第8話「初任務」
俺がシデンになって、一年が過ぎた、ヴェスやジェイディーの猛特訓のおかげで、この世界での生活、食事にももう随分慣れた。
最初より随分技術も知識もついたが、ミラニットには一度も勝てていない。
631戦、全敗…。道のりは遠い。
ミラニットの属性は変わらず発現しないが、必要ないんじゃないかってくらいに強い。
最近じゃ、ジェイディーも「うかうかしてられないな」と、以前に増してミラニットを戦士として扱うようになったように見える。
ヴェスがいつものように思いついたのか、ミラニットの認定試験を行う、と言い出した。
ジェイディーの表情はそれほど引きつっていなかったのを見ると、もしかすると以前から決まっていたのかもしれない。
認定試験というのはいつもの様に怪異の掃討。ただ、それに加え今回はこの辺りでも瘴気の掃き溜めとなる洞窟「コロド洞」と呼ばれる魔窟に入り、中の怪異を掃討することを目的とするとの事だった。
それにはジェイディーとミラニット、そして俺も行くように言われた。
竜狩りとしての戦闘技術はミラニットに劣るが、充分強くなっていると、ヴェスは言う。
正直全く実感がないが、その意見にはジェイディーも賛同してくれた。
俺の初任務、そしてミラニットの認定試験はコロド洞での怪異掃討作戦となった。
3日後、旅支度を終えた俺達はヴェスの元へ赴き、ヴェスもまたいつになく緊迫した表情で厳かに告げる。
「ジェイディー、ミラニット、シデン。お前たちの旅の無事を祈る」
ジェイディーは跪き、また仰々しく言う。
「師、ヴェスよ、我が身命にかけてこの者たちを守ることを誓います」
続いてミラニットが跪き言う。
「師、ヴェス、師、ジェイディー、私も身命にかけて、仰せつかった命、そして弟弟子シデンを守ることを誓います」
…次は、俺の番か、何を言えばいいんだ。真似て跪くが言葉が出ない。
「が…頑張ります」
おい、という三人の視線。空気読めや、みたいな。し…失礼しました。
「…師、ヴェス、師、ジェイディー、そして兄弟子ミラニット、我が身命にかけて与えられた使命を全う致します」
なんだか変な空気だったけど、ヴェスは「うむ、行ってまいれ」と踵を返し何処かへ去っていった。
俺は、ミラニットと同じような装備に身を包み、ホードに跨り砦を跡にした。
ジェイディーは「兄弟子ねぇ…」とつぶやいた気がしたが、あまり気に留めなかった。
まずカジャと言う村にホードを繋いだ後、怪異の出現情報を収集し巣を砕く。
それからコロド洞へ行き、いよいよこの辺りの総本山を叩くという算段だ。
これを行きの道中話しつつ向かった。
カジャへ赴くのも俺は初めてで、村長がちょっと酔っ払いで話し好きだとか、村の元武芸者はすぐ腕試ししたがるだとか、子供たちが元気すぎてミラニットが困惑するとか、色々話しながらゆっくり向かった。
カジャに着き、俺達三人は村長へ挨拶へ向かう、村の子供達と大人の殆どは、狩りへ向かったという。
怪異は最近非常に活発で、村人への被害はないものの、狩りの途中、そして夜は、近くまで徘徊するようになっていた。
村の住人達は交代で見張りを付けるようにし、既に今日まで数十匹グールを倒しているのだという。
怪異の巣を潰して回る機会も増やし、対処しては居るが、この所出現率がこの1年でぐんと増しているという。
ジェイディーはこの辺りの瘴気の根源、コロド洞へ赴く事を村長に告げ、今日から少なくとも2週間は村の警戒をより盤石にするよう指示をしていた。
村長は神妙な面持ちでジェイディーの進言を理解し、また村の者達のとりかかるよう告げると約束してくれた。
初の実戦で、かなり緊迫する状況。
俺は背筋を伸ばし、頭の中で今回の作戦の役割を反復していた。
ジェイディーは「なぁに簡単さ。俺達が敵を引きつけて、その間にお前が巣を爆発させるんだ」
そしてミラニットはこう言った。
「大丈夫、シデンは守るから、爆薬を追いたら後ろにいればいい」
なんだか本当に俺が必要なのかわからないが、ヴェスからは誰でも初任務はこう言うもんだと諭された。
前の世界では入社後すぐに、「誰もお前には期待してねぇから、足引っ張んなよ」と言われたことを思い出す。
無意識にごくん、と唾を飲む。
きっと、強張った表情をしていたのだろう、ジェイディーが俺の背中をぽんと叩く。
「さぁ、行くぞシデン、グールを見てびびんなよ?」
と悪戯に笑う。
そうして俺の初任務が開始される。




