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番外編:進路と卒業パーティー

 高等学院の卒業パーティーは、卒業証書をもらった面々が参加となる。クレア以外の4人も無事卒業証書を獲得し、卒業後の進路も決まっていた。

 卒業パーティーを1ヶ月後に控え、クレアと他4人は王都のカフェの個室で、久しぶりに顔を合わせていた。


「クレア、久しぶり。聖女のポーションは王国民を救う奇跡の万能薬だってすごい噂になっているぞ。疲れてないか?」

 リオルがクレアに声をかけた。

「リオル様、ご無沙汰しております。ご卒業おめでとうございます。

 お気遣いありがとうございます。ポーションは万能薬ではないので… 噂には少し困っているのですが、疲れてはいないです。ですが、こうして皆様と久しぶりにお会い出来て、大変嬉しいです!」

 満面の笑顔で答え、

「レオポルド様、フレデリクス様、トマス様も、ご卒業おめでとうございます!」

 と他の3人にお祝いを述べる。

「ありがとう。俺は無事にカラジウム家の主治医となる推薦をもらうことが出来て、ホッとしてるよ。

 出来ればパートナーとしてルチアを伴いたかったけど… 足があのままではさすがに誘えないから、卒業パーティーは一人で参加することにしたよ。

 そして、パーティーが終わればルチアに婚約を申し込むよ。だけど、引き続き古傷を治す方法がないかは、医師をしながら模索していくよ」

「レオポルド様、お力になれずに申し訳ありません。私もいろいろと試したのですが、やはり炎症や組織損傷がすでにない古傷の場合は、それが正常の身体の状態と見做されてしまうためか、マナによる治癒が効かないようです。

 ですが、万能薬と呼ばれてしまっているポーションですから、これから改良して本当の万能薬が作れるよう頑張ってみますね!」

「クレア、ありがとう。だけど無理しなくていいからね。

 ルチアも俺が主治医となって半ば強制的に側にいることで、素直に婚約を受けてくれるみたいなんだ。

 今のままでも十分幸せな家庭を築いていける自信があるから。気負わなくていいよ」

 いつもの穏やかな笑顔をみせる。

「レオポルド、それは惚気だな。結婚式には呼んでくれよ。

 俺もこれからは、ノルド医師のもと、クレアに追いつけるよう励むさ」

「フレデリクス様なら、ノルド先生の後を十分に引き継げますわっ!

 我がシモクレン家一同が期待してましてよ。これからもどうぞよろしくお願いいたしますわね!」

 フレデリクスは、ノルド医師があと数年で引退するため、ノルド医師からの推薦を受けてシモクレン家の主治医となる。

「あぁ、ノルド医師やシモクレン家の方々の期待を裏切らないよう励むつもりだ。

 クレアにも追いつくからな。待ってろよ」

 と笑ったので、クレアも微笑み返した。


「トマス様はいつ辺境に行かれるのですか?ご家族は寂しがっているのではないですか?」

「卒業パーティーの後、荷物の準備が整ったら出立するよ。宮廷の魔道具の使用許可が出たから、魔術師に起動してもらって一瞬で移動出来るんだっ。家族に何かあれば使用出来るみたいだし、妹や弟は寂しがってるけど、家族は応援してくれてるよっ。

 辺境には魔法使いや魔法騎士が多くいるし、マナの操作がもっと上手くなるように先輩方からたくさん学んで、クレアのように凄い医師になれるように頑張るつもりっ!」

 と、こちらもいつも通り元気に答えてくれる。

 トマスは、カネラ辺境伯の主治医として推薦を受けていた。辺境は場所柄、大型の獣が出没しやすく、また時折山賊も出現するため負傷者が出やすい。主治医も他家より多く配置されていた。そろそろ引退する医師がいるので後継として推薦されたのだ。

