表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/134

17-⑤ 可愛い子には旅をさせよ

(何て……………………。納得いかない……!)マリ

 

 キンッ

 

 甲高い音がした気がした。

 

 敵の攻撃にのまれる寸前で、思わず目を瞑っていたマリとイーネはゆっくりと目を開ける。

 

 敵の攻撃が、マリとイーネがいる所だけには届いてなかった。


 見えないバリアのような物で阻まれている。


 そのバリアは、マリがイーネから受けとった首飾りのチェーンが切れて、ひとりでに浮いている所から張られているようだった。鳥が羽ばたくようなデザインの赤い宝石。

 

「どう……なって……るの?」

 

 マリが呆然としてる中、イーネの方を見ると。

 

「ははっ。はははっ。」

 

 何故か愉快そうに笑っている。


 イーネの、こんなにも屈託のない笑顔は初めて見た気がした。


 イーネが言う。

 

「…………あーあぁ。呼んじまったなぁマリ。とうとう出てくんぞ。」

 

「…………え?何?何の話し?」

 

 キンッ

 

 また甲高い音がした気がした。


 ペンダントの方を見ると、燃えている。

 

「え。ちょ!このペンダント燃えたらヤバいんじゃないの?!」

 

 敵の攻撃はまだ止んでいない。


 イーネは優しい笑顔で言う。

 

「大丈夫だよ。それはただの媒体だ。」

 

「さっきから、何言ってんの?」

 

 キーーーーーンッ

 

 ペンダントから甲高い音と、思わず目を覆う光が放たれた。


 それはホール全体に及び、光と同時に、敵の攻撃が止む。

 

 マリは光の中、何とか薄目を開けてペンダントの様子を伺っていた。

 

「…………え?」

 

 ペンダントは燃え、その炎は人の様な形に膨らみ、炎が収まっていくと同時に、誰かが、マリとイーネと同じように屈んで居た。

 

 敵の攻撃は止んでいる。


 光も収縮して無くなっていく。


 彼の全容が見える。

 

 敵の方を向いていた彼は、イーネとマリの方を向いた。


 炎のように赤い髪。赤い瞳。


 ラフなパーカーにズボンにスニーカー。


 整った顔。優しい表情。


 彼が言葉を発する。

 

「……イーネ。」

 

 彼に名前を呼ばれたイーネは、何故か気まずそうに言葉を返した。

 

「…説教なら後で頼むわ……。」

 

「……………………あの。誰ですか……。」マリ

 

 マリと赤い髪の少年の視線が合う。

 

(うわ。ナチュラルイケメンだ。)マリ

 

 マリが、今じゃなくていい感想を抱いている僅かな沈黙に口を挟んだのはラスターだった。


 より一層、上半身を肉の塊から乗り出すようにしてこちらを見ている。


 その表情は何とも嬉しそうに、気持ち悪いくらいの笑顔で叫ぶ。

 

「緋色の髪!!!!緋色の瞳!!!!!!!」

 

 赤い髪の少年はラスターの方を向いた。

 

「お前だなぁぁあああああ!!!!やっと!!やっと!!やっと!!引きずり出した!!!!!!!!」

 

 赤い髪の少年が立ち上がる。

 

「アンカぁぁぁああああああああああ!!!!!!!」

 

 ラスターの頭上では、肉の塊が再び圧縮されはじめた。

 

(また来るっ!!)

 

 マリがそう思った瞬間に、肉の塊は炸裂する。


 不可避の全体攻撃が襲う。

 

 パチンッ

 

 赤い髪の少年が指を鳴らしただけだった。


 見えない何かに阻まれて、敵の攻撃は届いてこない。

 

「………………………………どう……なって…。」

 

 そんな言葉しか出てこなかった。


 マリは呆然と赤い髪の少年の背中を見つめる。


 少しして、赤い髪の少年が呟くように言った。

 

烈火(れっか)。」

 

 ボウッ

 

 一瞬だった。


 ホールの中の全てが、業火に包まれる。

 

「あっ!…あっ……あっ…………。」

 

 ラスターの声にならない声が響く。


 肉の塊が焼かれていく。

 

(………………熱くない……。)

 

 炎はマリ達のすぐそばにも迫っていたが、何故か熱さを全く感じなかった。

 

 [グチュグ……]

 パチパチパチ

 

