生き残り
「・・・・・・そっちの小屋の下、まだ誰かいんぞ」
ジェスタさんがそう言って、レンガ小屋の中を見に行った。
すぐにボロボロの服を着た子供2人の手を繋いでジェスタさんが戻ってくる。
「床下に隠れてたんだとよ」
「火や毒を使わなくて正解だったな。ジェスタは他の生き残りを探してくれ」
「あいよ」
「レイチェル、俺は子供が苦手だ。代わるから相手を頼む。荷物はなんでも使って構わない」
ジェスタさんは音もなく偵察へ。
私はセローさんから子供2人を任せられた。
「大丈夫・・・・・・なわけないよね。とりあえず着替えて私と一緒にご飯でも食べよ? お腹空いてるでしょ?」
おそらく親を失ったであろう2人に、私は努めて明るく振舞おうとする。
2人は10歳くらいだろう。状況もわかっているようだ。
コクリと頷いた2人に、少し離れた場所に置いてあった背負い袋から、2人にはぶかぶかの予備の服を着せて焚火を作る。
「ほら見てて、魔法で火を着けるから」
私は呪文を唱えて、杖から焚火へと着火する。
火が灯ると、ともに2人の目に光が戻った気がした。
が、すぐに2人とも泣き出してしまった。
「ごめん! 火が怖いんだね。今消すから!」
私は焦りと共に、今まではうまく扱えなかった水の呪文を唱える。
「水よ! ここより噴き出せ!」
感情的になったのが失敗だったらしく、思っていたよりもはるかに激しい水が、杖の先から様々な場所へと降り注ぎ、3人とも水でびしょびしょになった。
(完全に失敗だ~・・・・・・)
「・・・・・・お姉ちゃん、全然ダメじゃん」
「う。ごめんね」
(よし、ようやく喋ってくれた)
そう前向きに考えることにした。
「2人は名前はなんて言うの?」
ずぶぬれのまま、しゃがんで目線を合わせて聞く。
「あたしはミルア、こっちがファニン」
2人とも髪の毛が短いから男の子かと思っていたが、女の子と無口な男の子らしい。
「お姉ちゃんたちが犬の化け物をやっつけたの?」
「やっつけたのはそこの黒い髪の人と、さっき会った大きなおじさんだよ」
「誰がおじさんだ」
ジェスタさんがいつの間にか近くまで来ていた。
「他にはどっちの生き残りもいねぇ。馬車を呼んでくっから、もう少し待ってろ」
そういうと自分の背負い袋を持って、街道へとジェスタさんは小走りで向かった。
「あたしたち、どうなるの?」
「・・・・・・」
その問いかけに、私は答えることができなかった。
(街で孤児として引き取ってもらえるの? 無責任なことは言えないし・・・・・・)
冷たいままの携行食料を頬張りながら思案するが、私には答えを出すことができなかった。
「ごめん。私にはわかんない」
「・・・・・・そっか。でもファニンとは一緒に居られるよね?」
「うん。たぶん」
これはもちろん嘘だ。
「びしょ濡れじゃあないか。ほら服を貸せ」
死体焼却を終えたらしいセローさんが来た。
セローさんは剣の柄を触りながら、ミルアの脱いだ服に手を触れる。
すると、みるみるうちに服がゴワゴワに乾く。
次いでファニンの服も脱がせて乾かす。
「君はいいのか?」
「いいです・・・・・・失敗したの私ですし」
脱ぐのも恥ずかしかったし。
日も照っているからすぐ乾く。自分にそう言い聞かせて断った。
4人で携行食料を食べていると馬車に乗ったジェスタさんが村へと来た。
「火を怖がったんだな。身内を燃やされるか何かして、それを見ていたんだろう」
馬車の中でセローさんから指摘される。
孤児となった2人はうなされながらも寝ている。
「逃げた1人と2人の合わせて3人か」
「この2人はどうなるんでしょう?」
「候補としては、孤児院だが・・・・・・悪いウワサしか聞かない。あとは冒険者候補辺りになる」
「えっと、街でそのまま冒険者になれる? 私は断られたのに?」
「まあそういう特例があるもんだと思ってくれ」
割と理不尽ぎみに感じたけど、特例があるらしい。
「身元が保証されない以上、街で真っ当な仕事は厳しい。年齢的に、まだなにかの見習いにも拾ってくれる場所はないだろう。魔物を駆除する冒険者、もしくはギルドの受付あたりだろうな」
(あ、受付でもいいのか)
「もっとも、受付というのは限られたエリートにしかなれない。よほど熱心に勉強すればあるいは、といったところだろう」
「そうですか・・・・・・」
「ひとまずは残りの1人と街で寝食を共にするはずだ。そこからは俺にはわからんよ」
セローさんといえど、すべてを知るわけではないということらしい。
そうして街に着いたのち、2人をギルドへと引き渡し、村の状況を報告した。
それが今回の仕事のすべてだった。




