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19-② 招待状

 <バレンシア軍本部>

 

 ヘリはリー・タンの操縦で飛び立った。


 バレンシア軍の上空を飛行していた際に地上をみると、軍事基地の周囲が、黒い線で丸く囲われたようになっていてた。


 近づいてみると、その黒い線を構成している全てがジャンクであり、外骨格が強固な虫型のジャンクが、高くそびえるバレンシア軍の防護壁をよじ登れないようで、ワラワラと体を重ねてひしめきあっていた。

 

 その上を通過し、ヘリは軍事基地内の地上に降り立つ。


 ヘリから降りると、多くのバレンシア軍の兵士の横を通り過ぎ、ジロジロと様子を見られながら、来客用と思われる部屋に通された。


 部屋に案内し終わったリー・タン、ジョー・ベガス、ウー・ミョリの3人は、退室してどこかへ行ってしまった。リーは去り際に、'後で上の者が挨拶に来る'とか、'施設内を案内する'とかと言っていた。


 来客用の高そうなソファにイーネ、マリ、ユウト、ケイト、車内に居た時と同じ構図で腰掛ける。


 マリが言う。

 

「バランシア軍の核師って、能力と通常兵器、両方使って戦うのが特徴よね?……なんか、全員軍服だし、こんな緊急事態だから、皆んな武装してて、誰が核師で誰が一般兵なのか、全然分かんなかった。」

 

 それにイーネが答える。

 

「何でだよ。胸に黒のバッジつけてたろ。そいつらが核師だよ。」

 

「あ。もしかして、菱形の小さいやつ?さっきの3人は付けてたかも。」ユウト

 

「付いてた気がするっス。」ケイト

 

「え……そんなの見てなかった……。リー・タンさんとジョー・ベガスさんは目が特徴的だったから、そーかなって思ったけど。やっぱりウー・ミョリさんもなんだ。……結局、ウーさんは一言も喋らなかったけど。」マリ

 

 また、マリの疑問にイーネが答える。

 

「あの女。ろう者だよ。耳が聞こえてねぇ。」

 

「え?!そーなの?……ってか、何で分かるの?」マリ

 

「ヘリの中で、ハンドサインの中に手話も交えて会話してたからな。あと、おそらくだがリー・タンとジョー・ベガスは同じ血清に適合して、同じ能力を落ちわせてる。能力は見たまんまの"スコープ"って所だな。人間が目視で見れない場所を、高倍率で鮮明に見てやがる。上空からの情報収集にはうってつけ。俺らの迎えついでに、ジャンクの視察してたんだよ。あいつら。」

 

「………………何でそこまで分かんのよ。怖いんだけど。」マリ

 

「こっちに他国の手話が理解できる奴がいるなんて思ってなかったろうからな。情報ダダ漏れで喋ってやがったよ。」イーネ

 

「…………何で他国の手話が分かるのよ……。」マリ

 

「相変わらず凄いね。イーネ。」ユウト

 

「す、凄いっス…………!」ケイト

 

 素直な褒め言葉は、受け取っているのか受け取っていないのか、顔色一つかえずイーネが言う。

 

「ま、どうせこの状況なら、今日は待機で、明日のタイヨウカンパニーからの援軍第二陣待ちだ。これだけの数のジャンク、俺らが来た所で何もかわんねぇ。」イーネ

 

「え?明日に援軍第二陣がくるの?」マリ

 

「マリさん。何も知らないんですね。」ユウト

 

 ユウトの言葉に、マリが疲れた顔をして答える。

 

「いや。ジーベルさん、『もぉ何回も説明したから仲間から任務の詳細聞け!』とか言われちゃって……。それに、聞くつもりが、何か……色々あってタイミングも逃すし、皆んなも何も言わないし……。援軍第二陣では、誰が来るんですか?」

 

「いやー。それは僕達も知らないんですよねぇ。でも、こんな感じなら、それこそ、ジョーって人が言ってたみたいに、会社の核師、皆んな来たりして。」ユウト

 

「お、おお!……タイヨウカンパニーとバレンシア軍、全面の共同戦戦!!……ですね!」ケイト

 

「…………………………凄い戦いになりそうですね。」マリ

 

 マリはちらりと時計に目をやる。


 ここについた時点で辺りは暗くなり始めていた。もう既に夜の10時になろうとしている。

 

 日は完全に落ち、窓の外は真っ暗だ。

 

(朝1番にジーベルさんに会ってすぐに出立して。まぁ、こんなものか……。)

 

 そんな事を考えていた時だった。

 

 ドンッ

 

 建物の外で爆発音。


 衝撃で僅かに部屋の中の家具が揺れた。

 

「な、なんの音っすか?!今の!」ケイト

 

 ウーッファンファンファンッ

 

 ケイトが声を上げた直後にサイレン音が館内に響く。更には部屋に備え付けられていたスピーカーから館内放送が聞こえてくる。

 

 "上空にカラスを模したジャンクが複数体出現。ジャンクによる爆撃にて防護壁の一部が決壊し、ジャンクの進行を確認。館内の全核師は出撃に備えよ。繰り返す……。"

 

「「「「?!」」」」

 

 緊急事態を察したイーネを除く3人が立ち上がる。


 イーネが言う。

 

「…………ここの立地もクソも分かんねぇんだ。下手に動くな。」

 

「「「………………。」」」

 

 4人が警戒体制のまま、暫く時間が過ぎた時だった。


 部屋の扉が勢いよく開き、リー・タンが入ってくる。

 

「……放送は聞きましたか。」

 

「…はい。」マリ

 

 今もなお、館内に響く大きなサイレンは止んでいない。


 リータンは、非常に切羽詰まった表情で話し出す。

 

