日本に服装の取材、模様、着方、礼儀を規則にする『衣紋道』はあるのです。織物で暮らす人は皆衣紋道を把握しますので」

「勿論知っております、日澤さん」と返した和久井教授。「んー、私による言葉遊びは勢津子さんのと一致するかなと。『衣紋』はわざと真中に置きましたと、前の『名』を接頭語と後の『式』を接尾語にしてこういう結果になりますね。『有名な衣紋の方式』ですという」

「惜しいですわ、先生。『方式』の代わりに『形式』ですけど」と惜しみながら言った勢津子ちゃん。

「いやいや、形式とはあのものの見た目、いわゆる品になったものという意味です。方式とは別に、あのものの作り方、形式になるまでに述べることです。結果を後で、作り方は何の作業もが目指すのではないかと思います」と説明した和久井教授。

「つまり、有名な衣紋はどれかではなく、有名な衣紋はどう作られるか、どうして有名なのか、という質問だ、松山君」、松澤先生が言い加えて勢津子ちゃんがちゃんと理解した。

「企画はそういうもんです。良い作り方は良い品を産むこと。では続きますと、織物の世界より科学の世界へとその四文字の定義をそれぞれ派生して頂きます。5年3組のテスラと呼ばれる渡邊さん、お願いします」、城木先生が高橋ちゃん達が称えているあだ名で私を求めた。

「はい」、私が席を出て黒板のところに行った。「勢津子ちゃんが言いますと、この四文字は標準的な服の作り方の順序を表しますね。科学的企画の視野にしたらどう違うでしょう。まずは『名』。研究したがる対象は企画の名に載ります。それで、科学者の論文の表題は研究対象を読者に明らかに教える為数十文字ほど結構長い訳です。然し、『花火團』の企画の名はただ数文字で終わり。『夏祭り』、『樹海の近道』、今は『算額主義』。論文に出来たら読者を『此奴は一体何を伝えようとするか?』とちょっともやもやさせる可能です。私達の企画の初めの独自さは皆がお気付きになりましたね」

「短い名は中の内容を包括したり、複数の論文の課題になったりするのですね」と応えた倉崎さん。

「その通りです。但し、短い名は短過ぎで曖昧では駄目で、人の好奇心を掻き立てるぐらい、小説のタイトルみたいです。次は『衣』。本企画を導きに使われる知識、技術と哲学は本企画に『顔面』と『本体』を与えます。それ以外、背景や内部者の経緯も企画に『意義』を。『何故これを作りたいのか?何の為に作ろうとするか?』ですという。その三つの要素が感じられるように、私達は『企画制服』を図案するのです」

「『企画制服』ですか。科学的企画に制服を求めるとしたら、君達は参加者に祭など精神的活動のような雰囲気を読ませるつもりですよね。祭では皆が法被を着て鉢巻を巻くことからでしょう」と言った常陸教授。

「はい。『若原屋の学徒』になったら、ある企画を単に毎日毎日機械に張り付く仕事と認めて欲しくなくて、自分の命をなんとか建設してくれられるものだと気付いて貰いたいです。皆もお分かりになりましたね、祭の頃、法被を着た以上、人は心を込めてお客様にもてなすことを」

「ないしは、立烏帽子と水干を着たとは静御前殿如き雨を呼ぶこともある訳か。ひひっ、面白そうですよ」と冗談らしく言った大村教授。

「国々には色々な地方に応じて色々な意義を持つ服装の種類が存在しております。そういう服装を着用したら自分が参加する企画には同じ比例の意義が存在してもっと責任を取らなければならない為です」と言った智埼ちゃん。

「そういうこと、勢津子ちゃんの師匠。制服があったと、模様を付けて独特にさせます。『紋』はそれを担当します。家紋は一家を他の家に区別し、指紋は指先を通して人を人と分別するもので、ある企画も『紋』を身に付けるのが必要だと思います。一般の社会的課題に向かう二つ以上の企画があって互いに補助的になることありますけれども、全然相同になってはいけないのです。

「『企画紋』というものですね、それは。ということで、君達は何か比喩を使って企画を代表する一定のものを表徴にしますね」

「はい、そうです、和久井教授。例えば『夏祭り』は花火、『樹海の近道』は青木ヶ原の不気味な空間。次の『算額主義』は何を代表とするかまだ探しております。ただ、『企画紋』は制服に付けるだけでなく、旗にもです」

「へっ、旗?幟、ということですか?」、常陸教授が驚いて質問した。

「いいえ、正規の旗です。『若原屋』で四つの旗は翻されていきます。国旗、校旗、クラブ旗(き)と企画旗(きかくき)です。国旗は勿論日の丸、校旗は勿論八田蜜と白濱の校旗であり、この広場の前に立てて頂きます。一方、企画旗とクラブ旗は専用建物の前」、私が旗が立つ予定の場所へ手を差しながら解説した。「同じ科目が専用な両校のクラブには共通の旗を。まだ図案しておりませんので、明日からクラブの部長にご依頼です」

 挿絵(By みてみん)

 挿絵(By みてみん)

 雰囲気は前よりも盛り上がってきた。学長先生達も今回の蛙の合唱らしい騒ぎを無力に笑うしかなかった。そう、国旗と校旗は『白蛙(しろかえる)』こと『帰る場所』、クラブ旗は『青蛙(あおがえる)』こと『変える場所』、企画旗は『黒蛙(くろかわず)』こと『闇に抗う場所』なのだ。

「お前にもご依頼だね」と純彦君が返事した。日向ちゃん、松本ちゃん、吉岡君、橘君もそう返したいでしょう。「あとは『式』だぞ」

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