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襲撃者

「おい!、お前を狙ってるようだけど心あたりは?」

「わかんないです!」


 私はジェスタさんに手を引かながら必死に足を動かす。

 全速力で走っているため、そろそろ息が限界だ。


「クソッ」


 ジェスタさんに掴まれていた手は下に引っ張られ、私は勢いよく転倒した。


「へ」


 私は顎を強かに打ち付け、痛みに悶絶する。痛いけど、舌を噛まなかっただけよかったかもしれない。

 頭上を魔力の刃が通過した感じがした。少しくらい髪の毛がもっていかれたかもしれない。

 ジェスタさんもどうにかして回避したらしく、無事なようだ。


「とりあえずぶん殴ってから話は聞くぞ!」


 相手の魔法使いは、ここが森だということも関せずに炎の壁の魔法をこちらへと唱えてきた。

 木々に炎が燃え移りながら壁が迫ってくる。

 ジェスタさんは後ろにあった木から、三角跳びで迫りくる炎の壁を飛び越えて、敵へ詰める。

 奇しくも先日セローさんが戦った楽器の暗器使いと同じような構図で、私はジェスタを見守っていた。


「水よ! 私の体を包め!」


 自分には炎から身を守るために水の魔法を体に纏わせる。

 気休めかもしれないが、少しはマシになるだろう。


(流石に相手を無力化すれば火の壁は消えるはず?)


 確信はなかったが、ジェスタさんが敵をなんとかしてくれることを祈るしかない。

 私には攻撃に適した魔法はまだ使えないから。


「この」


 全力でジェスタさんが右の拳を振りぬく。

 丸太のような剛腕から繰り出されるそれは、普通の人は耐えることができないはずだ。

 ましてや相手は魔法使い、フードから覗く顔は細身の男性だ。

 しかし、渾身の一撃は空振りに終わった。

 相手の体が3歩ほど後ろへと、脚の動作もなく下がる。


「!」


 けれどジェスタさんはそれも読んでいたのか、振りぬいた逆の左手には針が握られていた。

 勢いそのまま、それを相手の影に向かって投げた。

 寸分違わず相手の影の胴へと針が突き刺さる。

 

「へっ、それでって・・・・・・」


 ジェスタさんが全部言い終わる前に、敵は徐々に霧散していく。


「おいレイチェル! 水を木にかけて消火だ消火!」

「こんな広い範囲に燃え移ったら無理ですって!」

「なら逃げんぞ!」


 ジェスタさんに先導されて、森から逃げる。

 大変なことになってしまった。


「これは何があった?」


 セローさんと合流したが、説明している時間はなさそうだ。


「後で話します!」

「ひとまず火の手が無い場所へ行くぞ」


 3人で森を駆け抜ける。

 全員、息を切らしながら、無事に脱出できた。

 今日、何が起きていたのかというと、私はジェスタさんと野草の採取をしていたのだ。

 セローさんも少し離れた場所で採取しており、終わったら小屋で合流するということになっていた。

 ところが、採取途中にフードを被った謎の人から私が襲撃を受け、間一髪のところでジェスタさんと逃げ出したのだった。


「こりゃやべー」


 遠巻きから見ていても、辺り一面が火の海だった。

 巻き込まれた人、動物もたくさんいるだろう。


「全部焼けるまでどうにもならんな。それで何が?」

「なんかフードを被った人にいきなり襲われて。魔法使いだったみたいで炎の魔法を使われました」

「相手は?」

「よくわかんねーけど、針を影に差したら消えたわ」

「ふむ。こういう場合の対処はだな・・・・・・」


 この前の件も単独の敵に襲われたし、どうにもおかしい気がする。

 流石にたまたま襲われた、では済まない気がする。


「セローさん、ジェスタさん。何かおかしくないですか? 魔物でもない人? に2回も続けて襲われるなんて」

「確かにな。ひとまず報告して、どこかで見てもらおうじゃんか」


 ということで、とりあえず街へと戻り、経緯を説明して事なきを得たのだった。

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