「外側の防御壁が破られ、多くのジャンクが進行しています。今は内側の防御壁Ⅱ型が展開されていますが、この内側の防護壁は、外側の防護壁ほど強くはありません。数千を越えるジャンクが押し寄せれば、簡単に突破されてしまうでしょう。」

 

「…………。」

 

「ですので、出来る限り、多くのジャンクを討伐することを目的に出動します。数を減らすことで、内側の防護壁でジャンクの進行を食い止めるのです。…………そして、それとは別に、上空からはカラス型のジャンクが、爆弾を体に巻いた状態で大量に押し寄せ、捨て身の攻撃で本部の一部を破壊しています。」

 

「…………?!」

 

「……私達は、戦力を二手に分け、外周部隊は大型ジャンクを討伐し、内周部隊はカラス型のジャンクが、本部に突撃する前に撃ち落とす。……それが、全部隊に通達された任務です。」

 

 リーの説明を4人は息を呑んで聞いていた。


 リーが続けて言う。

 

「今は、1人でも人員が欲しい……。貴方達に、協力を要請します。」

 

 それにイーネが言葉を返した。

 

「……ジャンクは増え続けてるんだろ。そんなジリ貧作戦。どこに勝算つけてんだ。」

 

 それにリーは、ほんの少しだけ苦い顔をしてから答える。

 

「…………。バレンシア軍として……。これは……。非常に申し上げにくい事ですが……。タイヨウカンパニーへ、緊急要請を再度通達致しました。予定であった第二陣の到着を早め、明朝4時には、こちらに到着予定です。………………それまでは…………。」

 

「耐え抜けってこったな。……完全なタワーディフェンスか。」

 

 リーの言葉を聞いてマリは思っていた。

 

(タイヨウカンパニーに頼るのが、そんなに恥ずかしいことなのかな。核師の数は、圧倒的にタイヨウカンパニーが多い。そもそも、唯一のジャンク専門の機関なんだから。通常兵器が効きにくいジャンク相手じゃ、たとえ軍であっても対応が難しいのは分かるのに。……それは、軍としてのプライドか何かなのかな。………………………………だから、ここまでになるまで、協力依頼を出さなかった……?)

 

 リーが表情を切り替えて話す。

 

「では、こちらに案内します。できれば、外周部隊と内周部隊に別れて頂きたい。」

 

「………………分かりました。」マリ

 

 リーは小走りで先導していく為、それについて、4人も小走りでついていく。


 館内にはサイレンが鳴り響き、時々ドォンッと爆発するような音が響いた。


 リーに付いていきながら、4人は相談する。

 

「イーネは確定で内周組。もう1人、イーネに付いていた方がいいね。この人、一般人みたいなものだし。」ユウト

 

「……………………黙れ。」イーネ

 

「イーネとケイト君を一緒にさせる訳にいかないですし、ケイト君は必然的に外周組ね。」マリ

 

「う、うっす!」ケイト

 

「じゃあ、僕が外周組で、ケイト君の能力をコピーしたマリさんが内周組。決まりだね。」ユウト

 

「ですね。」マリ

 

 いつの間にか建物の外に出る。


 遠くでも近くでも、何かが破損しているのか、煙が上がり、焦げついたような匂いがする。


 外に出ると一層、爆発音は大きくけたたましく、それによる揺れも、肌に痛感するようになる。


 もう暫く走ると、迷彩柄の大きな装甲車が並んでいる場所まで来た。


 リーが足を止めた為、続いて4人も足を止める。


 リーが言う。

 

「では、外周部隊になる方は車に!1番手前の車が核師専用車です!」

 

 その車にはジョー・ベガスが乗っているのが見えた。


 ユウトとケイトが一歩前に出る。

 

「行くよ。ケイト君。死なないでね。」ユウト

 

「……う…………うっっす!!!」ケイト

 

「あ。待って。ケイト君。」マリ

 

 マリの呼び止めで、ユウトとケイトが振り返る。

 

「その前に。」マリ

 

 マリがケイトに近づく。

 

(あ!能力のコピー!……ってことは、血……血をす、吸われる?!あれだよな!吸血鬼みたいにって事だよな?!え。ちょ。……き、綺麗なお姉さんに首すじを……す、すす、吸われる?……!)

 

 なんて、ケイトが思って赤面している事なんかには目をくれず、マリはケイトの団服の襟元を人差し指で引き下げて、首すじに牙を立てる。

 

 ガブリ

 

「………………いいっっっったぁぁぁあ!!!」

 

 ケイトが赤面していたのは一瞬で、その痛みに大きな声をあげた。

 

(ケイト君。筋トレでもしてるのかな。プロテインみたいな味する。)マリ

 

 必要量の血液を吸い終わり、マリは首すじから顔を離し、団服の袖で口元を拭う。

 

「そんなに痛いの?」ユウト

 

「ごめん。力んじゃったかも。」マリ

 

「うぅ……。い、いや。大丈夫ですけど……。俺の初めての負傷は、マリさんの吸血なんて……。」ケイト

 

「おい!!ヒョロガキ共、何してやがる!!乗れ!!!」

 

 車からジョー・ベガスの怒号が聞こえて、4人は車に向き直った。


 ユウトとケイトが同時に言う。

 

「行ってきます。」

「行ってくるっす。」

 

「……死んだらダメですよ。」マリ

 

 そして2人は車に乗り込み、すぐに装甲車は走り出した。


 イーネは、車を見送るマリの横顔を見ていた。

 

 ドォンッ

 

 イーネとマリが居る場所に近い所で爆発音が鳴り、地面が揺れる。

 

「こっちです!」

 

 少し離れた所からリー・タンがイーネとマリを呼びつける。いつの間にかウー・ミョリも合流したようでリー・タンの隣に並んでいた。


 イーネとマリは、リー・タンとウー・ミョリの先導について行く。

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