 肉の塊は拒絶反応が進んでいるようで、ボロボロと崩れ去るように瓦解が進んでいく。


 そして、その肉の破片を炎がのみこみ、焼いていく音だけが聞こえる。


 ラスターの体も崩れて、焼けて、姿が見えなくなっていた。


 呆気ない。


 実に呆気なく終わる。


 数十秒も経つと、あれ程までに脅威を感じ、生命の危機を感じ、恐怖の対象となっていた、肉の塊とラスターは、ただ、ゴミが重なりあっているかの様になり、それでさえも、次第に炎に焼かれ、消えていくようだった。

 

(………………一瞬だった……。)

 

 マリはそう思いながら燃えさかる炎を見つめる。


 赤い髪の少年は最後まで見届けずに、振り返ってイーネに近づいた。


 イーネは、背中からトラヴィスを仰向きに下ろしている。


 イーネが言う。

 

「悪い……。診てやってほしい……。」

 

 赤い髪の少年は、しゃがんでトラヴィスの様子を見て言う。

 

「酷い火傷だな。火傷の方は俺で対処できる。傷の方は……。取り敢えずは無理に止血するしかないな。」

 

 赤い髪の少年はトラヴィスの体に手を翳した。

 

 ボウッ

 

 オレンジ色のような光でトラヴィスの体が包まれたかと思うと、すぐに消えて、処置はそれで終わりらしかった。


 赤い髪の少年はイーネに向かって言う。

 

「っで。どーゆー状況なんだ。」

 

 イーネは非常に気まずそうに、どこか悔しそうに、顔を顰めてそれに答える。

 

「ここを除いて、後、6人と1匹。……その中にベリーも居る。……どこにいるかも分かんねぇ。……どーゆー状況なのかも……。わかんねぇ……。」

 

「お前が丸投げとはね。」

 

「………………っ…………。」

 

(凄い。あのイーネが。大人しく言われるままになってる。)

 

 すると、赤い髪の少年はマリの方を向いて言った。

 

「あなたは?怪我とか。大丈夫ですか?」

 

「………………あ。はい……。大丈夫……です。」

 

「俺はアンカって言います。弟が世話になったみたいで。ありがとうございます。」

 

「…………マリです………………。へぇ……。おにぃ……さん。」

 

「残りの人達の所に行くのに、ちょっと無理するんで、こっちに寄れますか?怪我してる彼は動かさない方が良さそうなんで。」

 

「あ……。はい……。」

 

(イーネのきょうだいなのに!凄く紳士…………!!)

 

 マリは呆気にとられながらも、アンカと名乗る少年、イーネ、トラヴィスの方に数歩進んで近づく。


 マリが近づいた所でアンカは呪い(まじない)のようなものを唱えた。

 

「掬いあげて ……イーネの友だ 方翼を 巡れ。」

 

 アンカは、まるで小鳥を手に止まらせるように指を差し出していた。そこを見つめて話している。

 

(誰かと……喋ってるの……?)

 

 すると、ほんの一瞬だけ、指の上で火がついたような気がした、その瞬間。

 

 ボウッ

 

 周囲が激しい炎に包まれる。

 

「え?!」

 

「大丈夫。熱くないですよ。」

 

 マリが狼狽えると、すかさずアンカが声をかける。


 そんな僅かな話しをしている間に、体が炎に包まれる。


 ――――――――――

 <ユキハル・ユウト・レン>

 

 建物がガタガタと音を出して揺れていた。


 ユウトとレンはユキハルによる光の拘束に囚われている。


 レンが言う。

 

「この建物……。崩れないですよね……?」

 

「…………。」

「…………。」

 

(……だんまり、ですか………………!)

 

 レンがそう思った時だった。

 

 ボウッ

 

 部屋のある一点が突如として激しく燃えさかったかと思えば、瞬く間に消えていく。

 

 ユキハル、ユウト、レンの視線が、その炎の方に向き、それぞれが警戒姿勢に入った所で、全容が明らかになった。

 

 最初に声を出したのはマリだった。

 

「ユウトさん!レン君!………………と、ユキハル……さん?…………。」

 

「マリさん?!」レン

 

 レンが驚きの声をあげる。


 レンはマリがマシロのアジトへと向かうのを直接目撃している為、ここに居ることの不自然さが良く分かった。

 

(…………それに……。あの赤い髪の人は?……。)

 

 互いが互に、状況が把握できていないまま、何故か、何かを悟ったようなユキハルは、ユウトとレンの拘束を解いた。


 突然、自由の身になり、2人は自分の体や両手に、思わず目をやる。


 次に言葉を発したのはイーネだった。

 

