暑い夜に寒い夜
「じゃあ見ないでくださいね!」
「わーってるよ。外見てるから!」
私は覚悟を決めて、えいやっと薄手のローブとスカートを脱いで下着になって、ピッタリとした短いシャツとズボンに着替えた。
体のラインがでるし、お腹もでるしで正直苦手な服だった。
「別にそんな恥ずかしがるほどじゃあねーだろ。それギルドでやってたら男と組めねーぞ」
ジェスタさんは持ってきていた瓶に入った強いお酒をチビチビとあおっている。
「いや、屋外で下着みたいな恰好してる斥候の人たちがおかしいんですよ!」
そういった直後に対面のベッドから風切り音と共に、鋭い何かが私の頬を掠めていった。
「ごめんなさい! 別に他の人を悪く言うつもりじゃ・・・・・・」
「あ? おめー噛まれてないよな? それ噛まれたらそのまま死ぬぞ」
「はい?」
ジェスタさんを怒らせたのかと思ったが、違ったらしい。
振り返って針が飛んで行った先を見ると、手のひらサイズのオレンジ色の蜘蛛が壁に縫い付けられていた。
「アレはここの主ってとこだな。他の虫は全部その蜘蛛に食べられていたはずだろう」
ジェスタさんは蜘蛛から助けてくれたらしい。
「このあとの予定だが、明日の早朝5時に起きて、寝ている動物を捕獲する。罠にかかっているかも確認だな」
「うーし。おやすみ~」
夜の10時過ぎ、蒸し暑い中、劣悪な寝床での寝苦しい夜が始まった。
(いや、こんなんで寝れないけど!?)
ジェスタさんはお酒が入っているからか、すぐに寝息を立て始めた。
(ジェスタさん、よく寝れるな・・・・・・)
「レイチェル、起きているか?」
「はい、なんですか?」
「おそらく夜中は冷えるぞ、寝袋を用意しておけ」
「えぇ~、冷えるんですか?」
私たちは小声でやり取りする。
木のベッドに寝転がっていても汗をかくくらいには暑いのに、この後は寝袋に入る必要があるらしい。
「危険だから水分の補給をしてから寝ろよ」
「は~い」
セローさんに促され、バケツに汲んできた水にちいさなカップで水を掬って飲む。
足元は薄暗いランタンの明かりに照らされて不安は無い。
水はセローさんの魔法のおかげで綺麗な飲める水となっていた。
(やっぱり魔法ってすごいよねぇ。こんなところでも暑くて寝られない以外は問題ないもん)
森へ野生動物を探しに来てしみじみとそう思う。
戦闘でもなく、便利な日常を送るために使う魔法。
ここへきて私の魔法を使う方針が決まったように思う。
(何も戦いに勝つために強い魔法を覚える必要はないんだ。私は人の役に立つ魔法使いになろう!)
水を飲み終わって、ベッドに横になる。地面よりはマシな木のベッド。
そして少しは涼しくなった気がしなくもない。
なんとか目を閉じていたら、いつのまにか眠っていたようだ。
(さむっ。寝袋は・・・・・・)
寒さで目を覚ます。おそらく深夜の2時とかだと思う。
ランタンの灯りはまだ点いていた。
(う、トイレ行きたい)
2人を起こすか?
ジェスタさんはいつのまにか寝袋に入っている。
(いや、へーき、へーき。1人で行けるよ。できるよ私!)
ランタンを持って、鉄格子とドアを開けて外へ出る。
「さむぅい!」
寝る前と同じ短いシャツに短いズボンなのだ、長時間そのままでいたらお腹を壊しかねない。
足元を確かめながら屋外でのトイレを済ませて小屋へ戻る。
(? なんか視線を感じる?)
後ろを振り返るが何もいない。
深夜だし、気のせいだろう。




