25-③ 首輪
少し時間は遡り、テンジョウ家の応接間。
他のメンバーもいるなか、イーネとユウトが会話していた。
イーネが言う。
「お前なんかは、習得早いと思うぞ。」
それにユウトが怪訝な顔をして言う。
「僕普段、ろくに自分の能力使って戦ったりしてないけど。」
それにイーネが返す。
「お前の並外れた身体能力。それにも、お前は無意識のうちに"核"を使用してるんだよ。」
「能力使ってないってばぁ?」
「ちゃんと聞けよ。めんどくさがんな。」
イーネが続ける。
「お前達が"核"と名付けたそれは、力の源みたいなもんだ。能力の発現にも核は使用されてるが、それ以外にも、物理的に人の体を強化する。トラヴィスが能力無しでラスターとの戦いについてこれていたのも、あいつは無意識で自分の中に流れる核をコントロールしてたからだ。この修行は、それのちょっとした応用くらいのもんだ。だからお前は、この修行をクリアすんのは早いと思うぞってことだよ。」
「………………ふーん。」
「ダルがんな。」
そこにニコが割って入った。
『核って。一般人にもあるの?』
それにイーネが答える。
「いや。おそらく"核師"だけ。つまりは、血清に適合した人間にだけ、核エネルギーが存在している。血清適合がトリガーになってるんだろうな。……まぁただ。そもそも"血清適合率"っていうものが存在してんだから、"核"というものを得る為の"種"は、全人類にあるのかもな。」
『……ナニイッテンノカワカンナイ。』
「なんで機械音声使ってんのにカタコトみたいな表現できてんだよ。」
「イーネってツッコミの才能あるよね。」
「…………もう教えねぇからな。……お前ら。」
――――――――
銃口を向けれた団員は驚いて、腰が抜けた状態で座り込んでいた。
その目の前には、折り目のついた日本刀のようなものを持ったレオラフが立っている。
イーネは、その様子を見て思考する。
(…………あいつが。ユウトの師匠。レオラフ・ネグラント……か。"核"を知覚することもできなかったやつが。たったの3日で、"弾丸を刀で切れるまで"になるか?普通。……世の中には。大概。化け物ってのがいるもんだな。)
レオラフは刀を腰のホルダーに収める。
不満を漏らしたのはカナエだった。
「あぁ?!さっそくイージスの許可無しの能力使用ですかぁ?!!反逆行為とみなし、即刻…………!」
「能力なら使ってません。ハーネスの履歴を確認して貰ってもかまわへん。」
「あぁ?!!」
レオラフの冷たい視線が、カナエをはじめとしたイージスに向いた。
レオラフが言う。
「貴方達こそ。あくまでお役目は、僕らの監視でしょう。たまたま殺人鬼が紛れ込んでただけか。それとも……。」
「……。」
「……今のはただの殺人行為。目に余るものがあるのでは?」
「あ゙ー!あ゙ー!あ゙ー!!!!反逆行為ぃぃぃいいい!!お前だけじゃない!!全団員だぁあああ!!!!ぎるてぃぃぃいいいいいいい!!!!!!!!!」
「カナエ。」
カナエが両手に銃を構えた所で、ユウイチロウの静止の声が響いた。
カナエは素直に両腕を下す。
ユウイチロウが言う。
「僕達の役目は監視と"抑制"です。……目に余る行為は謹んで貰いたい。レオラフ・ネグラント。」
「…………。」
緊張した空気で、普通の団員は息が詰まりそうなほどだった。
ユウイチロウが言う。
「では、約10部隊。でしたっけ?これから、討伐任務に……。」
「いや。チームは大きく編成します。」
言葉を遮って言ったジーベルの発言に、ユウイチロウは嫌な顔をする。
「……。聞いていませんが?」
「核師の編成、討伐任務に関する作戦、その他は、こちらの権限ですよね。ユウイチロウ・ユウサクさん。それに、今、この場でお伝えするなら、核師達とイージスへの報告、同時で問題ないでしょう?」
「…………。どうぞ?」
ユウイチロウの促しで、ジーベルが発言する。
それは、ジーベルが一晩考え練り出したチーム構成。
修行によって、色色岩が破壊できた強者はごく一部。
イージスは、もはや敵といっていい。
尚且つ、ジャンクの脅威から団員を守れる構成。
これまでの少人数制を排除し、多人数でユニット数を少なくし、動かせる駒を物理的に少なくする。
そこに、色色灯を使用した修行をへたメンバーを最低2名は配置。
一般の団員がいるユニットは、ジャンクの情報集収などをメインに、大きな動きはとらない。
実際のジャンク討伐、タイヨウへの接近を任務とするのは、たった一つの部隊。
「レオラフ・ネグラントがリーダー。第1ユニット。アンカ・フィズニア。リン・フィズニア。トラヴィス・ゼイリー・アッシュカスター。コヨリ・ハープネス。」
その後も、他の部隊のメンバー構成が発表された。
ナユタ・グリージスがリーダー。第2ユニット。ニコ・リードが所属。
ポッツォ・グライラがリーダー。第三部隊。ベリー・フィズニアが所属。
ダリオ・フェルモントがリーダー。第4ユニット。テンジョウ・ユウトが所属。
イーネ・フィズニアがリーダー。第5ユニット。ケイト・ジョージアスが所属。
それぞれの部隊構成を読み上げたジーベルが、続けて言う。
「このメンバーでの最初の任務地に関しては、おって通達する。………………以上だ。」
