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16-② 副作用

「……おい!何をする!!」アルバラ

 

 ベリーはアルバラの背中から飛び降りてアエツの元へ駆け寄っていた。

 

(…………目の前で……………………死なせられる訳ないじゃない……………………!…………。)

 

 [キィァァアアアアアアアッ]

 

 球体型の敵は表面がボコボコと波打っている。

 

(あれが肉の塊の中心部!…………まだ何かあるな……!)アルバラ

 

 アエツは力なく仰向けで倒れている。


 ベリーは走ってアエツの側へ駆け寄り、アエツの傷口に手をかざした。

 

(アエツのジレの操作が無くなって腹部の傷口もあいてる!…………出血が多いっ!………………!)

 

 ベリーの両手は小刻みに震えていた。

 

「…………ふ、風樹(ふうじゅ)女神(めがみ) 癒し(いやし)芽吹き(めぶき) 貴方(あなた)(わたし)(いのち)() (わたし)貴方(あなた)記憶(きおく)() 遠い彼方(かなた)水鏡(みずかがみ) 僅か(わすが)刃先(はさき) 受難(じゅなん)破片(はへん) 借りものの(うつわ)を差し出し 希う(こいねがう) ………………お願い…………少しだけ……。お願い………………。」

 

 [キィァァアアアアアアアッ]

 

 球体型の敵はボコボコとイガグリのように表面が尖っては戻り、不安定になっている様子だった。

 

 バシュッ

 

 球体型の敵から肉塊が勢いよく飛び出て弾丸のように打ち出された。


 しかしそれは、ベリー達とは全く別の場所に打ち込まれている。

 

 バシュッ バシュッ バシュッ

 

 肉の弾丸が、徐々に速度を早めて次々と打たれる。


 下手な鉄砲数うちゃ当たる。

 

 バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ

 

 敵の攻撃は無差別的に打ち込まれ、数発はベリーとアエツの体をかすめる。


 肉の弾丸に触れると、切り傷のような出血と、火傷のような赤黒い皮膚の変色が起こっていた。


 アエツは意識が無く、アエツ自身が攻撃を避けることなんて叶わない。そして、アエツの体に手をかざすベリーは、アエツを一点に見たまま動こうとしなかった。

 

 バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ

 

 敵の攻撃は止むどころか、数と威力をましていく。

 

『……全く!……煩わしいにも程がある!』

 

 ベリーとアエツのいる場所が急に暗くなった。


 どうやら、体を大きくしたアルバラの腹の真下に居るようだった。

 

天雨乃傘下(てんうのさんか)。」

 

 アルバラの周囲の景色がボヤけたかと思うと、敵からの攻撃がバリアのようなもので防がれている。


 アルバラがベリーに話しかける。

 

『そんな状態の奴が助かるのか?』

 

「…………………………。今のままじゃ…………助からないわ……。でも………………。助かる希望を持たせたままには出来る…………。」

 

『ふん。それで?助かる希望とは?』

 

「…………………………。アルバラ……。貴方はどこまで知ってるの?」

 

『何も知らんな。ただ、私らは魂の形を感じ取る事ができる。お前が特殊なのは分かる。』

 

「……………………。」

 

 ベリーはアエツから視線を外さずにアルバラに言う。

 

「お願い……。助けたいの……。力を貸して……。」

 

『そやつの魂なんぞに興味は無い。』

 

「貴方の"力の性質"は"水氷(すいひょう)"よね。喜ぶ報酬は用意するわ。」

 

『…………。』

 

 ベリーの言葉を聞いたアルバラは心の中で思っていた。

 

(こやつは何を言っているんだ?……。)

 

 しかし、アルバラにとって、自分が知らない、分からない、なんてことは口が裂けても言えない。プライドがそれを許さなかった。

 

『ふむ……。その報酬とやら。必ず頂くぞ。』

 

「約束するわ。」

 

 アルバラは敵に向き直る。

 

『スィリティジズィゥヴォッテリワーセリェ……。』

 

 アルバラがテンジョウ家の言葉を唱える。


 その間にも、敵の攻撃は止むことなく射出され続けているが、全てがアルバラの防御によって阻まれていた。


 アルバラの額の前に、魔法陣のようなものが敵の方向を向いて浮かび上がる。

 

翠練雷光咆(すいれんらいこうほう)!』

 

 ドッ

 

 アルバラの額の魔法陣から一直線に放たれた攻撃はバスケットボール大の敵を軽々と飲み込む。

 

(……最後はやけに硬いな……!)

