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お父様お命頂戴いたします〜最強騎士の娘が父を越えるまで〜  作者: 天坂 千


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第25話 それぞれの才能

 訓練場にはクラトス、ネフィ、リアナが剣を携え、各々身体を慣らすように軽く運動している。


 ネフィ副団長との稽古だけでも贅沢と言える。


 そこにクラトス騎士団長まで参戦しているのだから、夢のような状況といえる。


「えっ、クラトス団長がここに?」


「ネフィ副団長とリアナさんが一緒に戦うのかしら……」


「リアナさんいいなぁ……」


 訓練場全体がざわめきを帯びる。


 周りで鍛錬に勤しんでいた騎士達は自ずと手が止まってしまう。



「言っておきますが、アタシはスルガ団長の下にいるだけです。実力で引くつもりはありません」


 一歩クラトスへとねじり寄り、敵意を隠す事のない鋭い眼光を向ける。


「ネフィ殿の強さは有名ですからね。僕は団長になってまだ浅いですし、油断せずに参りましょう」


 クラトスは団長に就任してまだ二年目。

 それでもその実力を疑う者は誰一人いない。


「私も負けません」


 リアナだけは目を輝かせながら、始まるのを待ちわびていた。


「はは、リアナ殿の活躍も聞き及んでいますよ。僕も負けてられませんね」


 クラトスは剣を前へと掲げ、目を閉じて精神を統一する。


「アンタに合わせるから、好きに動きな。ただし、あんまり攻め過ぎるな。相手はこの前の盗賊より遥かに強いって事くらいは分かるだろ?」


 ネフィは小声でリアナに助言をし、リアナもクラトスから目を離さないまま頷いて答える。


「それじゃあ、遠慮なくこっちから行きますよ」


「いつでもどうぞ」


 リアナは真正面から、クラトス目掛けて走る。


 ネフィは距離はそのままにクラトスの視界から外れるように回り込む。


「ディメンション・スピア」


 ネフィの周囲に半透明の魔力によって生成された槍が五本現れる。


 一本ずつ時間差でクラトスへと襲い掛かる。


 ネフィ自身、この攻撃で仕留めるつもりはなく、あくまでもリアナのサポートであり、様子見である。


 クラトスもそれを理解しており、一本目を半歩で躱し、二本目を僅かに身体を傾けて回避する。

 三本目を地に伏すように避け、そこから四本目、五本目と舞うような足運びで躱す。


 回避するその姿は優雅であり、洗練された動きで見物している騎士達も思わず見惚れてしまっている。


 ネフィの魔法で隙が生まれると思っていた。


 だが、クラトスにはつけ入る隙がない。


 今正面から突撃する事は安易だと判断し、リアナは踏み止まる。


「へぇ」


 その口元がわずかに緩む。


 リアナが来ると思い、迎撃の準備を怠っていなかったクラトスは思わず声が漏れた。


 クラトス自身もリアナが攻撃を仕掛けやすいように、わざと隙を見せていた。

 しかし、その誘いを見抜かれた。


 リアナへの興味を胸にしまい込み、即座に意識を切り替える。

 左足を軸に身体を回し、ネフィの剣を受け止めた。


 リアナの方も警戒して、すぐにネフィとの距離を取る。


「今のは危なかった」


「ちっ、さすがに簡単には決めさせてもらえませんね」


 ネフィはそう言いながらも口元が吊り上がり、左手を翳す。


「!?」


 クラトスは瞬時に理解するも遅い。


「ディレイ・フレア」


 クラトスの周囲で爆発が起こる。


 爆煙が立ちこめ、辺りの視界が悪く、見物している者達も砂煙を防ぐように腕等で顔を覆っていた。


 煙の中から、クラトスが姿が現れる。


 制服は所々が焼け焦げ、頬にも煤がついていたが、傷は驚くほど浅い。


 爆煙を裂くように脱出するクラトス。

 その瞬間を待ち構えていたリアナが剣を振る。


「なっ……?!」


 剣先は捉えたはずだった。

 だが、手応えが消えていた。


「リアナ! 畳み掛けるよ!」


 ネフィは左手に魔力を集中させる──その瞬間。


 クラトスの闘気が一気に膨れ上がる。


 大気が震える。


 遠く離れたネフィへ向けて、クラトスは静かに剣を振る。


 振り被った剣は闘気を纏い、斬撃だけがネフィへと飛来する。


 ネフィは一歩踏み込み、飛来してくる斬撃へ剣を振り抜く。


 激しい衝撃音と共に闘気同士が弾け飛び、斬撃は霧散した。


(重てぇ……)


「そんな技使ってすぐにバテても知りませんよ」


 軽く自分の右腕を揉みほぐす。


 闘気斬(ショックエッジ)は、闘気を剣に纏わせて、斬撃を放つ高等技術。

 消費する闘気も莫大で、ショックエッジを習得していても決め手以外で使用する騎士は少ない。


「お気遣いなさらずに、僕は闘気量だけなら他の団長には負けてませんので」


「もうアタシに魔法を撃たせる気はないって事ですか?」


 この瞬間、ネフィは理解した。


 この一戦、遠距離から放つ魔法の優位性はもう失われた事を。


 魔力を集中し、詠唱して放つ魔法より、圧倒的にショックエッジの方が発動が速い。


「正直、撃たせたくないですね。剣もしっかりと扱えて、これ程の精度で魔法を使われるとこちらも手の内を出さざるを得ないんです」


 二人が向かい合い、互いに警戒していた中、空気が変わる。


 先程クラトスが見せた時と同様の大気の震えを感じ、二人は驚いた表情でその元となる方向を見る。


 リアナだった。


「えっと……こんな感じに闘気を高めて…………それを剣に集中させて……こう!」


 リアナが剣を振ると闘気を纏った斬撃がクラトス目掛け放たれる。


「「嘘でしょっ!?」」


 クラトスとネフィは初めて息が合った。


 クラトスは動揺しながらもショックエッジを避ける。

 斬撃はそのまま訓練場の壁を深く抉り、石片を激しく散らせた。


「「…………」」


 二人は黙ってリアナを見る。

 いや、見物していた騎士を含め、この場の全員がリアナを見ていた。


 リアナの一振りで訓練場は一瞬にして静まり返った。


「やった! 出来ましたっ!」


 リアナを除いて。

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