17. 魔法発動
クレアにとっての、初デートの日がやってきた。
王国庭園で待ち合わせとなっていたが、初めて市井に出向く私の身の安全をアレクサンドリナ家が責任を持って請け負い、父を安心をさせたい、とリオルが馬車で迎えに来てくれた。
「それではお父様、行ってまいります」
「……ああ。……リオル殿や他の令息達にくれぐれもごご迷惑をおかけしないようにな……」
と苦笑しつつ、
「さあ、行きなさい。楽しんでおいで」
と、微笑んで送り出してくれた。
父がそのような反応となるのは仕方がない。
私の魔法や魔術のレベルがあれば、たとえ刺客がきても返り討ち出来てしまう。普段は対面を保つため護衛騎士をつけているけど、本当は必要ないしね…
そのことは、シモクレン家でも極一部しか知らない。よって外出の際には必ず護衛騎士がつく。
今回は、リオルのご好意をありがたく受け止め、アレクサンドリナ家の護衛騎士達に護衛を依頼する。
リオルの手を借りて馬車に乗り込み、庭園へ向かった。
「リオル様。お出迎えありがとうございます。
今日の皆様とのデート、とっても楽しみですわ!」
と、馬車の中でリオルに声をかける。
「えっ?デート!?
いや、二人きりではないのでデートではないぞ!?
……まあ、楽しみにしてくれているのなら、我々も嬉しいのだが……
……みんなの息抜きとなるといいな」
と微笑んでくれた。
リオルは当初、その身分とプライドのせいで皆との間に壁を作っていたが、今はそれは跡形もなく、伯爵家のトマスともお互いに軽口を叩くほどの関係となっていた。
リオルを見ながら内心では、イケメンが微笑むと破壊力が凄いなぁ〜と感嘆していた。
クラスメイト達は高位貴族に相応しく、全員イケメンだ。皆騎士ではないので細心だが長身だ。
リオルは、王族に近しい容姿で金髪碧眼だった。15歳なので幼さがまだ残る顔立ちで、中性的な美しさがある。
レオポルドは、すでに19歳となったためか大人の男性といった感じ。ダークブラウンの髪と琥珀の瞳でやや垂れ目の優しげな顔をしている。
フレデリクスは、黒髪と濃青瞳でキリッとした顔立ちをしている。一番日本人に近い顔かもしれない。
トマスは赤濃茶の髪と薄緑瞳で、大きな口が特徴的な、エリザベスによく似た可愛らしい顔立ちをしている。
みんなの顔を思い起こしていると、
「もうすぐ着くな。王国庭園には足を運んだことがあるか?」
とリオルが聞いてきた。
「はい。数回程度ですが、父と兄と散策したことがございます。色とりどりのお花に溢れて、楽園のようですわよね」
「そうだな。今は庭園の奥にガラスの温室を作っている最中らしい。完成が楽しみだな」
庭園に着き、先に降りたリオルの手を借りて馬車を降りる。すでに3人がそれぞれの護衛騎士を従えて入口で待っていた。
「待たせたな。すまない」
「皆様、ご機嫌よう。お待たせして申し訳ありません」
と軽く謝罪する。
「いや、我々もつい先ほど着いたところだよ。早速入ろうか」
と、レオポルドが微笑んで先頭に立つ。
その後ろにリオルとクレア、フレデリクスが横に並んで続き、トマスと護衛騎士達がその後ろに続いた。
「本当に素晴らしいですわね。お花の香りもとても落ち着きます。来られて嬉しいです!皆様、お誘いくださり、ありがとうございます!!」
散策しながら笑顔で感謝を伝える。
「いや、我々にもいい息抜きとなったよ。王国庭園はいつ来ても癒されるな」
「僕も久しぶりに来ましたが、気分がすっきりしますね!勉強で溜まっていた疲れがとれた感じがしますっ!」
「トマスはいつも元気だから、疲れなんて感じてないと思ったが、普通に疲れは溜まるのだな」
笑いながらリオルが言う。
「失礼なっ。僕だって人並みに疲れを感じますよっ!」
こういったやり取りを時折交わし、みんなで笑顔で談笑しつつ、奥に進んだ。
奥のエリアに近づくと、魔法使いのローブを纏った二人が、職人達に指示をしながらガラスの温室を作っているのが目に入ってきた。
「あ、あれが建設中のガラスの温室ですね」
と、フレデリクスが話した瞬間、突然突風が吹き、組まれた足場の一番上にいた人がバランスを崩してガラスを持ったまま落ちてしまう。
「危ないわ!!」
咄嗟にクレアは魔法を使って、落ちた人とガラスを空中に静止させた。
「「「「はっ??」」」」
その場にいた、誰もの目が点になった瞬間だった……




