19-③ 招待状
<ユウト・ケイト>
荒野を凄い勢いで走っている装甲車が、突然両サイドの扉を開けたかと思うと、その扉から、乗っていた核師が次々と飛び降りていった。
あっという間に、装甲車の中は運転手を除いて、ユウトとケイトとジョー・ベガスだけになる。
ジョー・ベガスが言う。
「おらぁ!ヒョロガキ!びびってんのかぁ?!びびってねぇっでいってこいやぁ!!!」
ジョー・ベガス自身は、どうやら車内に残り、装甲車に備え付けられた銃火器で、サポートとしての役割を担っているようだった。
(そのガタイで後衛……ね。)ユウト
ユウトはそんな事を思いながら、躊躇なく、開け放たれた扉の淵に足をかける。
それを見たケイトが言う。
「ええ?!ちょ!ゆ、ユウトさん?!結構なスピードで走ってますよ?!お、俺と一緒に……。」
カタンッ
ユウトが飛び降りた。
「おお!!あいつ感覚種だってな!根性あるじゃねぇかぁ!!」ジョー
(いやいや!マジか!!………………って、先輩のこと心配しても仕方ないよな……!お、俺も……!)
ケイトも緊張の面持ちで、能力を発動し、自身の体を浮かせて車から飛び降りた。
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<ユウト>
ジャンクに向かって走行していた車から飛び降りた。
つまりは、周囲は既に大型のジャンクに囲まれている。
どのジャンクも、本部の方向に一直線に進行していて、その途中で、人や車に接触すれば襲う。そういった共通した行動が見られた。
(逆に言えば、こちらから仕掛けなければ、それほど狙われない。多対一にはなりずらい。…………ケイト君でも何とかなるかな。)
ユウトは足に沿わしていたケースから、一本のナイフを取り出す。
それは、ナイフと言うよりは大きく、剣と言うには小さいサイズ。
さらには刀身が蛇腹に折りたたまれている。
それをユウトが扱うと、まるで折り紙を広げているように刀身が大きくなる。
その大きさはユウトの上半身ほどになり、形は菜切包丁の様な、見慣れない武器になる。
(新武器"折刀"。切れ味最高。強度最低。……さ。試しますか。)
ユウトは、こちらに向かって来ているジャンクに向かって走る。
折刀を構えて飛びかかる。
(狙うは顔面。)
ザクッ
[グギャギャギャギャ]
ジャンクの顔面に折刀が突き刺さる、ジャンクが大きくのけ反る。
(……これ、力の入れかた間違えば、簡単に刀折れるな。あの人、僕以外が使える武器、作る気あるのかな。)
ユウトは突き刺さった刀を片手に、ジャンクの顔面に留まったままだ。ジャンクがのけ反ったことで、既に地上は数百メートルも下にある。
ユウトは刀を少し扱い、全体重と勢いを刀にかける。
ズザザザザザッ
縦にまっすぐ。
ジャンクの腹部が綺麗に左右に避けて血が飛び散った。
ドンッ
ジャンクが機能を停止し、体を地面に打ち付けるようにして横たわる。
ユウトは既に地上に降り立ち、他のジャンクの様子を見ていた。
その体は、ジャンクの血でまみれている。
(切れ味落ちるまでは、この方法で暫く狩れそうだね。)
ユウトが別のジャンクに狙いを付けて走り出す。
――――
そしてそれを、装甲車からスコープの能力を使って見ていたジョーが言った。
「最初の1体目はタイヨウカンパニーの奴だぜ。……こりゃ、賭がおじゃんだな。」
それに運転手が言葉を返す。
「まじですか?!あの細い茶髪の?!」
「………………いんや。感覚種の地味な方だ。」
「ええ?!」
「…………………………スカした顔で、とんでもないことやってくれるぜ……。あのガキ……。」
――――――――――
<イーネ・マリ>
ズガガガガガッ
ズドドドドッ
機関銃の音が鳴り響く。
ドォンッ
そして時々、思わず耳を塞ぎたくなるような、大きな爆発音。
(やっぱり、核師の大半を外周班にまわしてるんだ。内側は一般兵ばかり。カラス型のジャンクだから、硬さはないけれど、動物みたいに怪我をして怯む訳じゃない。取りこぼしたジャンクが基地に突っ込んできてる。)
リー・タンとウー・ミョリについて走り、高い位置にある半円状の広いバルコニーの様な場所に出る。
