セローの趣味
セローさんはエールを飲み干し、おかわりを頼む。
エールとキュウリの漬物が出てくる。
漬物は田舎育ちの私には食べなれたものだった。
「そういえば、君は魔法使いの集まるギルドに入るつもりはないのか」
「? なんですかそれ?」
「魔法使い、およびその見習いが集まって研鑽する場所だ。有料の年会費を支払うことになるが、知識を得られるだろう」
「そんな集まりがあるんですね」
「通常、街で育てば魔法の才能があるとわかると、親にそこへ入会するよう指示される。その程度には信頼をおける場所だ」
(う~ん、みんなでなにかやるの苦手なんだよね)
「検討します」
「ははは。それは結構。なら独学で頑張るんだな」
(う、見抜かれてる)
「全然違うこと聞きますけど、セローさんだけ毎日帰ってますよね? なにか理由があるんですか?」
(3人で交代なら夜の自由時間が増えるんだけどな)
「ああ。君たちには悪いが、俺の魔法は特殊で疲労していると極端に出力が落ちる。だから休みを多くとらせてもらっている」
「そういう理由なら仕方ないですね。セローさんが戦えないと困りますし」
焼き魚と細長い粒、ライスといったものだったか、が運ばれてくる。
セローさんは2本の短い木でできたスティックを器用に扱って食べている。
私はスプーンでライスを掬って食べているけど、見渡す限りではこれが普通で、セローさんの食べ方が違うらしかった。
「今日は少し遊びに出るか」
夕食を終えてセローさんが言った。
セローさんに連れられて、私は遊ぶ場所に。看板には『ビリヤード』と書いてあった。
店内は結構な広さがあり、数人が何かゲームを楽しんでいる。
もっとも私には何が行われているのかさっぱりだったが。
「セロー、久しぶりじゃないか!?」
「すまん、ジェスタと2人だと忙しくて来られなかった。この子が入ってくれたから少し楽になったよ」
店主っぽい壮年の人とあいさつを交わしながら、セローさんは白塗りの細長い棒を受け取る。
「レイチェル、君もやってみるか?」
「いえ。とりあえず見学で」
私はテーブルから少し離れた椅子に座ってセローさんを見守る。
セローさんは棒の細いほうを何かで拭いて、テーブルに立てかける。
テーブルの隅には、いくつか穴が開いている。
10個くらいのボールを木枠を使ってテーブルにセットしていく。
「お嬢さん、飲み物はどうかね? セローの連れならなんでもタダでいいぞ」
「じゃあぶどうジュースください」
私は適当に飲み物を注文する。
慣れた手つきでセローさんはテーブルの白いボールを棒で弾いて、他のボールを次々と穴に落とす。
たぶん11回ほどで白いボールを残して他のボールを落としきった。
「相変わらず、準優勝するだけあって上手だな」
「どうも」
私の座っている椅子の横へテーブルへ飲み物が2つ置かれる。
私のぶどうジュースとセローさんのお酒? だ。グラス的にたぶんお酒。
セローさんは一口お酒に口をつけて、ボールを並べなおす。
少々の雑談を交わしつつ、1時間ほどセローさんのプレイを見てお開きとなった。
「少し遅いし、君の家まで送ろう」
「ありがとうございます」
「これで俺に対しての疑問は晴れたかな? ジェスタもそう変わらないから、気にせず君は自分の時間を過ごすといい」
街中は基本的に非武装だから対して危険はないはずだけど、念のため送ってもらう。
こうして私はセローさんの仕事後を知ったのだった。




