襲われた村
「村が襲われて、私はなんとか逃げおおせましたが今頃村は・・・・・・」
翌日の夕方のことだった。依頼に来たのは、着の身着のまま逃げてきたという感じの男性だ。
村が魔物を率いる軍勢に襲われ、リーダーは直立した体長2mほどの毛深い犬のような見た目をした魔物だそう。
セローさんの分析によると、そいつは高度に武器を扱い、強者には逆らわないらしい。
そいつらに村を焼かれた。彼はそこから命からがら逃げだした1人だそうな。
本来は冒険者ギルドへ依頼する案件だが、そういった時に備えるための保険に、彼の村は加入していなかったそうだ。
そのため、個人での依頼扱いで高額となり、とても払えない金額になってしまったそうで、実質的に他では断られたとのことだった。
(普通はそれでもなんとかしてくれるんじゃないの?)
「そいつは下っ端の指揮官じゃねぇか? 村が燃やされたとなっちゃ、もう奴らはずらかってるかもしれねぇし。裏からつえぇバケモンが出てきて壊滅しました、じゃあ受けた側もマズイしな」
「それで、あなたは具体的に俺たちに何をして欲しいと?」
確かに、村が燃やされて一文無し、そして襲ってきた敵の行方が分からないとなれば手の打ちようがない。
普段お金を支払っているならともかく、冒険者というのは慈善でやっているものではない。
「それでも・・・・・・遺品の回収くらいはお願いできないでしょうか?」
「・・・・・・そうですね。代金分、あなたには街で働いていただくことになりそうですが、俺たちでお受けしましょう」
一見、受ける理由は無い。しかし、セローさんは引き受けた。
相変わらず、断ることをしない。
ひとまず、依頼人の人には身寄りのない人向けの施設を紹介する。
こういうときのために、依頼を受ける場所からの紹介状があれば、無償で生活できる場所が用意されている。
「セローさん、村が襲われることって珍しくないんですか?」
「通常、食料目当てで襲われることはある、他の理由でやられるのはわからん。今回は砦に近い地域でもないようだし尚更だな」
翌朝まで待って、私たちは身支度をして村へと馬車を走らせる。
「少し遠いな」
と地図を見ながらジェスタさんが言う。
馬車で遠いなら、逃げてきた人はどれだけの距離を歩いたのだろう?
「危険があるかもしれないので、ここで待機していてください。俺たちが明日の夕方まで戻らなかったら街へと報告をお願いします」
そう馬車の御者へとセローさんが伝えると、私たちは馬車を降り、村へと歩く。
ここから村へは徒歩で30分ほどらしい。
「・・・・・・」
村の入口には見せしめだろうか、縄張りを主張しているのか、人の頭蓋が看板にぶら下がっている。
あちこちに燃えた家の残骸や、地面には血のシミ、そして乱雑に積まれた人骨があった。
おそらく魔物どもに燃やされ、すべて食われた後なのだろう。
私はこんな光景を見たことが無かった。どうやら私のこの怒りと悲しみの感情は言葉にはならないようだった。




