川の調査
(高い! 怖い!)
今、私は川を渡るためのつり橋を渡ろうとしている。
下の川までは20mくらい? 落ちたらまず助からなそう。
太いロープと木の板でできた橋、足元の板は金属で簡単に補強してあるが、とても不安定で、とても怖い。
「おせーぞレイチェル」
「そ、そ、そんなこと言われても・・・・・・」
後ろからジェスタさんに急かされる。
ジェスタさんや前を行くセローさんが動くと橋が揺れる。すると私の足はガクガクして進めない。
「ほれほれ」
「ちょ、やめてくださいって!?」
ジェスタさんが調子に乗って橋を揺らし始める。
「お前、田舎育ちなのに高いとこ怖がるのな」
「は、橋とかなかったんですよ! こんな高いのは」
そんな感じでじゃれあっていると、急に揺れが無くなる。
前を見るとセローさんが対岸について、右手を剣、左手で橋のロープを握っている。
「ほら、早く来い」
(助かった。これならあんまり怖くない・・・・・・)
どうやらセローさんが魔法で揺れを抑えてくれているらしい。
(下は見ない、下は見ない)
前だけに集中して足を進める。そしてなんとか対岸へたどり着いた。
私は渡りきった安堵感から、手近な岩に腰かけた。まだ膝が笑っている。
そうして休憩していた私にセローさんから無慈悲な言葉がかかる。
「もちろん帰りも渡るからな」
「ですよね・・・・・・」
今回の依頼は、川の上流の調査だった。
下流の住人によると、川の流れが悪くなっているということだが、現状困るほどではなく、念のため見てきて欲しいというものだ。
(もし水がなくなっちゃったら困るもんね)
そういうわけで、ジグザグと橋を渡ったりして上流へと川を上る。
もちろん地図を持って道案内をしてくれるのはジェスタさんだ。
「あと半分くらいだな」
「え~。まだそんなにあるんですか~」
山間に流れる川に沿って上ること約2時間。今日中に村へと戻れるかは怪しいところだ。
「これは・・・・・・なんらかの生物の巣か?」
物知りのセローさんが知らないようだ。
「なにかはわかんねーけど、これが巣ならまあまあデカくねぇか?」
川幅は約7mくらい。巣と思われるものは川の真ん中に、枝や泥などが水上に積み上げられ、5mほどの大きさがある。
これで川の流れが阻害されているようだった。
「ちょっと周りを見てみよう」
セローさんがそういうと、剣に手をかけて、水面近くへと砂利道を歩いて行く。
そのまま水面へと歩きだしたが、魔法で水面を歩いている。
ぐるっと巣の周りを水面から確認したのちに、私たちのいる場所へと戻ってきた。




