25. 初日終了
ヘンリーさんは、
「す、すごい…っ!こんなにキレイに治るなんてっ!
ミゲル先生っ!ほんとうにっ、あ、ありがとうございます!!」
と、涙を浮かべて感謝を告げる。
「そうですね。通常なら、裂けた皮膚は縫う事になりますし、しばらくは添木で固定して杖をつく生活となっていたでしょうから…
今回私達がこの場にいた事は、ヘンリーさんにはとても幸運な事だっといえます。
実習としての治療なので、治療費を多くいただく事はありません。薬を処方しますので、それを受け取ってお帰りください。
最後に、他に異常がないか診させていただきます」
と話し、ヘンリーさんの手を取り目を閉じた。
マナを全身に巡らせて診察を行っているのだ。
数分後、
「はい。終わりです。他の部位に異常はないようです。出血による血液不足や怪我による体力の低下は否めませんので、しばらくは無理せず、薬は必ず飲んでください。お大事に」
と告げた。
体を起こし、深く頭を下げたヘンリーさんに、私達も会釈を返して、部屋を出るミゲル医師の後ろに続く。
看護師がいる別室に行くと、
「さて、薬は君達に作成をしてもらう。ヘンリーさんに必要な薬を作成してくれ」
と言いながら生徒達を見渡した。
「私が行います」
リオルが前に出て、看護師に必要な薬草を指示していく。材料が揃いマナを注入して薬の作成を行う様子を、他のクラスメイト達は真剣に見つめていた。
薬が完成すると、ミゲル医師は薬を手にして、
「よし、いいだろう。これを、ヘンリーさんに渡して」
と看護師へ薬を渡した。
リオルや他の令息達は安心してホッと息を吐いた。
クレアは、リオルが正しい手順を踏んでいるとわかっていたので、全く心配はしてなかった。
その後は、ミゲル医師の説明を聞きながら、ラルゴ先生の診察や、看護師が行う処置を見学した。
軽い風邪や、捻挫、腰痛といった患者が多く、ラルゴ先生はマナを使って治療を行い、必要な場合はその場で薬を作成し渡していく。看護師は軽い怪我を処置したり、薬の材料を用意するなどしてサポートしていた。
実習初日がまもなく終わろうとしてたが、5歳くらいの男の子を診察後、ラルゴ先生はミゲル医師を見て言った。
「こちらの子は、どうやら軽い肺炎のようです。私では完治が難しいので、先生の治療をお願いできますか?」
横に立っている母親によると、数日前から咳と微熱があったが、そのうちよくなるだろうと思って受診しなかった。しかし今朝から食事を食べず、昼過ぎから高熱が出てしまったので受診したとのことだった。
「わかりました。私が診ます」
ミゲル医師がラルゴ先生に代わって椅子に座り、ちらっと机の上にある書類をみてから
「ユリウス君、これから体のよくないところを治すよ。手を握るからじっとしててくれるかな?」
とゆっくり話し、男の子の両手を握る。
高熱により呼吸が浅く、顔が真っ赤だったが、次第に呼吸が穏やかとなり顔色も通常に戻っていく。
10分程度の時間が経ったが、治療が終わったようだ。
「はい。おしまい。
どうかな?どこか痛いとか苦しいところはない?」
「ないよ!さっきまで喉が痛くてなんか苦しかったけど、今はなんともないよ!」
と、笑った。
「肺炎は完治したので、薬は必要ないでしょう。
帰宅していただいて問題ないですよ」
と、母親にむけてミゲル医師が話す。
「本当によかったですね。今日から高等学院の生徒達がこちらで実習だったので、公爵家の主治医であるミゲル医師に特別に治療を受ける事が出来るという、またとない機会に恵まれたのです。
ユリウス君は幸運でしたね」
と笑顔でラルゴ先生が言った。
そして、実習の初日が終了した。




