セローの出自
「なんでギルドやめちゃったんですか? セローさんくらい強ければどこでも活躍できそうなのに」
「もともと5年くらいで自分の店を持つことに決めていたんだ」
クールな見かけや言動に似合わず、結構野心家らしい。
「やっぱり誰かを助けることをしたかった。けど、ギルドには規則がある。どうしても力になれないときがある。俺はそれが気に入らなかった」
(それで自分の夢を追いかけて叶えたってことか・・・・・・)
「すごいんですね。セローさん」
「そうか? ただ自分の力の使い方を考えた結果だが」
「普通、自分のやりたいことを仕事にできないですよ」
私の暮らしていた村でも、みんな夢を語って村を出て行った。
しかし、その裏で現実を見て村に戻ってくる人達も少なくなかった。
「私だって、冒険者になるんだって街に来たのに門前払いでしたもん」
「そうだったな。なぜ君は冒険者になりたかった?」
「それは」
そういいかけたところで料理が運ばれてきた。
「デビルフィッシュのから揚げです」
「どうも」
(何これ? なんか危なそうな名前だけど?)
私は皿に乗ったソレを見つめる。
何の変哲もない、親指サイズの揚げ物だ。
セローさんはソレをフォークで突き刺して口に運ぶ。
「名前に引っかかったのか? 別になんてことない、うまいぞ?」
「じゃあ、いただきます」
私もセローさんと同じように口に入れる。少しコリコリした歯ごたえがあるが、おいしいと思う。
「コレ、地方によっては絶対に口にしないそうだが。知らないようなら君のところは関係ないんだな」
「・・・・・・おいしいです」
「それで、なぜ冒険者に?」
「少し前に魔法が使えるようになって、調子に乗って気が大きくなっていた、そんな感じですかね・・・・・・」
詳しく話すと長いし、情けない話だから短く済ませたかった。
「別にいいんじゃないか? 才能があったんなら頑張るべきだろう。誰も笑いはしないさ」
「そうですか?」
「大きな街で冒険者志望したのがまずかっただけだ。小さな町でなら普通に仕事を受けられただろうよ」
「それはそうかもしれませんけど・・・・・・」
私の情報網では、冒険者はギルドにお金を払えば誰でもなれて、自分にあった依頼を受けてお金を稼げると思っていたから。
「まあレベル制限という、経験を要求されるのは周知されてもいいと思うが」
「ですよね! みんな常識みたいな感じですけど、知らない人のが多いですよ」
「でも君は恥をかいたが、そのおかげで死ぬことはなかった」
「それもそうなんですけど・・・・・・」
たしかに簡単そうだからって、いきなり荷馬車の護衛なんて受けていたら今頃どこかに売られていたかもしれない。
それを考えると、一番初めにセローさんたちと依頼を受けられたのは幸運だ。
(初めての仕事がゴブリンの焼却とは思わなかったけど)
「セローさんの冒険者での初めての仕事ってなんだったんですか?」
「飼い犬の散歩」
「へ? そんなことで依頼が来るんですか?」
「あの依頼も今思えば珍しいものだったな。金持ちが依頼してきたんだよ、2週間」
「なんでそんな依頼を?」
「それ以外受けさせてもらえなかったんだ。ギルドの意向でな」
(へー、やっぱり普通の依頼は受けさせてもらえなかったんだ)
「昔はどれだけ強くても、1か月くらいは戦闘させてもらえなかったんだ。俺たちは訓練で試験官を完封したが、それでもだ」
「じゃあ2人は昔から強かったってことですか?」
「そうだ。少なくとも俺が抜けるまで、常に俺とジェスタの入ったパーティは依頼の達成率は100%だった」
「それはずっと家で訓練してたから、とかですか?」
「いいや? ジェスタは13歳まで家の農家を手伝ってたし、俺もそのくらいまでは普通の暮らしだった。特に家柄もよくないよ」




