21. 社交界の噂
期末試験に全員が満点で合格し、学院は長期休みに入った。
社交シーズンが始まった社交界の話題の中心は、クレアだった。
学院のクラスメイト達は、こぞってクレアの見た目からは想像もつかな膨大な知識を持つ聡明さや、魔法や魔術レベルの素晴らしさなどを周囲に伝えた。
他の学院生達も、どこからか入試の結果を聞いていたため、弱冠13歳にして過去にないほどのない才媛だと感嘆しながら話題を提供していた。
公爵令嬢といえども、デビュタント前の13歳で、王家による公式な社交の場にしか姿を見せないクレアは、殆どの貴族に「特級魔術師である兄アンディの妹」としてしか認識されていなかった。
「アンディ様の妹様が、そんなに凄い御令嬢だったなんて…本当に驚きですわ」
「医師を目指しているようですが、マナの量も多く魔法や魔術も特級レベルで使う事が出来るようですわ。
今からでも、医師ではなく魔術師や魔法使いとして、華々しく活躍していただいた方がよいのではないかしら?」
「しかし、医師から伝え聞いた話しでは、医学の知識が教師をも凌ぐようですよ。すでにマナの操作も完璧で、医師としての技量は研修医以上と言われているようです」
「公爵令嬢ですから、今後他国に嫁ぐ可能性も否定出来ませんわね。そんな貴重な人材を手放さないよう、今から婚約者を決めた方がよいのではないかしら?」
「血が濃くなるので王家は難しいでしょうが、どちらかの公爵家に条件のよいお相手はおりませんの?」
「お母様や公爵家の祖父母はすでに儚くなったと聞いています。シモクレン卿は婚約をどうするか、すでにお考えをお持ちなのかしら?」
「高等学院のクラスメイトに、アレクサンドリナ家のリオル様がいらっしゃると聞いたわ。ちょうど年廻りもよいですし、お二人の婚約が整えばよいのじゃないかしら?」
「クラスメイトには、キンジェ侯爵家二男のフレデリクス様もいらっしゃるそうですわ。まだ16歳で医師になるかも決まっておりませんし、二男なら場合によっては後継するかもしれませんわよね。クレア様がそこまでの能力の持ち主なら、侯爵家当主の夫人となるのがよいのでは?」
「それを言うのなら、ガノリア侯爵家長子のレオポルド様がいます。彼は、国政科を卒業したようですから、例え医師とならなくても将来は安泰でしょう。能力と地位は一番クレア嬢に相応しいのでは?」
といったように……
クレアの噂話は、早々に婚約者を決めて国内に留めようとするものへと変わっていった……
まだ13歳である公爵令嬢クレアは、貴族の大人達にとって、医師としての活躍を期待するものよりも、他国に引き抜かれないよう、厳重に保護すべき存在として周知されつつあった。




