27. 聖女の活躍
実習3箇所目の診療所では、クレアの噂を聞いて市井の人達が列をなしていた。体に異常がないか診てもらいたい、ポーションが欲しいといった人達が殆どで、診療所の通常業務が滞った。
「私のせいですよね…申し訳ございません」
と、指導教師であるカーライル医師と診療所のケネス先生に謝罪する。
「いや…まあそうなんだが…
この状況では診療所に迷惑をかけ、他の生徒達の実習にも影響する。
クレア君は実際、すでに実習を終了していい状況にあるのだが……
ここまで患者が集まってしまったら、何もせず追い返すことも良くない。診療所と学院に批判がくるだろうしな。
…どうすべきか…」
と、カーライル医師は悩む。
「あ、あのっ、実習中の身ではありますが、私の責任でありますしっ、診療所の外に簡易テントを張って、そこで診察しても構わないでしょうかっ?
診療所と私が診る患者の振り分けをどなたかにお願いして、皆様の実習への支障を最小限にしますので」
とクレアは困惑した表情を隠さずに話す。
「ふむ…そうするしかないか。
患者の振り分けは、ここの看護師に頼もう。
それでいいか?」
と、ケネス先生に声をかける。
「はい。かまいません。
この状況が落ち着けばいいのですが…
ひとまず、テントを用意します」
用意してもらったテントを、クレア自ら魔法で設置した。収納魔法で鞄に納めている机や椅子もクレアが出す事は出来たが、貴族仕様であるため診療所の机と椅子を借りた。
入り口から伸びている患者の行列を、看護師が軽く問診しながら捌いていく。異常なしの診察希望者はクレアへ、軽い怪我や風邪、捻挫などの場合は診療所へ。
ケネス先生が治癒出来ない骨折や痛みの強い胃炎、腹痛などの場合はクレアか、カーライル医師へ、と順々に振り分けていく。
クレアはマナを巡らせ、時にはマナで治癒し素早く患者を診ていった。薬が必要な場合は、診療所の中に入って自ら作成し、患者の状態と作成した薬の内容をカーライル医師に伝え、許可をいただいてから処方した。ポーションは、その希少性から、軽症者には与えず著しく体力が落ちている患者のみに与えるようにと、カーライル医師から指示が出ていたため、歩いて診療所まで来れている患者には該当者はいなかったので処方しなかった。
クレアの診察は、カーライル医師やその他の上位の医師よりも速く治療も正確だった。そして、クレアが治せない患者はいなかった。
「見目麗しい聖女が突然現れた。聖女の治療は不治の病も治す。聖女のポーションは効果が絶大だ」
といった噂が、市井の間に瞬く間に広がった。
噂はすぐに貴族にも広がり、王城にも届くこととなる。
「このままクレア嬢を市井にいさせるのは危険だ。
学院の騎士が同行して護衛しているとはいえ…
他国に攫われる危険は否めない」
と話すグレゴリウス・マグノリア王の前には、宰相と宮廷医師であるカエサル医師と、クレアの父であるアウグストがいた。
「クレア嬢は、まだ14歳ですがすでに医師として診療所で活躍しており、その実力は上位の医師に匹敵するようですし、ポーションも作成してしまいました。教師全員から合格を与え卒業を早めましょう。すぐにでも宮廷医師としての任を与えるべきです」
「いや…14歳ではまだ成人まで遠い。卒業を早めるのはいいですが、医師として働くのは成人してからがよろしいかと。成人するまでは宮廷医師見習いとして保護するのはいかがでしょう」
宰相とカエサル医師が言う。
「いずれにせよ。早急に保護すべきではある。
アウグストはどう思っておる?」
「恐れながら申し上げます。
私の娘は10歳から、医師となり多くの国民を救いたい。と話しておりました。まだ14歳ゆえ自立に不安はありますが、親からみても医師としての実力は十分かと。
魔法や魔術も特級レベルで使えますので、たとえ護衛騎士がそばに居なくても自ら護衛が出来ます。令嬢としては些か奇天烈ではありますが、保護していただかなくても問題ない娘なのです。
ですので、娘の意思を尊重していただけるのであれば、卒業を早めて医師として活躍できる立場を与えてくだされば、と存じます」
「……そんなに凄いのか。アンディの才能も素晴らしいと思ったが、娘はそれ以上だな…
シモクレン家の子供達の子供が楽しみだが末恐ろしくもある…
アンディとクレアの婚約者も慎重に選ばないといけんな。
あい、わかった。
ひとまず、クレアは卒業させて宮廷医師とする。よいな?」
「「「はっ」」」




