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14-④ 秘密にしたいこと

 <マシロのアジト マリ,story>

 

「あなた!ここに泊まるってことよね!着替え持ってるの?!」ライナックス

 

「……持ってません。」マリ

 

「下着もないわよね?!」ライナックス

 

「……はい。」マリ

 

「お金は?!」ライナックス

 

「……持ってません。」マリ

 

「んもぉー!きの身きのままこんな所きてぇ!とりあえず!すぐに着替え買いにいってあげるから!お腹は?!すいてない?!」ライナックス

 

「……あ。はい。大丈夫です。」マリ

 

「じゃあお風呂沸かしてあげるから!お風呂はいっちゃいなさい!向こうは深夜だったんでしょ?!お風呂上がって寝ちゃいなさい!ね?!」ライナックス

 

 マリとライナックスのやり取りにタトラスが口を挟む。

 

「あ。マリさんの服は俺が選ぶー。ライナックスが選んだらおばさん臭くなる。」タトラス

 

「あーもー好きにしなさんね。ちょっと!マシロ!トイレとかまた教えてあげてちょーだいね!ちょっと行ってくるから!」ライナックス

 

「はーい。」マシロ

 

「………………す、すみせん。ご……ご迷惑おかけします。」マリ

 

「いいのよ!こんな無茶振り日常茶飯事なんだから!そこ!カウンターにでも座って!あ。お茶だけ出していくわね!」ライナックス

 

「あ。いや……。お気遣いなく……。」マリ

 

 そう言いながらライナックスは忙しなく動いていて、暫くすると、いつの間にかタトラスを連れて建物の外へ出て行ったらしかった。


 マリとマシロ、2人だけの空間に、静かな時間が流れる。


 マシロがマリに声をかける。

 

「隣。座る?」

 

「え?………………………………あ……。はい。………………失礼します………………。」

 

 そう言って、マリはゆっくりとした動作でマシロの隣のカウンターの椅子に腰かけた。

 

「…………………………。」

 

 気まずい時間が流れる。


 先に口を開いたのはマシロだった。

 

「マリさんって、変わってますね。」

 

「え?……………………あ。そー……。ですかね。………………最近……。よく言われる気がします……。自分では、普通だと思ってるんですけどね…………。」

 

「だって、目の前で君の仲間達を消しちゃって。怒ったり、怖がったり、逃げたくなったり、問い詰めたり。しませんか?」

 

「…………あ。いや…………。それは、ライナックスさんが優しく接してくれたから…………何か、毒気が抜かれたというか…………。」

 

「あ。そう?」

 

「…………それに………………。私に出来ることなんて無いんで…………。騒ぐだけ無駄かな…………っと……。」

 

「変わってるねぇ。」

 

「………………そーですかね?」

 

 最後のマリの言葉にマシロの返答は無く、また静かな時間が流れる。


 マリはライナックスが用意してくれた、陶器の湯呑みに入った温かい緑茶を啜った。


 また、マシロの方から話しかけてくる。

 

「君は死ぬのが怖く無いの?いや。死にたいのかな?」

 

「……………………あー……。そうですね。どうなんでしょう。死にたい訳じゃないと思います。」

 

「あぁ。そう。意外だね。」

 

「………………何か見えてるんですか?」

 

「あははは!なーんにも。そんな能力は持ち合わせて無いよ。作れるかも、しれないけれど。」

 

「…………何でもできる能力ですもんね。」

 

「テステオーレの奴がそんなこと言ったの?何でも出来る訳じゃないよ。何でも出来るなら、こんな回りくどいことしてないよ。」

 

「………………。」

 

 マリが思っていた以上に柔らかい雰囲気で会話が進む。


 だからなのかもしれない。


 今度はマリの方からマシロに話しかける。

 

「マシロさん。ちょっとお話ししてもいいですか。」

 

「んー?いいよー?」

 

「……マシロさんは何でジャンクを作ったんですか?」


 その質問にマシロは素直に答える。

 

「別に、ジャンクっていうものを作ろうとした訳じゃないよ。ただ、僕は僕なりに。あの人みたいになりたいなって思って。ちょっとしたマネっこしてるだけ。」

 

「……あの人っていうのは、皆さんが言う、神様のことですよね?」

 

「はは。そーだね。神様だね。」

 

「……。」

 

 マシロは優しく微笑んで言葉を続けた。

 

「僕達はね。みんな身寄りのない孤児だったんだ。」

 

「…え?」

 

「戦争。飢餓。スラム。貧困。みんな理由はそれぞれだけど、みんな困った子供達だった。あの人は、そんな僕達に救いの手を差し伸べてくれたんだよ。」

 

「……そうだったんですか。」

 

「そして、それぞれが望む力もくれた。特に僕は、運がいいことに、あの人にとても近い力を手に入れた。でもね。やっぱりあの人みたいにはいかないんだ。人を救いたかたったけど、人に力を授けられるほど、僕の力は優れてなかった。」

 

「……。」

 

 マリは黙ってマシロの話しを聞く。


 マシロが続ける。

 

