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15-① それぞれの相手

 <マリ'story>

 

 クイーンサイズのベッドで目が覚める。

 

 ダークブラウンを基調としたシックなこの部屋は、ホテルのスイートルームの様に、お洒落で、広くて、部屋に付いていたお風呂も、無駄なガラス張りがお洒落を演出し、完璧な湯加減で最高だった。


 部屋にはウォーターサーバーもあれば、大きなテレビもあるし、ライナックスさんが、摘めるお菓子やティーパックなんかも用意してくれて、何も困らないどころか、快適で過ごした。

 

 ライナックスさんが買ってきてくれたパジャマは、まさかの全身真緑で、(どこに売ってるんだろう……。)という感じではあったが、着心地はよかった。

 

(ライナックスさんは、見た目より中身重視……。)

 

 そんなパジャマからタトラスが買ってきてくれた洋服に着替える。


 それも沢山買ってきてくれたが、どれもお洒落で可愛らしい。


 その中から、サマーニット生地のタイトなマーメイドワンピースを選んで着る。グレーのワンピースに、くるぶしまでの黒のブーツを合わせて履くと、休日にお洒落して出かけるようなコーデで可愛らしい。

 

(サイズぴったり。靴も……。言ってないのに……。)

 

 部屋の外に出ると、長い廊下にお昼間の太陽の日差しが入ってきている。

 

(オープンキッチンのある場所と、ここの部屋くらいしか知らないし。変に歩き回ったら迷いそう。…………取り敢えず、オープンキッチンのある所に行こうかな。)

 

 2.3分歩いて辿り着くと、オープンキッチンの中からライナックスさんが声を掛けてくれた。

 

「あら。おはよう。眠れた?」

 

「はい……。むしろ快適すぎました。」

 

「それは良かった。どうする?朝ごはんっぽく軽くも出来るし、お昼ご飯もできるけど、どっち食べたい?」

 

「あ……。じゃあ……。朝ごはんっぽく……。軽くで。」

 

「はーい。ちょっとまってねぇ。あ。パン?ごはん?」

 

「…………パンで。」

 

「甘いの?塩辛いの?」

 

「……塩辛いで。」

 

「ん。まっててねぇ。」

 

 お風呂最高。ベッド最高。新品の可愛いお洋服。更に、美味しい手料理。

 

(…………………………こんな感じでいいの?……私。)

 

 マリはあたりを見渡す。

 

 ホテルのエントランスのような広い空間は、真ん中のオープンキッチンだけでなく、他にも、寛げそうなスペースや、本棚なんかもある。


 その一角に、一段高くなっている場所にCの形のソファが置かれ、真ん中にテーブル。ソファの背後と頭上はガラス張りになっていて、外からの木漏れ日が差し込んでいる場所があった。


 そこに、ゴスロリっぽい服を着た、ピンクの髪をツインテールに纏めた女性が1人。ヘッドホンをして音楽を聴いているようだった。

 

(………………挨拶…………しとく?………………敵に挨拶ってなに?…………。)

 

 何となく無視することは出来ずに、歩いてその女性に近づく。

 

(見た目は……20代だけど……。たぶん80歳越えなのよね……。)

 

 そんなことを考えてる時だった。


 こちらの気配に気づいたのか、ゴスロリ風の女性の視線がマリに向く。目が合った途端に、マリは何故か、歩くのをやめてしまった。

 

「………………。」

「………………。」

 

 目が合ったまま2人とも動かない。


 すると、徐々にゴスロリ風の女性の表情が、驚いたような、引いたような顔に変化すると、

 

「っっっっっはっぁぁぁああ〜〜〜?!!」

 

「…………………………。」

 

 ゴスロリ風の女性が大きな声を上げた。


 それを気に求めないライナックスが「マリちゃんご飯出来たわよー。こっち置くわねー。」とマリに声をかけ、それも無視することが出来ずにマリは「あ。ありがとうございます。」と返して、朝食を置いてくれたオープンキッチンのカウンターまで戻って座ろうとした時。

 

「なんっっっっで!!無視してんのよ?!!はぁ?!舐めてんの?!!ってか!誰?!マジ!あんた!!誰!!!」

 

「…………………………え?」

 

 ゴスロリ風の女性は勢いよく立ち上がってマリを指差している。


 マリは困惑していた。

 

(……………………私のことって、伝達されてないの?……)

 

 そうなると、おそらくマシロの仲間であるだろう彼女の言い分は最もであるが(え?…………私が説明していいの?…………この場合なんて説明するの?……スパイに来ました?だめよね……。タトラスの彼女です?いや、彼女じゃないし……。お茶しにきました?いや、もう一泊してるからお茶どころじゃないか……。)何て思考を巡らす。


 勿論、その間は沈黙の時間が流れている訳で、無視されたとでも感じたのか、ゴスロリ風の女性は顔を真っ赤にして怒っているようだった。

 

「ば……ば……馬鹿にしてんの?!あんた!!ちょっと綺麗で大人っぽいからって余裕ぶっこいてんの?!はぁぁ?!舐めてんですかぁ?!舐めてますよねぇ?!ここどこだか分かってんの?!私が誰か分かってんの?!黙ってないで喋りなさいよ!お口ついてんでしょーが!!!」

 

「……………………………………こ。こんにちは。」

 

「……………………………………はぁぁあ?!!挨拶しろっつってんじゃないのよ!説明しろって言ってんのよ!!そもそも何?!昼に起きて朝食?!生活リズム整えなさいよ!!自堕落なやつねぇ!!」

 

「………………すみません……。」

 

「謝んなぁぁあああ!何か理由があるんでしょ?!なんかの経緯があるんでしょ?!普通説明するでしょ?!馬鹿なの?!馬鹿なのね!!分かったわ!今ので分かったわ!アンタもイカれポンチね!あーー気にくわない!!どーせマシロの奴だわ!だからアイツの事嫌いなのよ!!アンタもアイツにだけはついてっちゃダメよ?!いい?!分かった?!…………はぁ?!ここにいる時点で終わってるっつーの!ばーーーーーか!!!」

 

「……………………。」

 

「マリちゃん。冷めるわよ?彼女は取り敢えずほっておいていいから食べちゃいなさい。」ライナックス

 

「………………あ。はい。ありがとうございます。」マリ

 

「…………………………こぉぉぉおおおんのぉぉおおおお…………。イカれポンチがぁぁあああ!!!」

 

 マリは何かを諦めてライナックスに促されるままオープンキッチンのカウンターに腰掛けている。


 それを見たゴスロリ風の女性は、彼女の真横に立てかけてあったエレキギターのような物の柄を鷲掴みにすると、ギターを弾こうと構えた。それを、

 

「すとっぷ。」

 

 ゴスロリ風の女性の背後に突然現れたマシロが、彼女の腕を掴んで静止していた。


 彼女のこめかみに、更にも増して青筋が立つ。

 

「…………はーなーしーなーさーいーよぉぉ……。一曲ぶちかますわよ?……。」

 

(………………曲?……………………歌?)

 

 彼女の言葉にマシロが笑顔で返す。

 

「悪かったよ。ゆるして。ララン。」

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