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第6話 初任務

 スルガ騎士団長の洗礼を受けから一ヶ月以上過ぎた。

暫くはリアナ・カーティスによる暗殺計画も落ち着くかと思われたが、そうはならなかった。

 週に一度のペースでスルガは命を狙われていた。


 周囲の騎士達も慣れ始めてきており、襲撃失敗の度にリアナを励ますのが恒例となっていた。


 因みに週に一度のペースは、スルガが任務から戻ってくるペース位なので、実質ほぼ毎回である。 


「リアナさん、喜びたまえ初任務が来ましたよ」


 そう告げたのは、ロウアン上級騎士。


 落ち着いた雰囲気のある好青年。


 山吹色の髪は手入れが行き届いており、短く整っている。


「スルガ団長の駆逐ですか?」


 真顔で言った。


「うん、冗談に聞こえないから、やめようか」


 実際冗談ではないらしいから、反応に困る。


 「ナジーの街に駐屯しているガーゼル隊への食糧と物資の輸送任務だよ」


 各騎士団に所属する部隊は、重要拠点となる街や村へと配属されて他国や魔物、モンスター等からの防衛を任務としている。

 場所によっては治安も悪い所もあり、本国に居る騎士達よりも多くの修羅場を潜ってきている猛者も多く居るという。


 ナジーの街は治安こそ悪くはないが、乾燥地帯で作物等の収穫が悪く定期的に食糧や物資を輸送している。


「スルガ騎士団長は?」


「残念ながら、僕と二人だよ。スルガ騎士団長は人気者だから、あの人にしか出来ない任務ばかりさ」


 苦笑しながら答える。


 ロウアンは、リアナとスルガが一緒に任務に行く所を想像すると、きっと仕事どころではなくなるのだろうな、等と思った。


「そうですか」


 表情は変わってない。

 しかし何処となく落胆しているように感じた。


「あぁー、でも今スルガ騎士団長もナジーの街のあるシグナ地方へと行っているはずだったから、運が良ければ会えるんじゃないかな」


 ロウアンなりに気を遣い、リアナのやる気を引き出そうとする。


「行きましょう」


 即答だった。


 今まで見た中では、上位に食い込む返事の速さだ。


 思いの外、扱い易い事が判明した。


「じゃあ、明日の早朝六時には出発するから支度をして西門前に集合で」


「承知致しました」


 元気の良い返事にロウアンは数回頷いて、その場を後にする。


 リアナは鍛錬へと戻り、先程までよりか心持ち気合いが入っているように見えた。



 ──翌日。

 早朝六時前、西門には物資を積み込んだ大型の馬車の確認がされていた。

 リアナ、ロウアンもそれぞれが馬を連れており、馬の調子を確かめるように撫でている。


「ここから馬で一日半くらいで、街に着いたら1泊して帰ってくる」


 リアナは首を傾げる。

 シグナ地方は隣接している為、それ程までの距離にはならないはず。


「馬でもそんなに掛かるのですね」


「馬車での輸送だからね」


 馬で飛ばせば、一日掛からないくらいの距離でも、大荷物を抱えた馬車での移動なら大幅に時間は掛かってしまう。


 一回の任務で四日、五日帝都を離れる事は珍しくない。


「お二人共頼みますよ」


 馬車の御者ぎょしゃが声を掛ける。

 決して安全な旅ではないが、その表情は余裕がある。

 帝国シャルベリア騎士という肩書きの信頼の表れだろう。


「輸送中はモンスターや魔物も多く出るから気を抜かないように」


「承知致しました」


 馬へ跨り、手綱を掴み、ゆっくりと出発する。


 大きな門を潜って整備された街道へと走り出していく。


 魔族との休戦協定はされたが、低俗に知能の低い魔物に関しては魔王も管轄外であり、そういった些事には関与していなかった。


 前でリアナが先導、それに馬車が続く。

 最後尾をロウアン走る。

 後方からの襲撃に対応する為だ。


 輸送の任務、何事もなく終わる事はまずない。

 モンスターや魔物、果ては盗賊や山賊のような荒くれ者達が必ずと言ってもいいほどに襲ってくる。


 数時間も馬を走らせると自然とモンスターに遭遇する。

 街から離れる程にモンスターが襲い掛かる頻度が上がってくる。


 その都度に馬上のまま剣を振るい、馬車への脅威を断ち切っていく。


(さすがにスルガ騎士団長の娘なだけあって、入団した時より格段に腕が上がっている)


 モンスターへの対処をしながら、リアナの成長の度合いに感心する。


 恐らくは、初めての馬上での戦闘も最初こそぎこちなかったが、もう様になっている。


「これはスルガ騎士団長も気が休まらないだろうな」


 ロウアンが静かにぼやく。


「何か言いましたか?」


「いや、何でもないよ」


 娘の成長を喜ぶべきなのか。


 命を狙われる頻度が上がってしまう事を嘆くべきなのか。


 ロウアンには見当もつかなかった。

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