「最初は気まぐれだったけれど。変わりといっては何だが、動物達を救うことにした。」

 

「動物…ですか…。」

 

「猟銃で打ち損じた鹿。不要だからと山に捨てられた犬。繁殖の為に閉じ込められた珍しい鳥。」

 

「……え?」

 

「人のせいで、自然な形で死を迎えることができなさそうな動物達を助けることした。消えかかる命に、力を流すと、皆んな強くなった。そうして、君達の言うジャンクが産まれた。けれど、結局は君達に皆んな狩られてしまって。僕は何がしたかったんだろうね。」

 

「………。そんなこと。知りませんでした。」

 

「あはは。言ってないもの。」

 

(………………ジャンクは……結局、積極的に討伐すべき対象だったのかな…?確かに強くて大きくて。危ないものだけれど…。)

 

「…まるで、私達の方が悪のようです。」

 

「それがマリさんの素直な感想?僕はちょっと意外な言葉だったよ。」

 

 話しに区切りがつく。


 マリの方からマシロに話しかける。

 

「……。また、聞いてもいいですか?」

 

「なぁに?」

 

「イーネとベリーを狙う理由は何ですか?」

 

「………。」

 

「きっと、答えられないんですよね?」

 

「……マリさんは、意外と度胸があるね。」

 

「度胸じゃないです。きっと。ほんの少しだけ、自分がわかるようになったんだと思います。」

 

「……。」

 

 マシロは何も言わない。


 今度はマリが話しを続ける。

 

「マシロさんは話せないと思うので、私の勝手な想像を聞いてくれませんか?」

 

「うん。勿論。……聞くよ。」

 

 すると、マリは腰のポケットからイーネの血液パックを抜き取る。

 

(どうせ使えないんだから。)

 

 マリは血液パックのキャップを開けて匂いを嗅いでみせた。


 そしてまた、蓋を閉じてテーブルに置く。


 マシロが聞く。

 

「それは?」

 

「イーネの血液です。私の力は、他人の血液を摂取して、能力をコピーする力です。1人の力じゃ戦えない。ほんと、モブっぽいですよね。」

 

「………………言ってよかったの?」

 

「分かりません。でも、この話しをしないと、私の言いたいこと。伝わらないと思うので。」

 

「……。」

 

「私は、イーネとベリーの力だけ。コピーできません。」

 

「そーなんだ。」

 

「異質なんです。」

 

「異質?」

 

「最初は分かりませんでした。でも、力を使う内に、最近は、血の味で、この血の持ち主が若い人だ。とか。年いってる人だ。とか。何となく。体格とか。そーゆーのが分わかってくるようになりました。」

 

「へぇ。」

 

「それで。思うんです。イーネとベリーだけは、異質なんです。それに。」

 

「それに?」

 

「見た目は15.6歳くらいですよね?イーネもベリーも。だけど。血の味は。………30歳とか。下手したらもっといってるのかもしれません。」

 

「……。」

 

「私の勝手な想像なんですが。」

 

 マリはマシロの目を見て言う。

 

「イーネとベリーは、あなた達が言う神様。と。同類。あるいは、家族か何かじゃないですか?」

 

「……。」

 

 マシロの表情は優しい笑顔のまま眉一つ動かない。


 マリが続ける。

 

「こっから先の説明には、私は家族って言ってしまった方が。説明がしやすいです。」

 

「……。」

 

「あなた達の神様は、イーネ達に、自分の存在を知らせてはならないと命令した。そう考えると、タトが私に対して、簡単に神様の話しをした理由も、タイヨウさんが答えられない。と言った理由も。納得が行くんです。全員に教えてはならない訳じゃなかった。悟られてはいけないのは、イーネとベリーにだったんです。」

 

「……。」

 

「マシロさんは、神様の家族を戦争に巻き込みたい。そしてそれは、神様に、やってはいけないと言われたこと。」

 

「……。」

 

「でもそーすることで。……待ってるんじゃないですか?…………イーネとベリーを救いに現れる、その人のことを。」

 

「……。」

 

「だから、簡単に殺しちゃいけないんです。貴方が祭りにこだわるのは。神様の家族の、絶対絶命のピンチを演出しなくちゃいけないから。」

 

「……素敵な妄想だね。」

 

「マリちゃんー?!とりあえず、下着とジャージだけ買ってきたから!あとの服はタトの奴が買いに行ってて、どーせあいつ夕方まで買い物してるわ!お風呂もは準備できたから!先はいっちゃいなさい!ね!」

 

 そんなに長く会話していた感覚はなかったが、いつの間にか、買い物から帰ってきたライナックスの声が2人の会話を遮った。

 

「ほらほら!こっち!脱衣所にタオルもあるから。あ。私ので良かったら化粧水おいとくわね!私のお手製!」

 

「え?あ。はい。え?お手製?……あ。えと。……ありがとうございます……。」

 

 姿を現したライナックスに催促されるように、マリはお風呂場へ向かう。


 マシロとの会話はそこで終わってしまった。


 マシロは優しい笑顔のまま、ライナックスに連れられるマリを見送った。

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