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第4話「ユメの中へ」

稲光とともに轟音、空が鳴き、俺は横殴りの雨の中に居た。

辺りは真っ暗で状況が飲み込めずに見回しているともう一度、唸る雷鳴、遠く、何度もどこかに落ちる雷閃を眺めていた。

ふと気がつけば足元、周囲を細かな稲妻が走っている。

辺りは暗闇なのに、稲妻は妖しく紫色で、異様な光景に雨ざらしであることを忘れる程だった。

稲光が景色を明るくする。瞬時に視界を覆う白、光。

ほんの少しだけ遅れて、意識を失いそうになるほどの爆音。


光によって視界は白くなったまま戻らず、目を閉じても開けても真っ白の視界から逃れられない。

「ヴェス!」恐怖から思わず彼の名前を口にする、それは音になって喉から出て行ったかわからない

もう一度助けを請うように名前を呼ぶ。それでもこの白い世界は何も反応は無い。


それから何度もヴェスを呼んだが状況は一向に改善しない。

そのうちその場に座り込み、体の震えが止まらない。


とにかく怖かった、突如音も何もない白い世界になって歩いているのか寝転がっているのか座っているのか、手は?足は?息は?上下前後左右もわからなくなってきた。

ただ漠然と恐怖が、身体を、感覚を覆っていく。



ふと、気がつくと、とん、とん、とん。と、胸の辺りを軽く叩かれる感覚。

それを自覚できてからも続く。


少しずつ、感覚が戻ってくる、視界が開けてくる。

俺は倒れていたのか、背中に地面を感じ、視界はヴェスの顔、身体を起こすと元の部屋だ。

ヴェスの瞳は少し、焦っているように見えた。

目覚めに初老の男性とは嬉しくはないが、あの真っ白い世界よりは随分マシだった。


「シデン、大丈夫か」バツの悪そうなヴェスの手は、俺の胸を優しく叩き続ける。

「大丈夫だよヴェス」ゆっくり起き上がり、地面に触れ、掌を握り、戻った感覚を確かめる。


真っ白になる直前に一瞬だけ視界に入ったあの景色、今はもう全くうろ覚えだが、どこか別の場所に居たということは覚えている。


「シデン、少し休むか?」ヴェスがこんなことを言うのは珍しい、俺はそんなに憔悴しているのか?

ただ何も異常は感じられないし、このまま続けたいと、ヴェスに返す。

ヴェスは注意深くこちらの顔色を伺いつつも、「わかった」と頷き、話し始める。

「さて、シデン、お前は意識を失っていたその間に、何かを見たか?」


俺は覚えている範囲で見たことを伝えた、真っ暗な何処かで、雷鳴と稲光と爆音。

その後は真っ白な世界で、とても長い時間彷徨っていた気がする、と。


「雷鳴か」そう一言返すと、ふむ…と考え込んだ。

「シデン、雷を想像できるか?」当然だ、今しがた見てきたんだしな。

「では想像をしろ、そして具現化しろ。」ヴェスは少し俺から離れ、それからこう続けた。

体内に巡る血の流れを雷とし、体中に巡らせる。より強く、細かく想像する。

頭の先か、足の先か、指先か、身体を稲妻で包む。


これまた急な注文だ、と脳裏によぎるが、何かこみ上げる感覚があったのでこれは

素直に行動に移せた。

目を閉じ、なるべく細かく、先ほど見てきた色、音、雷閃の不規則な形、地を這う雷の形を思い出し、身体に纏うイメージをした。

耳を突く音が短く、不規則に聞こえる、目を開け、両腕は紫の雷を纏っているではないか。

「なん…!」

なんだこれ、と言おうとした、煙に巻かれるように雷は消え、同時に俺の意識も遠のく。


崩れる体をヴェスが支えてくれた。…全く身体に力が入らない。

「ほほぉう、雷か。」ヴェスは俺を小脇にひょいと抱え歩き出す。

「今のお前はいわゆる"魔力切れ"だ」

「わははは!楽しみだのう!明日からは狩術の特訓だ!わははははは!」

そう言って砦の扉を勢い良く開け、やや雑に俺をベッドに寝かせる。


魔力……。本当に、俺の知ってる世界とは全く別になってきた。

そんな思考だけはいつも通りなのに、今は指先一つ動かすことすらままならない。

瞼が重い…。

「今日は終いだ!休め!」というヴェスの声が遠く聞こえる。


こんなにヘトヘトになるのは初めてだ、いや、前の人生での感覚だけど。

これから更に厳しい訓練になるとも知らず、俺は泥のように眠った。

その日は珍しく暑くて寝苦しく、微睡む中少しだけ目が覚める。

夜中であるはずなのにぼんやり明るかった気がする。

誰かの声が聞こえた気がするが、窓が開いていたのか、涼しい風が肌を撫でるのが心地よく、またすぐに寝入った。


翌朝、俺はすっかり身体を動かせるようになっていた。

朝食の前に剣の稽古があるから、身支度をしていると元気なヴェスの声。

「よぉし!起きてるなシデン!」

「おはようヴェス」と返すと一拍も置かずに「今日は狩術の訓練を行うぞ!楽しみにな!」

その後まずは剣の稽古だ、とヴェスは背中に据えた剣を抜き右に左に振り回しながら出て行く。

まったく元気な爺さんだ。

俺も木剣を手に取り、少し急いで後を追った。




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