24-⑥ 猶予
ダッ
最初に仕掛けたのはライガだった。
(まずはオッサンから潰す!その為にも、この男を引き止めてフウガをオッサンに当てる!)ライガ
ライガがガドに蹴り込む。
それとほぼ同時にフウガも動き、アエツに仕掛ける。
ライガから繰り出さられる、機敏で変則的な動きを、ガドはヒラヒラと躱わす。
(……こっいっつ…………!帽子おさえながら……!舐めてやがるっ…………!)ライガ
一方で、フウガの蹴り込みを防御姿勢で受けたアエツは焦っていた。
(重っ…………!!こっちの子の方が威力が高い……!!まともに受けてたら骨が折れるっ…………!!)アエツ
ガッガッ
ライガほど変則性はないが、確実に当てにくるフウガの動き。
一方で、朝から子供の発熱に対応し、娘とルアをお野菜レンジャーショーに連れて行き、ライガと一戦交えたアエツは、最強ともうたわれた元核師といえど、歳の分だけ確実に疲労していた。
ガッガガッガッ
ライガとガド。フウガとアエツ。
暫く一対一の攻防が続く。
動きを変えたのはライガだった。
(……このタイミング。必ず当たる。)ライガ
シュッ
ガドの眼球の数ミリ先を、ライガが隠し持っていたナイフがかすめた。
(……躱わすのか?!)ライガ
ライガには、ガドが不敵に笑ったように見えた。
ダンッ
数手やり合った後に、ライガはうつ伏せの姿勢で上からガドに押さえつけられた。
ガドが言う。
「躊躇無しで眼球。やっぱり度胸あるね。」
「ライガっ!!」フウガ
アエツをのせる寸前まで追い込んでいたフウガは、ライガが拘束されたのを見て標的をガドに変えた。
フウガはガドに向かって、その重たい蹴りを繰り出す。
それをガドは、ライガを拘束したままの状態で、片腕で受け止めた。
「片手?!マジかよ!!!」フウガ
フウガが驚く一瞬の隙に、ガドはライガの拘束を緩め、防御した腕を支点にして、あっという間にフウガを制圧した。
一体、どのような手順を組んだのか。
ライガの体の上でフウガに腕十字固めをかけ、ライガを地面に縫い付けたままにしながら、それだけではライガの拘束が緩いため、これもいつの間にか奪い取ったのか、ナイフを使ってライガを牽制していた。
ガタイのいい2人の男子高校生が、完全にガド1人に制圧されていた。
流石に帽子を被ったままには出来なかったのか、黒のキャップは近くの地面に飛んでいて、一寸の曇りもないガドの金髪が露わになっている。
その光景に、アエツは驚きながら近づき声をかけた。
「やるねぇ!!君!!いや!ガド君!!いやぁ。マジ歳感じたわぁ!俺!」
それにガドが言葉を返す。
「この子達も強いですねぇ。核師と戦っているのかと思いました。」
清々しく答えるガドの言葉を、ライガとフウガは苦虫を潰したような表情で聞いていた。
(………………いや…………。このガドって人…………。)フウガ
(………………尋常じゃないくらいヤバイな……。)ライガ
ガドが言う。
「……えっと……。この子達……。どうしましょ……。」
ガガガッ
ガドの言葉の途中でライガとフウガが同時に動きに出た。
その類稀なる身体能力でガドの拘束から抜け出すと、2人揃って一目散に会社の外壁に駆け出す。
そこそこに高い塀をいとも簡単に登り、2人はあっという間に姿を消した。
その一瞬の出来事を、アエツとガドは呆然と見ていた。
少ししてから、ガドは地面に落ちたキャップを拾って被り直しながら言う。
「……すみません。ちょっと油断して。拘束が緩んじゃいました。」
それにアエツが言葉を返す。
「いやぁ!みんな怪我が無いだけ十分過ぎる!本当に助かった!それに。彼らがテンゲのライガ君とフウガ君っていうのは割れたんだ。どーとでもなるさっ!」
――――――――――
タイヨウカンパニーから随分と遠く離れた路地裏で、ライガとフウガは肩で息をしていた。
フウガが言う。
「やばいなぁ……。核師って。やっぱ強いんだなぁ……。」
「…………あのガドって奴が異常なんだろ……。何者なんだ…………?」ライガ
「何者って……。核師でしょ?」フウガ
「…………最後、わざと逃しやがったろ。……核師がそんなことするのか?」ライガ
「…………うーん。分かんないけど。優しそうな人だったし、見逃してくれたんじゃない?ほら。俺らどう見ても高校生だし。」フウガ
「………………。」ライガ
――――――――――――
タイヨウカンパニーの正門。
アエツ、ガド、ユウナ、ルアの4人で立っていた。
辺りはすっかり暗い。
アエツが言う。
「ええ?!イーネ達!テンジョウ家に居ていないのかぁ?!!」
それにガドが言葉を返す。
「みんな行っちゃって、誰も居ませんねぇ。僕は新人なんで居残りだっただけで。あと、2-3日は帰って来ないですねぇ……。」
アエツ、ユウナ、ルアは明らかに困った表情をしてみせた。
アエツが言う。
「そーかぁ…………。あぁ……。どーしたもんか……。すっかり暗くなっちまって……。警備員さんも心配だしなぁ……。」
「…………。」
少し沈黙が流れた後、ガドが言う。
「僕で良ければ、ルアちゃんと一緒に、イーネ達が帰ってくるの待ちますよ。泊まる所も、あてがあるので。」
その言葉に、ルアの目に光が戻って言う。
「いいの?」
それにガドが返す。
「むしろ、ルアちゃんが僕で良かったらだけど。アエツさんは、娘さんと家に帰らないと行けないでしょうし、警備員さんも、僕の方で様子みますよ。」
今度はアエツが言葉を返す。
「本当かい?そりゃ、凄くありがたい話しだが……。」
「僕。暇なんで。……ルアちゃん。それでもいい?」
「うん!」
アエツが言う。
「ほんとにすまないねぇ。今度、ほんとにお礼させてくれっ!」
「いいんですか?じゃあ、今度。食事でも。」ガド
「おお!!いいなぁ!!君、若いのに清々しいなぁ!!」アエツ
そんな会話をへて、タイヨウカンパニーの正門にはルアとガドが残り、帰っていくアエツとユウナを見送った。
2人の姿が見えなくなるまで手を振ってから、ガドはルアと視線を合わせて言う。
「疲れてるだろうから、抱っこしてもいい?」
「うんっ!」
ガドはルアを抱きかかえて立ち上がる。
ガドが会社の方に振り返って、一歩を踏み出した。
その瞬間。
そこは会社ではないどこか。
ルアはキョトンとした顔をしてガドに聞く。
「あれ?お部屋の中?……警備員さんは?」
それにガドが優しく答える。
「警備員さんは大丈夫。心配しないで。あと、ここは今日泊まる所だよ。疲れてるだろうと思って、ちょっとズルしちゃった。」
「……そうなの?」
ガドはルアを抱いたまま足を進める。
その先には、見慣れたオープンキッチンのカウンター。
ガドの姿を確認したラランが声をかける。
「ガド様!お帰りなさい………………。って!ええ?!子供?!ななな、なんでぇ?!!」
それにタトラスが言葉を付け加える。
「え。昔みたい……。まーた拾ってきたんすか?……。」
それにガドが答える。
「違うよ。ひとじちー。」
「……ひとじちって何?」ルア
「うーん。お姫様って意味かな。」ガド
オープンキッチンの周りには、ララン、タトラス、ライナックス、マリ、ミョリ、ミコ。多くのメンバーが揃っていた。