ジーベルはユウイチロウに目配せした。
ユウイチロウが言う。
「いいでしょう。しかし今後、より迅速で具体的な報告をお願い致します。貴方は核師ではないですが、核師の分野に深く関与する者も、私達の監視対象であることをお忘れ無く。」
「………………善処します。」
ユウイチロウは、核師達に向き直って言う。
「お前達を生かしておく利益は、ジャンクの討伐にしか存在しない。世界は、貴様ら異能者による実損を危惧している。存在意義を示せ。我らイージスに刃向かえば、それ即ち世界への反逆。肝に銘じておけ。」
――――――――――――
イージスの姿は消え、エントランスには核師とその関係者が残る。
緊張の糸が解けて、核師達は仲のいいメンバーがより集まって雑談をしていた。
ジーベルはハナと何かを話していて、これから何かしらの指示を出すのだろう。
イーネとベリーはエントランスから少し離れ、2人で話しをしようとしていた時。他のメンバーが集まって次々に声をかける。
「なぁ!いーじすってマジやっべかったよな!こっえぇぇぇえええ!」トラヴィス
「トラヴィス先輩。大きな声出すと目立ちます。」ユウト
『首輪結構苦しいヨネ。体ダルいし。』ニコ
「ちょっと!ほんと嫌な感じですわ?!!あのユウイチロウとかいうやつ!子犬みたいな顔して中身鬼ですわ?!!」ポッツォ
「イーネさん!!お、俺!イーネさんと同じチームで光栄ッス!!!頑張りますっ!!!」ケイト
そこにアンカとリンも来ていたが、うるさいメンバーに前を阻まれている。
イーネが言う。
「うるっせぇぇ!何なんだよ!!ワラワラここに集まってんじゃねぇ!!!目立つんだよ!!」
その様子を見て、リンは本で口元を隠しながらクスクスと笑っていた。
「いやぁ。ほんとヤバいなイージス。思ってたよりもやっべぇぇえよぉぉお。ええ?!どーする?!取り敢えず、みんなで定食くいながら作戦会議でもするか?!!」アエツ
「お!いいじゃん!!久しぶりにあそこいこーぜ!豚汁美味いとこ!!」トラヴィス
「お前好きだったよなぁ?!ええ?!あれじゃないか?!鷹になる前以来じゃないかぁ?!!」アエツ
「ばーっか!鷹の時でも食ってたってのぉ!!」トラヴィス
「おい。アエツ。何してんだよ。」イーネ
いつの間にか、トラヴィスと肩を組みながら騒がしくしているアエツに、イーネが苦言を呈す。
「アエツさん。今業務時間でしょ?」ユウト
「お前らが心配で見に来たんだっつーのっ!!」アエツ
「あら。野次馬っていいますのよ?それ。」ポッツォ
「何だぉ!ポッツォ!久々だってゆーのによぉ!」アエツ
「てめぇ。ジレがねぇだけで核師だろ。首輪しろよ。」イーネ
「いやぁぁぁ!やめて!!最近太って首太くなったんだから!はまらなかったら恥ずいだろぉ?!」アエツ
『そこなんだ。』ニコ
基本的にどうでもいい会話をしている合間をぬうように、アンカが呼ぶ。
「イーネ。」
それに反応して、イーネは仲間の間を通ってアンカとリンに近づきならが言う。
「お前らも。くだらねぇことばっか言ってねぇで、この後、どーせ各ユニットに別れるんだ。それぞれのユニットの役割。分かってんだろーな。」
「とにかくぶっとばーーすっ!!!」トラヴィス
「ダリオさんに任せてるから。」ユウト
『ナユタに任せてるから。』ニコ
「…………なんでしたっけ……。緊張してて……。」ケイト
「ベリーと一緒に皆んなの癒し担当。可愛いレディ担当♡ね?」ポッツォ
「え?ちょっとポッツォ。巻き込まないでよ。」ベリー
「お前らがバラバラのユニットに所属してる、ジーベルの采配に感謝だな。」イーネ
そんな事をいいながら、それぞれが動き出そうとした時だった。
アエツが思い出したかのように言った。
「あ!そーいえば!ルアちゃんに会えたかー?!」
「「「「…………………………?!」」」」
アンカ、リン、ベリー、イーネの表情が強張った。
その変化に気づいた他のメンバーの動きも止まる。
そして勿論、アエツも、事の異変を感じる。
「…まだ…………。会えてないのか?」
それにイーネが言葉を返す。
「…………何でルアのことを知ってる。」
アエツが答える。
「…………マーリアスから船に乗って、たった1人でガルダまで来てたんだ。たまたま港の近くの、ガルダ港水族館で出会ったんだよ。」
その言葉に、姉妹4人共が呆れた表情をした。
どうやら、そういうことをやりかねない子ではあるらしい様子だった。
イーネが続けて聞く。
「そうか……。そりゃ悪かったな。会ってないけど、ルアのやつ、どこにいるんだ?」
「それが、新人のガド君って子がイーネ達が帰ってくるまで見てますよって……。」アエツ
空気が凍りついた。
「……………………………………俺は………………。何か…………間違ったことを…………したのか…………。」
アエツはその空気感から、事の重大さを感じていた。
アンカ達に呪いかけた人物であり、統治主総大令をだしたタイヨウが付いていて、何かの企みを秘めている、その人だと。
核師の世界から離れたアエツだけが知らなかった。
イーネは驚きと絶望が混じったような表情をして、アンカの方を見る。
「………………アンカ……。」