「私もテレポートで時折会いに行きますわね。トマス様の頑張っている姿をエリザベスに伝えますわ」

「ははっ。クレアは自由だなぁ〜。息抜きしたくなったら会いに来てよっ!辺境の美味しいお店調べておくねっ」

「俺もテレポート出来るから、クレアと一緒に行くよ。案内よろしくな」

「リオル様とは同じ職場となることですし、休日を合わせることも出来ますわよね。楽しみですわ!」


 そう。リオルの進路は宮廷医師だ。宮廷医師は王族の主治医という役割以外にも、研究したり各地の医療支援を行ったりと、王国の医療を支えているためそれなりの人数がいる。だが、王族に仕えるため高位貴族に限られ、実力がトップクラスであると認められなければなれない。狭き門だった。

「とりあえず、クレアのポーションが作れるように頑張るよ。指導よろしく」

「はい!もちろんですわっ!

 私のポーションは、有効成分の抽出が難しいようで、まだ私以外作れる方がいないんですの… リオル様が一緒に作って下さるなら、さらに効果の高いポーション作りが出来そうですわっ!頑張りましょうね!」

 クレアは満面の笑みを浮かべた。

 そこでようやく、それぞれがお茶を飲みケーキを食べ始める。


 全員がケーキを食べ終えたころ、

「ところで……

 シモクレン家の所縁の者となった訳だし、卒業パーティーのエスコートをさせてもらえないか?」

 とフレデリクスが真面目な顔でクレアに言った。

「なっ?!

 いや、俺こそクレアと同僚になった訳だし、その役割は俺が努めていいと思う!クレア、俺のパートナーになってくれ!」

 すかさずリオルが言う。

 そんな二人を苦笑いを浮かべながら、レオポルドとトマスは見ている。

「えぇ〜… っと…とってもありがたい申し出なのですが……

 お兄様とお揃いのドレスをすでに用意してしまいまして… お兄様が大変乗り気なので…

 ご、ごめんなさい……

 ま、またの機会でよろしくお願いいたします…わ…?」

「そうだろうと思ったけど…

 だが、デビュタントの時はエスコートさせて欲しいな」

「いや、俺がエスコートするよ。同じ公爵家なんだ。周りも納得するだろ」

「なんだよ、それ。そんなの理由にならないだろ?

 シモクレン家に近しいのは俺なんだし、俺の方が相応しいだろ?」

「まあまあ、二人とも。申し出を受けるのはクレアなんだから。クレアに決めてもらいなよ」

 レオポルドが穏やかに割って入る。

「そうだよ!クレアは大人気なんだから、他の令息からも声がかかるよっ。クレアに決める権利があるんだから、今争っても仕方ないでしょ?」

 トマスが呆れながら言う。


 社交シーズン中に15歳となるクレアは、年明けに開かれるデビュタントボールに参加する。社交シーズンが始まれば、エスコートの申し込みが殺到するだろう。

「えぇっと……エスコートしていただく方は父が決めるので、今お受けする事は出来ないのですが……

 二人からのお申し込みはとっても嬉しいですよ!

 父に伝えておきますねっ」

「きっと、クレアのお父上はクレアの意思を尊重してくれるよ。クレアはどっちにエスコートしてもらいたい?」

 レオポルドが穏やかに尋ねる。


「うっ…… それは……

 じゃ…… じゃんけんで勝った方で……?」


 その答えを聞いて二人はガックリと肩を落とした。

「これからだ…俺は同じ職場だし、チャンスはたくさんある…」

「ずるいぞ、リオル…くっ…俺はクレアの父上とアンディ殿を攻略するぞ…」

「それこそ、反則だ!正々堂々勝負しろっ!」

 二人は小声で言い合う。


「二人とも、聞こえてるよ…

 クレアは魅力的だから、たくさんの令息達から言い寄られるよ。だけど、二人のどちらかが婚約者になってくれると僕は嬉しいなっ!」

 トマスが笑顔でクレアに言う。

「あ、ありがとうございます?

 私も…… お二人とも大好きなので、これからじっくり考えさせてもらいますねっ」

 笑顔でクレアが宣言した。


「「よしっ!じゃあ、休日はデートしよう!」」

 二人が顔を上げて同時に叫ぶ。


 そして全員声を揃えて笑ったのだった。



お読みいただきありがとうございました!


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