 

 アルバラは攻撃を続ける。

 

 [キィァァアアアアアアア…………]

 キンッ

 

 アルバラの攻撃が徐々に収縮していき止まった。


 静かな時間が流れる。


 敵の痕跡は一切無い。

 

「たお……したの……?」

 

『あの奇怪な化け物はな。しかし……。』

 

 アルバラは自分の真下にいるベリーとアエツに視線をやって言う。

 

『…………正念場はここからようだな。』

 

「……………………っ!…………。」

 

 ベリーがほんの一瞬でも気を抜けば、アエツの命はこと切れてしまう。


 ベリーはアエツを一点に見つめ、アエツにかざす手に力を込めた。

 

『貴様の"核"の容量じゃ。数十分が限度じゃろう。続けるのか?』

 

「……………………当たり前でしょ……。死なせない……。」

 

 ピー カチャン

 

 部屋の端の方で機械音がする。


 どうやら、この部屋の出口の扉があいたようだった。


 しかし、余談を許さない治療の中、移動する事などできるはずも無かった。


(………………。お願い……。イーネ……。早く……。)

 

 アルバラは、ベリーとアエツの様子を暫く見つめて、諦めたように体を小さくし、二人のそばで暇な時間を寝て過ごそうと決めた。


 ――――――――――

 <ナユタ・ニコ>

 

 ドォォォオオオオンッ

 ガチンッ キンッ

『----♪♪-----♪--♪!』

 ドンッ ガンッ ドォォォオオオオオンッ

『---♪♪--♪♪------♪♪♪!』


 大男の斧はスクラップを粉々に砕き、それは打撃というよりも爆撃のような威力に近かった。


 一度でもまともに受ければ死ぬようなその攻撃を何とか凌ぎ、大男に攻撃をくわえる。


 が。男の黒い肌は非常に強固で、廃材の中から武器になりそうな物を拾って戦っている2人の攻撃は、どれも効果的とは言えなかった。

 

(僕もニコも、動物霊園からいきなり連れ去られて、まともな武器持って無いんだもん!!いつも武装したまま、平然と街中歩くユウトと違って、まともだから!!!)

 

 ナユタがそう思ってもどうしようもない。


 守り続けるだけでは、いつかは攻撃を受けて死ぬだろう。


 攻め手に徹して、何かが有効的で、大男を倒せる可能性に掛け続けるしかない。

 

(ニコと一緒でまだ良かった!……ニコの能力で強化してるから何とかなってる……!でも……。)

 

 拮抗し続ける戦況。


 ニコは常に歌い続けている。


 能力には目に見えない"核"を消費している。

 

(ニコが歌えなくなった瞬間…………。死ぬ……。)

 

 ドォォォオオオオオンッ

 

「アアモォ。ネズミ。ミタイナ奴ラ。チョコチョコ。動イテ。仕留メラレナイ。」

 

 大男の手が一瞬止まる。


 それは疲労とかそう言ったものではなく、気分転換くらいのものだったのかもしれない。


 その一瞬の時。

 

『---♪♪--♪………………。』

 

 ニコの歌が止まる。

 

「静カ。ニナッタカ?」

 

 ナユタは焦る。

 

(まずい!さすがにしんどいか?!連続で歌い続けてるもんね……!)

 

 ニコが息を吸う。

 

『…………♫♫♫♫〜〜〜♫。』

 

 曲調が変わる。


 今まで聞いたことのない曲。


 ニコはニヤニヤと笑っていた。


 バフ効果のある曲だが、効果の振れ幅が大きく、力の強さが極端に増減する状態にナユタは車酔いのような気持ち悪さを感じる。

 

「……に、ニコ……。」

 

「オマエ。サッキニモマシテ変ダナ。」

 

 ニコはフラフラと歌いながら、スクラップの中から新たな鉄の棒を引き抜いた。


 その先は斜めに欠けて鋭利に尖っている。

 

 『♫〜〜♫♫〜♫!』

 

 歌のボルテージは曲を重ねる毎に上がっていっているが、その分、歌い方は無茶苦茶だった。


 ニコは心のままに歌っている。周りも気にせず。歌に引っ張られるように。


 それはまるで、操り人形のようにも見えた。

 

「オ……マエ!ドンドン強クナッテルナ!!」

 

 ガキンッ ガチンッ

 

 斧と鋭利な鉄の棒がぶつかりあって、高い金属音がする。


 大男の大振りな攻撃は一切ニコには当たらない。


 どころか。

 

 ブシュッ

 

 大男の頭上から、全体重と勢いを乗せて繰り出したニコの攻撃は、大男の肩の部分に命中し、鋭利な鉄の棒が突き刺さって血が吹き出した。


 ニコに返り血が飛ぶ。

 

 初めて、大男に有効的な攻撃が当たった瞬間だった。

 

「ジャマ。」

 