リー・タンが足を止めて言う。
「こちら側が、銃火器の死角になり手薄となる場所です!ここをお願いします。」
「分かりました。」マリ
(…………って。イーネが能力使えないこと言ってないのよね。どーしよ……。この人達、どっか行ってくれるかな……。)
マリがそんな事を考えていた時だった。
マリから一歩下がった所に居たイーネが、マリの肩に手を置き、「マリ。」と名前を呼ぶ。
(そーよね。イーネの事だから何か考えがあるわよね。)
マリがそう思いながら言葉を返そうとした時だった。
イーネが言う。
「…………眠い……。」
「………………………………え゙?。」
たった一言だけ発して、イーネは脱力して前のめりに倒れていき、倒れ込む所をマリが咄嗟に支える。
腕の中に収まったイーネは。
「………………え。…………嘘でしょ……。寝てるし…………!!!」マリ
「どうしましたか?!」
リー・タンもウー・ミョリも心配そうにこちらを見ている。
マリは気まずそうに弁明する。
「あ…………。えっと………………。彼……。まだ、前回の任務の後遺症が残ってて…………。」
「え……ええ?!」
リー・タンが少し引きぎみに驚いている。
(で、ですよね。応援に来てる奴が、寧ろお荷物になるって知ったら引くよね…………。)
だが、既に眠りについたイーネをどうする事も出来ない。
少し気まずい空気が流れた時、ウー・ミョリがそっと、イーネを支えるマリの手に触れる。
「え?なに?」
ウー・ミョリはイーネを指差した後に自分を指差している。だが、それだけではマリに意図が伝わらない。
意図を理解したリー・タンが言う。
「そうだね。………………マリさん。ミョリにイーネさんを預けて下さい。救護室に運んで貰います。マリさんには、前衛で戦って頂くのが、こちらとしてもありがたい。」
「…………そうですか。……分かりました。」
リー・タンの言葉を素直に受け取って、イーネをミョリに預ける。ミョリは軽々とイーネを背中に担ぎあげた。
(さすが。女性とはいえ軍に所属してるだけあるなぁ。力持ち。)
ウー・ミョリはこちらに視線を送った後に施設内へと戻って行く。
リー・タンが言う。
「では、マリさん。ここをお願いします。私は、施設内の状況把握と指示に戻ります。」
「分かりました。」
そう言って、リー・タンもこの場を離れていく。
(能力にもよるけど、核師は単独の方が都合いいことも多いもんね。)
マリは羽織りの中に手を入れ、脇のショルダーに収納していた拳銃を一丁取り出した。
(私の能力も、他人の血液がなかった時に無力だから……。緊急時用に、一丁だけ装備することにしたのよね。)
マリは拳銃の弾倉を取り出し、さらにそこからも、一個ずつ弾を手の平に取り出して、弾以外は元に戻して脇のショルダーに収納した。
手の平の上に6つの弾。
それを握りこんで、ケイトの能力を発動させ、空高く飛び上がる。
ズガガガガガッ
ドドドドッ
機関銃の音と爆発音は鳴り止まない。
マリは複数体のカラス型のジャンクを目視で確認する。
(ケイト君の能力……。まるでイーネの上位互換みたい……。物を動かすのに必要なのは"情報"。対象への理解と、それを動かすイメージ。)
マリは手の平の弾を一つ摘み上げる。
(弾の構造なんて、素人でも分かるくらいに簡単。弾心と火薬と雷管。)
6つの弾がふわりと浮き上がる。
(………………イメージは…………。アエツさんのジレかな。)
マリの周りを囲むように、半円状に6つの銃弾が並ぶ。
「イメージに名前をつける……。か。」
マリがカラス型のジャンクがいる方向に片手を翳す。
「天使の射る矢……。じゃなくて。悪魔の尻尾。」
ドッ
6つの弾が発射され、勢いよくカラス型のジャンクを貫通し、次々と機能を停止させていく。
そして、6つの弾は、ジャンクの血液を帯びながら、再びマリの元へ戻ってくる。
「なんちゃって。…………アエツさんの名前の付けかたに、イメージ寄り過ぎちゃったかな…………?」
ドッ
再び6つの弾丸が発射される。
マリは空中を飛行しながら、次々とカラス型のジャンクを撃ち落としていった。




