24. 臨床実習
三年生では、市井にある診療所に教師とともに赴き、医師が行う外科的処置や治療を見ながら学び、学生も患者へ実際に治療を施しながら経験を積んでいく。いわゆる臨床実習だ。
卒業後医師を名乗るためには、この三年生で研修医以上の治療を施せるレベルまでいかなくてはならない。そのレベルが認められて、教師全員から合格をもらうことが出来れば、たとえ未成年であっても医師を名乗れる。
過去、医師科に12歳で入学したものはいないため、クレアが合格となれば史上最年少の医師の誕生となる。
1ヶ月毎に、各所にある診療所を回る。同行する教師は診療所の研修医が師事していた医師となる。
今日から1ヶ月は、アステリア侯爵家のミゲル医師が教えてくださる。
「市井では怪我が多い。また、抵抗力が弱い子供や老人は体調を崩しやすいので、そういった者達も多く受診してくる。マナの必要ない治療なら看護師が対応にあたるが、マナが必要な場合や原因が不明の場合は、研修医であるラルゴが治療にあたる」
と、ラルゴ先生を紹介してくださる。
「みなさま、お初にお目にかかります。
この診療所を開いているラルゴ・チェスターです。
1ヶ月よろしくお願いいたします」
丁寧な挨拶を下さるラルゴ先生に、一人づつ挨拶をしていく。
チェスター家は伯爵家だが、学院生はたとえ学外でも、実習中は学院内同様、身分はただの一学生であるため遜る必要はない。クラスメイト達も教えを請う教師として、ラルゴ先生に対し敬った態度で接する。
「先ほど、家屋建設中に高所から落ちたものが足を負傷して訪れました。すぐに痛み止めを投与しましたが、私の治療では限界がありますので、ミゲル医師に治療をお願いしようと思い簡易処置のみ行っています。ですので、すぐにその方の治療を行なっていただきたく思います。こちらです」
と若い男性が横になっているベッドまで全員で足を運ぶ。
「ヘンリーさん、お待たせしてすみません。
高等学院の医師と生徒の皆様がいらっしゃいました。ヘンリーさんの治療は、こちらのミゲル医師が行います。先ほども説明しましたが、きちんとした医師に治療を受けれるので、ヘンリーさんは幸運ですよ。すぐに良くなりますから安心してください」
と微笑んで話し、元の場所へ戻っていった。
ちなみに、医師は全員名前で呼ばれる。貴族の家門から独立した地位と見做されるからだ。
ミゲル医師が、
「ヘンリーさんですね。実習のため1ヶ月こちらの診療所で治療を行うミゲルです。
早速、治療にあたらせていただきます。寝たままで結構です」
と話し、ガーゼで覆われていた足を診る。
右脛骨の開放骨折だった。骨が突出し、分厚いガーゼも血液に塗れ、創部からの出血は止まらなかった。
痛みで顔を歪めながら、
「よ、よろしくお願いします…」
と、会釈代わりに、頭を軽く頭を持ち上げる。
「開放骨折の場合は、清潔に気をつけてまずは整復を行う。その後、マナで組織を回復する」
ミゲル医師は、手袋を装着して突出した骨を正しい位置に戻していく。
ヘンリーさんは、脂汗を浮かべ、壮絶な痛みに歯を食いしばって耐えていた。
痛み止めが投与されているとはいえ、麻酔がないので痛みは相当なものだろう。
とても可哀想だ…ヘンリーさん頑張って!と声に出さず応援する。
骨を戻したミゲル医師は、マナを集中して患部に注いでいく。白い光に包まれながら、みるみる組織が修復されていった。
ヘンリーさんの表情も怪我の回復とともに和らいでいく。
おおよそ30分後には患部は完全に回復していた。怪我の痕跡は全く見当たらない。
さすがキャンベリー公爵家の主治医である。




