5. 異世界について
この世界での科学は、あっても未発達だ。
インフラや、生活に必要な道具に使用されるエネルギーは主に魔石だ。恐竜のような魔獣がかつて絶滅し、そのエネルギーが魔石として地中に埋まっている。それを掘って取り出し、魔法陣が組み込まれた魔道具にセットすると、魔石の持つエネルギーが活用されるという仕組みだ。
すべての生物のからだには、生命活動を行うためのエネルギーが備わっているが、それ以外にもこの世界にはマナと呼ばれる力が存在した。
自然界にマナは存在しているが、人間にもマナがあった。マナは、生まれた時にすでに持っているが、そのマナの量は個人差があった。そして、マナの量や操り方によって、魔法や魔術がどの程度使えるかが決まる。
自身のマナを使ったり、自然界のマナを操ることで、魔法や魔術として、水や火を作り出すことが出来た。
地球のように砂漠で水が飲めなくて死ぬ…ということはおそらくないが、水の量や火の大きさを作り出せる能力は、その人のマナの量や操作力によって大きな違いがあった。
マグノリア王国は、中世のヨーロッパのように貴族社会だ。貴族と平民に分かれ、格差が大きい。
日本の小学校のように、平民の子供は幼少期に学舎に通う義務があるため、識字率が低いとか教養がないという子はほぼいない。学舎の教師から様々な知識を教えられ、学舎を卒業後は希望する職業にも従事出来ている。
貴族は学舎に行く義務はなく、家庭教師から様々な知識を得ていた。そして、専門分野に分かれた高等学院への入学資格があった。高位貴族の令息は、邸宅で家庭教師から学んだあと、専門知識を得るために高等学院に入学するという者が多かった。
裕福な貴族は家庭教師を多く雇えるため、貴族の階級と子供の能力の高さは比例していた。
マナの操作が上手い魔法使いや魔術師は、人気のため支払う報酬も高くなる。よって、そういった先生を得ることが出来るのは高位の裕福な貴族に限られていた。結果、必然的に高位貴族の子の方がマナの操作は上手だった。
生まれ持ったマナの量も、両親のマナの量が受け継がれるため、高位貴族はマナの多い貴族との婚姻を望み、実行してきた。
その結果、現在では生まれ持ったマナの量も高位貴族の子ほど多く、王家が一番多いという図式が完成されていた。