22. 社交回避
公爵家の祖父母は、クレアが5歳の時に、他国の式典に参加するため乗船していた船が嵐で転覆したことで儚くなった。
それ以降、王都近くの公爵領は、父の指示のもと叔父であるミケリア子爵夫妻が、領地執事と共に管理運営を行っている。
父の領地視察に合わせて、領地に家族で滞在する事はあるが、従兄弟達が恐縮する様子があるため、長居はしない。
祖父母が健在だった時は気にならなかったが、亡くなってからは従兄弟といえども身分差があることで彼等の気遣いが感じられて、あまり居心地がよくないからだ。
母はマルティエ侯爵家出身で、母の祖父母はマルティエ領に住んでいる。社交シーズン中には、兄ととに祖父母に会いにマルティエ領に遊びに行くのが習わしだった。
祖父母からの愛情は感じられたが、公爵令嬢として丁寧に接せられるため、マルティエ家の他の孫達のようには甘えることは出来なかった。
クレアが高等学院入学するまでは、シモクレン家の話題といえば兄のアンディについてだった。クレアほどではないが、兄のスペックも相当高いのでその優秀さが褒め称えられていた。
兄は卒業後に宮廷魔術師となり、専ら魔法陣の作成を行なっている。ここ最近では、馬車にとりつける送風機を魔道具師とともに完成させ、兄により馬車内の快適さが向上したと話題だった。
仕事がとても楽しいようで、社交界で婚約者をみつけることはまだ先でいいと、社交シーズン中も社交は最小限にしてせっせっと宮廷に出仕している。
クレアが高等学院に通いはじめた今年は、社交界での噂をききつけ、あらゆる貴族家からお茶会の招待状が届いた。まだ13歳のため夜会の参加は出来ない。ゆえに、王家主催の式典はあるが、才女と直接会話するにはお茶会しか方法がない。
全ての招待に応じることは無理だ。かつ、シモクレン家として、いずれかのお茶に応じれば、話題となっているクレアの婚約話に拍車をかけかねない。
シモクレン家は、幼馴染の令嬢達とのお茶会以外、残りの招待にはすべて応じないことを選んだ。
対面を保つための大義名分として、卒業後は忙しくなることを見越し、学院の間に見聞を広げるべく、学院の休みの間は他国を旅行をする。とし、クレアの旅支度を整えた。
クレアには、大変好都合だった。
他国の医療を現地で直接調べることが出来る、と他国の医学本を手に出来ることを喜んだ。
テレポートできる範囲は、魔道具の性能上国内に限られるため、隣国へは陸路となる。休み期間は4ヶ月のため今回は二国をそれぞれ2ヶ月ずつ滞在することとした。
招待状のすべてにお断りの返事をしたためたあと、メイド数名と護衛騎士数名とともに隣国へ旅立った。
式典にも姿を見せないクレアに、公爵よりその理由を聞き、貴族達はこぞって落胆した。