「なーーんでテンジョウ家の当主様。テンジョウ ユキハル様がここに居るんですかねぇ?……!…………おもいっきりグレー…というか黒じゃねぇか…………!」

 

 その言葉に返答は無く、次はユウトが目を見開いて叫んだ。

 

「トラヴィス先輩?!」

 

 ユウトがトラヴィスに駆け寄る。


 その酷い状態に心配そうに表情を歪めた。


 イーネがユウトに声をかける。

 

「…………死んでねぇ。…………だい……じょうぶだ…。」

 

 その様子を、近くでマリとアンカが見ていた。


 ユウトが言う。

 

「うん……。違う……。ありがとう。イーネ。一般人のクセに無茶苦茶だったでしょ。」

 

「………………まあな。…………でも、その無茶苦茶に助けられたことも……あったよ。」

 

 イーネにしては素直な言葉だなとマリは思っていた。


 次に言葉を発したのはテンジョウ ユキハルだった。それは、半分独り言のように。

 

「………………緋色の髪。緋色の瞳……。か……。」

 

 それに反応して、アンカがユキハルの方を見て声をかける。


「あなたも俺の名前を知ってるんですかね。有名人になった覚えは無いんですが。」

 

「…………。」

 

 ユキハルは何も答えずアンカの方を見ている。


 アンカが言う。

 

「あなた、呪い師(まじないし)か何かですか?俺の力の対象に入らなくて。」

 

 その言葉にユキハルが答える。

 

「似たようなものだ。俺のことは構わん。…………ただ……。」

 

 ユキハルが珍しく言葉の続きを濁らせた。


 少し時間をおいて、ユキハルが言う。

 

「そこの2人は俺の息子だ。………………見ず知らずの、今会った怪しい人間に言われても。っと思うだろうが…………。」

 

「………………。」アンカ

 

「………………悪いが。………………その2人を頼みたい…………。」

 

 レンとユウトは少し驚いてユキハルの様子を見ていた。


 アンカが答える。

 

「俺が大事にしてる奴の、大事な仲間だそうなんで。言われなくても力を貸しますよ。」

 

「………………恩にきる。」

 

 マリは空気を読んで、少し遠くにいるレンを「レン君!」と名前を呼んで手招いた。レンが合流する。

 

 ボウッ

 

 アンカ、イーネ、マリ、トラヴィス、ユウト、レン。全員が炎に包まれる。


 ――――――――――――

 <ナユタ・ニコ>

 

 ボウッ

 

「うわぁぁあああ!!何?!なに?!」

 

 突然現れた炎にナユタは思わず腰を抜かしていた。


 ナユタの近くにはニコが横たわっている。

 

「ナユタさん!ニコ!」

 

 マリが声をかける。

 

「ままままままマリさん?!え?!皆んないるの?!」ナユタ

 

「まだ、ベリーとアエツさんがまだですけど。無事だったんですね!」マリ

 

「あぁ。ぼ、僕は……大丈夫…。ニコは……。力……使い切っちゃって………………。って!誰?!!!」ナユタ

 

 ナユタは、今度はアンカの姿を見て再び腰を抜かしていた。と同時に、そこにいる全員の様々な思考がナユタに流れ混こんでくる。

 

 'うるさ。ギャグ要因だな。こいつ。'

 '僕も知りたい。'

 'イーネのおにぃさん。って言っていいのかな'

 'トラヴィス先輩の…湯むき……?'

 

「なんなの?!みんな戦闘直後だよね?!疲れてないの?!え。まって。ちょ。おにぃ?!」ナユタ

 

「ナユタさん。取り敢えず移動するんで、こっち来て下さい。」マリ

 

「……あ。……はい。も、いいや……。」ナユタ

 

 ナユタが立ち上がる。


 ニコの様子を見たユウトが言う。

 

「ニコは僕がおぶろうか。」

 

 ユウトが一旦離れたニコを背負いに行く。


 その間、トラヴィスの様子を見たナユタが、その変わり果てた姿に驚くなどのやり取りもあったが、マリは周囲を見渡していた。

 

(なにここ……。スクラップ場?……。…………………………あ……………………。あれは…………。)

 

 マリの思考に気づいたナユタが、マリに声をかける。

 

「マリさん。…………僕らを襲ったあの男だよ……。」

 

「………………死んでるんですか?」マリ

 

「……………………うん……。」ナユタ

 

「………………………………そうですか……。」マリ

 

 アンカ、イーネ、マリ、トラヴィス、ユウト、レン、ナユタ、ニコ。全員が炎に包まれる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