 大男は鉄の棒が突き刺さっているのをもろともせずに、棒が突き刺さっている方の腕を大きく振るう。


 ニコは鉄の棒は突き刺したままに、ヒラリと宙を舞って大男から距離をとった。


 大男は自分で鉄の棒を引き抜いて投げ捨て、また両手に大きな斧を構え直す。

 

『♫♫〜♫〜〜〜♫〜♫。』

 

「分カッタ。マズ、オマエ。殺サナイト。メンドクサイ。」

 

 ニコは楽しそうに歌っている。


 また近くのスクラップの中を漁って、今度は随分と長い動線を引っ張り出すと、持ちやすいようにしているのか、片手の平にクルクルと巻き取りながら両手に構えた。

 

 ドッ

 

 大男がニコに向かって距離を詰めながら大斧を振るう。

 

 ドンッ

 

 斧は地面に叩きつけられ、その攻撃を交わしたニコは軽々と身をこなして男の背後に回っていた。

 

 『♫♫♫〜〜♫〜。』

 

 ニコは歌いながら、笑いながら。


 なんの躊躇もなく、男の首に動線を巻いて締め上げた。


 間一髪の所で、大男は、銅線と首の間に指先を滑り込ませて、それを阻止する。

 

「グッ……。グゥッ……。チカラ……強イナ……!」

 

 暫く動きが拮抗したが、さすがに大男の力の方が上回り、首を取り巻く銅線を振り払うと同時に、ニコはまた、大男から距離をとって、大男が投げ捨てた、先の鋭利な鉄の棒を、もう一度広拾い上げた。


 鉄の棒の先には、大男の血がついている。

 

『♫♫♫♫。』

 

 ニコの様子をみてナユタは確信する。

 

(誘暴症……!!…………強くなる反面、ジャンクの本能に支配される……!今は……。ちょっと助かってるけど…………。)

 

 ナユタは苦い顔してその様子を見ていた。

 

(大男に勝てた後……僕でニコを正気に戻せるか?…………。いや。先の事を今考えるのはよそう!…………それより!)

 

 ナユタがそう思っていた時だった。

 

『♫♫♫♫♫♫♫♫!!!』

 

「…………………………え?」

 

 強力なニコの歌は、ナユタの能力も強力に底上げする。

 

 """""""""""""""""""

 """""""""""""""""""

 

 ナユタの脳内に映像が流れこむ。


 ニコと、大男の記憶。


 その2人にとって大切で残酷な記憶。

 

(…………なにこれ。映像が……。勝手に……。今の感情じゃない……。これは……。2人の……。過去……?)

 

 ガチンッ

 

 ナユタは脳内に流れる映像と感情を処理しきれずにフリーズしていた。その間、ニコと大男の戦いは激化する。

 

 """""""""""""""""""

 """""""""""""""""""

 

(ニコは……ジャンクに家族が殺された……。大男は……戦争孤児?………………。これは……。マシロの実験……。人間に対してへの能力の付与……?……………………全て……………………失敗………………。何度も……実験を繰り返して…………。)

「お゙ぇぇえ゙っ゙!…………。」

 

 2人の感情が流れ込む。


 悲しさ、辛さ、孤独、焦燥、惨め、悔しさ、痛み。


 2人分の負の感情は混ざり合って、黒く重たく、ナユタは吐き気で疼くまる。

 

(……っ!まずい!巻き込まれるっ!って!変な言い方だ、け、どっ!!)

 

 うずくまるナユタの元へ、2人が激しい戦闘を繰り広げながら、雪崩れ込むように向かってくる。


 ナユタは重苦しい体を引きずるようにして2人から距離を取る。

 

(…………ニコが……押してる?)

 

 大男は腕には刺し傷が増えていた。


 しかし、大男は怯む様子も、疲れる様子も、休む様子も無く、最初と変わらない調子でニコとやりあっている。


 ニコの方は、どんどんと調子が良くなっているようだった。


 曲もアップテンポ。何より、歌うニコ自信が楽しそうに見える。楽しそうに。ニコニコと笑顔で歌いながら。泣いていた。

 

「ニ…………コ………………。」

 

 ナユタに、ニコの今の感情も流れ込む。

 

 それは、ニコ気持ちとジャンクの本能が入り混じった可笑しな感情。

 

'ウタイタイ―歌いたくない!―ウタイタイ―もう止めろよ!―タノシイ―楽しくない!俺の体だ!俺の声だ!俺の能力だ!―マタイッショニウタイタイ―俺を返せ!―アノコトウタイタイ―俺じゃない!言う事聞かない俺なんて!俺じゃない!―トモダチニナッテ―殺すな!誰も殺したくない!―ジャマシナイデ―止まれ!―タノシクナイノ―楽しくなんか!―タノシイネ―楽しくな……―ウタッテイタイ―楽しいね'

 

「ニコ!!!!」

 

 ドォォォオオオオオンッ

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