楽器使い
(これで、セローさんは壁の左右どちらからでるかで敵を揺さぶれるはず)
私はそんなことを考えたが、セローさんは敵の頭上に向けて剣の鞘を放り投げた。
同時にセローさんは壁の右側へ駆け出す。
土壁へと矢が当たり、壁は1撃で崩れ落ちてしまった。
壁は魔力の強さで強度が決まるらしいので、私の魔力では矢を1発耐えるのが限界だったらしい。
(ヤバイ! セローさんなんとかして!)
その間にセローさんが一気に距離を詰めて、敵に肉薄した。
敵もすぐに矢をセローさんに放ち、直後セローさんの姿は剣の鞘近くへと飛ぶ。
セローさんは相手の右手首を切り落とす。不思議なことに血は出ない。
右手を落とされても、すぐに敵は左手に持った暗器で攻撃していた。
それを更にセローさんは避けて、相手の首を切った。
落ちた首は陶器のようなものだった。
頭が地面に落ちるガチャンという音と共に、その人の体も砂状になって崩れた。
「・・・・・・なにがどうなってる?」
「セローさん、とりあえず怪我を治さないと!」
「ああ」
セローさんの腕に簡単な治療をして、人の気配が無くなった村全体を調べて回る。
村人は広場近くの住居に押し込められていた。全員が亡くなった状態で。
村の人は全員が頭や首に矢を受けて撃ち殺されていた。
おそらく音で眠らされて殺されたのだろう。
私たちの部屋にはセローさんの張った札のおかげで侵入できなかったようだ。
「あん? なんか起きたんか?」
「かなりマズい感じになっていて」
ジェスタさんのいる部屋を強めにノックした。
ジェスタさんは部屋で爆睡していたようで、下着一枚のだらしない恰好で部屋から出てきた。
セローさんは宿の壁へと札を張って、この家自体を要塞化すると言っていた。
「宿の主と思われる部屋も血だまりだった。おそらく、あの家に村の全員。全滅だ」
3人で広間に集まって、現状の話をする。
とりあえず今後の方針を決めることになった。
既に日が暮れかけているし、街へと戻る今度の馬車は明日の昼だ。
もし、敵が攻めてくるとなると18時間ほどは耐える必要がある。
「どうする? 雑魚ならいいけどよ、セローに一撃入れられるやつらを大量に相手なんざ無理だぞ」
「セローさんの怪我は私のせいなので、なんとも言えないですけどね」
「矢は掠った程度だし、毒もなかった。俺は問題なく戦える」
「んなら籠城か? もしくはポーションの施設とやらに応援でも頼むか?」
いろいろと話し合った結果、翌日までここで耐えることになった。
昼間寝ていたせいか、まるで眠気は無く、見張りに問題はなかった。
しかし、敵が襲ってくるだろうという予想は杞憂に終わり、無事、翌日の昼に馬車へと報告し、応援を呼んだのだ。
もう1日待機し、冒険者の応援と交代して、私たちは大きなギルドに報告したのちに、普段の仕事を受ける状態へと戻った。
「結局なんだったんだ? 村を全滅させるなんてよ」
「相手は砂になって消えちゃいましたから誰がやったのか証明もできなかったですしね」
事務所の椅子で頬杖を突きながらジェスタさんが言う。
「ただの魔物でもなさそうだったが。正直、俺は人を斬ったのかと思ったが、手を斬った時点で明らかに生き物ではなかったからな」
謎の敵対者により村は全滅してしまったが、全く正体を掴めずに終わってしまった。




