第5話「カジャ村にて」
砦からホード(ウマにとてもよく似た動物)で30分ほど走った所に、カジャという村がある。
砦から一番近い村で、歩いて数分の所に近くに湖がある。
村人は120人位で、野菜を育てたり、ツノマ(シカにとてもよく似た動物)
クブコ(イノシシにとてもよく似た動物)など、を狩って自給自足をしたり
竜狩りの砦を目指す武芸者や、竜狩りに依頼しに来た者たちを宿泊させたりして外の情報を得たりする。
中には盗賊まがいの物騒な連中も村に訪れるが、この村の男と女達はその辺の中途半端な者達より武器の扱いに長けていて
そのほとんどが返り討ちにあう。
この村の子供達は男女問わず4歳から狩りを仕込まれ、遊びと称して木剣で打ち合のだという。
この村の前の前の村長は、ジェイディーとヴェスに命を救われたことがあるらしく、大層感謝したが「守られてばかりではいけない」と両名に三日三晩嘆願し、剣の稽古をつけてもらったそうだ。
その技術を持ち帰り、大人たちが村長に教わり、それを見たヴェスが「中途半端な技術で教えるんじゃない」と自ら教えるようにしたそうだ。
それから次の村長からはジェイディーが教えるようになり、数ヶ月に一度、ジェイディーが村に行っては、訓練をする。
そうやって村人の戦力増強を図りつつ、ミラニットが来るまでは村人とこの辺の怪異の巣を潰していたが、やはり竜狩りと体質が違うためか、瘴気に当てられて正気を失う者
グールに噛まれ、グールになってしまう者も少なからず居たためジェイディーは村人との怪異討伐を止めた。
周囲の怪異を狩りながら、村の様子を見つつ、剣の稽古をし、食料や情報を手に入れる。
そうこうしてる内に少しずつ村に人が増えてきたらしい。
先に述べたように、竜狩りと仕合をするために遠方からはるばるやってくる武芸者が
この村に住みつき、なんだかんだ村の戦力増強にも一役買っているようだ。
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ミラニットは顔が隠れるくらいの銀色の髪を風に揺らしながら、カジャの入り口で村の人々の生活を眺めていた。
ジェイディーに続きホードから降りると、入り口の側の木に繋いだ。
ジェイディーと共に村長に挨拶をし、最近の怪異の出現状況等を聞く。
それからジェイディーは村人に剣術を教えに向かった。
ミラニットは既に何度も村に訪れていて、見知った顔に挨拶を済ませると
明るい内に近隣の怪異の巣を探しに行く。
村長から聞いた村人からの目撃情報をもとに、周辺に痕跡がないかを注意深く見張る。
丈夫なアンダーウェア、革製の鎧に鉄の胸当て、手首と甲部分に鉄板がしっかりとあしらわれた手袋。
太もも部分に分厚い皮、膝、脛、足甲に鉄板、革のブーツ。
銀髪から覗く済んだグリーンの瞳。
竜狩りの砦の秘蔵っ子、ミラニット。
この辺りに出現する怪異は限定されているため、ある程度の予想はつく。
いろんな動物の足あと、フン、周辺の臭い、見えるもの感じるものすべてに注意を払う。
竜狩り特有の観察力でミラニットは草むらに異変を見つける。
(…この足あと、周りの動物のものとは違う。)
人間の裸足によく似た、つま先で歩くような足あと。
はっきりと違う点は4足歩行に近い。前足、手と言うべきか、大人の男性よりも2回りほど大きい。
(この数だと3匹か4匹か。)
地面に微かに付いた赤黒い粘性の液体を指ですくい、慎重に臭いを嗅ぐ。
(腐った臭い、古い血の香り、糞尿も少し混じってる。)
ミラニットは怪異はグールと目星を付け、足跡と臭いを辿る。
おそらく夜の間に活発に行動したのだろう、臭いはそこら中に散っている。
複数で行動したのか、足あとも非常に多いが、辿る内に複数の足あとは森へ向かっていた。
(巣はこの森の中、ジェイディーに報告しよう。)
(その前に)
先ほどからコソコソと隠れながらついて回る、醜悪な臭いを放つ怪異
「隠れるくらいの知能があるなら、まずは身体を洗ったほうがいいのに」
グールと呼ばれる屍鬼種。
四肢で歩き、姿形は人間にそっくりだが、当然理性や人間味などはなく、ただひたすらに肉を貪る怪異。
腰ほどの背丈の草むらに隠れ、先程からこちらを見張っていた。
森の奥に続く足あとのグールと同じなのかは分からないが、3匹がジリジリと警戒しながらそれぞれ距離を取る。
腰に据えた剣を抜き、構えず3匹を睨む。
グールの奇妙な叫声がこだまする。
草が風に揺れる。
グールに向かって一直線の風。それはミラニットが起こしたもの。
まず1体目、向かって右のグールの首が胴から離れる。
ただシンプルに、剣を横に薙いだのみ。ただそれだけだが、グールは反応できなかった。
首がついていた箇所から、一度黒色の血液が噴き出ると、そのまま力なく倒れる。
「…叫んでいないで、かかってきたらいいのに。」
無論、言葉などグールには通じないのは知っている。
血を払うように剣を振り、ミラニットは残りのグールを見る。
「ここで死ぬんだから、たとえ通じたとしても次がないから意味はないけど。」




