館の掃除
街から少し離れた村、更に村からも離れた、とある館の主が亡くなった。
街に住む親族から私たちにその館の遺品の整理が依頼された。
なんでも、骨董品やらなんやらが多いらしく、自分たちの手では確実に整理しきれないので依頼したとのことだ。
「私たちに言っても価値なんてわからないですけどね?」
「そんなことねーだろ。セローなら魔具の判別はできるはずだしよ」
魔具というのは魔法が使えない人でも呪文さえ唱えればその効力が発揮されるという代物だ。
「前に使った杖みたいなやつですよね? なんでセローさんはわかるんですか?」
「俺は魔力が全くないからわかんねーけど、触ればわかるんだとよ。魔法使いならお前もわかるんじゃねーの?」
「イヤイヤ、そんなの普通わかるわけないです」
私とジェスタさんの2人は金属の箱に積まれた絵画の山を、なんとなく選別するのに手を動かしながら会話する。
件のセローさんはというと、別の部屋で古銭の整理をしている。
「これだけ飾らない絵を持ってるっていうのが、私にはよくわからないです」
「金持ちの趣味なんて俺たちに理解できる訳ないだろ」
「でもセローさんはなんとなくわかるから依頼受けてるんですよね?」
「さぁな? 適当言ってごまかすやつじゃねーし、物の価値はわかるんじゃね?」
実は何も知らないのに依頼を受けてる可能性があるらしい。
(私的には外で活動しないでお給料がもらえるのは楽でいいけどね)
「すごいカビが生えていますね・・・・・・」
「放置された部屋って感じだな」
絵画の山をなんとなく種類別っぽく仕分けして、別の部屋へ。
次の部屋は思っていたより綺麗だったが、湿気がこもっているのかカーテンがカビだらけだった。
私はそのカーテンをバッと開いて、太陽の明かりを部屋へ入れる。
とその拍子、
(あっ、ヤバ!)
飾ってあった壺にカーテンの淵が触ってしまって、壺が床に落下した。
「おまっ」
ジェスタさんのとっさの動きもむなしく、手は空をきり、壺は床にぶつかり割れた。
ガチャン。
「・・・・・・コレ、まずいですかね?」
「まあ片付けて黙っときゃばれねぇだろ。聞かれたら素直に話しゃいいよ」
壺は人の顔くらいの大きさで、見たことのないような模様が描かれていた。
(・・・・・・これからは気をつけよう)
私にとっては価値が無くても、親族の思い出の品かもしれないのだ。
どの物も大事に扱うようにしなければならない。
別の部屋から箒と、ちりとりを持ってきて壺を処分する。
「初めからありましたーって感じで、そこのゴミ箱でいいだろ」
ジェスタさんに指示された通りに部屋のゴミ箱へ投入した。
ゴミ箱には少量のゴミが入っていたので、これがさっき割れたものか区別はできないだろう。
更に床に積もっていた埃も箒で掃いて、ゴミをゴミ箱へと更に追加して偽装していく。
「それにしても、こんな広いのに掃除する使用人さんとか雇えなかったんですかね?」
「なんか主のじいさん、家に人を入れるのをやたら嫌がってたらしいんだよな」
「へー。隠してることでもあったんですかね?」
「俺が知るかよ」
(そりゃそうだけど)
そんな話をしているさなかに、作業を終えたらしいセローさんが部屋へとやってきた。
「ジェスタ、レイチェル、こっちは終わった。区切りのいいところで昼飯を食いに村へ向かおう」
「はい」
村へと戻り、昼食を済ませて作業へと戻る。
結局、セローさんが納得できる片付け度合まで作業は進まなかったようで、村へ泊り、翌日に持ち越しとなった。




