捕まえたのは、たったの・・・・・・
翌朝のこと、
「なんだこりゃ? 随分と足跡が多いぞ?」
「あ~、私、夜中にトイレ行きましたけど?」
「いや、これ2人以上あるぞ」
「へ?」
「お前、誰かに後をつけられてんぞ。しかも複数じゃねーか?」
後ろから感じた視線は本物だったらしい。
「足跡があるということは亡霊の類ではないな。靴の跡か?」
「いんや、ちげーな。大きさ的にサルだと思うけどわからん」
私はトイレのあとをサルにつけられたらしい。
(まあサルじゃあしょうがない?)
人間相手だったら変態行為に殴ってやりたいと思ったけども。
「軽く考えているようだが、非力な君では捕まったら逃げられんぞ? サルの握力は人間よりはるかに強い」
「私たちより頭がよくないだけだと思ってました・・・・・・」
森の中をジェスタさんの仕掛けた罠へと進んでいく。
早朝で眠い目をこすりながら。既に私は一人では小屋へと戻れる気がしない。
「野ウサギ、リス2匹に・・・・・・小タヌキか」
捕まえた動物は全部で4匹。
「あとは鳥を1羽捕まえて終わりにしよう」
「でも傷つけずにって難しくないですか?」
「君が風の魔法で撃ち落とせばいいだろう。魔法の練習にもなるしな」
「はあ」
私はセローさんに言われるがままに風の魔法を使って、飛んでいる鳥めがけて魔法を使った。
鳥は風の力で飛ぶことが困難になって、もみくちゃになりながら墜落した。
「これは・・・・・・思ったより羽が損傷しているな。ダメそうだ」
「こいつは〆て昼飯にでもすっかな」
ジェスタさんはそういうなり、首をぽきっと折って鳥を殺してしまった。
「全部小動物というのもな、これでも依頼主は文句を言わないとは思うが」
「じゃあ終わりですか?」
「ここではな。帰りの道中で、もしどうにかして捕まえられそうならば鳥類を1羽だな」
檻の罠にかかった4匹をそれぞれ持って、小屋へと戻って荷物をまとめて撤収にかかる。
(もうこの小屋に来たくはないなぁ。そもそも森林の中で寝たくないや)
そんな感想を抱いた私は、こんな依頼が来ませんようにと思うようになったのだ。そして、帰りの馬車の中での出来事だった。
「少し先にキーウィの群れがいますね。迂回しましょう」
「キーウィ?」
「飛べない鳥ですね。気性は荒くありませんが、邪魔ですね」
御者さんはそう返してくる。
「セローさん、鳥ならアレを捕まえればいいんじゃないですか?」
「まあ鳥は鳥だが・・・・・・君は群れから1羽だけ攫うと? 俺は家族を引き裂くような真似はしたくないぞ?」
「うっ・・・・・・たしかに・・・・・・」
「今のは冗談としてもだな、遠いから小さく見えるが、キーウィは人と同じくらい大きいぞ?」
「やめときましょう」
という感じのことがあって、結局捕まえた4匹を依頼人へと渡してこの仕事は終わったのだった。




