23-⑥ 世界を滅ぼせますか
ブワァッッ
ユキハルの結界は弾けて消えていった。
ベリーとナズナ。2人の姿を樹木と蔦が覆い、大きな丸い球体となって、畳の床に根を張るようにして固定される。
更には、その樹木の球体の周囲を、木の根や蔓が茂り、広範囲に渡ってジャングルのように、床や壁、天井までが草木にまみれた。
中庭からの太陽の光を反射して、葉がキラキラと光っている。
突然のことに、イーネを除く全員が警戒態勢で、その球体から咄嗟に距離を取った。
「な…………何ですか……。これは……。」
そう言い放ったのはレンだった。
イーネはゆっくりと立ち上がって言う。
「あー。やっぱな。これになったか。」
「……どういう意味?」ユウト
「"生命の繭"。ベリーの技の中でも破茶滅茶なくらい治癒効果のある力だよ。何を治療するのかにもよるが、ベリーの見立てじゃ1日か2日はかかる。こいつの欠点は、防御能力が皆無な所だ。治療が終わるまで動かすこともできねぇ。万が一にも、敵から何かしらの攻撃を受けたら、中の2人は確実に死ぬ。」
「攻撃、防御、回避すらも捨てた治癒特化技って感じ?」ユウト
「ま。そうだな。だから一応、見張りを立てる。アンカやユキハルのレベルの奴なら1人。それ以外の奴なら2人体制だ。……ま。前もって軽くは説明してたろ。……プラン通りってことだよ。」
全員が警戒態勢を解いて、樹木の球体に目をやる。
口を開いたのはユキハルだった。
「では。最初の見張りは私だ。レン。そいつらを案内してやれ。」
「……かしこまりました。」
レンについて、イーネとユウトはユキハルを残して部屋を後にした。
――――――――
テンジョウ家の長い廊下をレンを先頭にしてイーネとユウトが続く。
ユウトがレンに聞く。
「他の家の人に、ナズナさんのこと。話さないの?」
レンは廊下を進みながら、振り返らずに答えた。
「ユキハル様はお話しする気があるようですが、ナズナ母さんが……。まだ、踏ん切りがつかないようで。でも……。いつかは話すと思いますよ。」
「そっか。」ユウト
今度はレンの方から、イーネとユウトに声をかけた。
「みなさん、一つの部屋に集まって貰ってますよ。それと、テンジョウ家の核師にも、イーネから聞いたことは通達して、こちらはこちらで"修行"に入ります。…………僕達も"ハーネス"と"ホープ"の対象者ですからね……。」
「そーかよ。」イーネ
まだ廊下は続いている。
ユウトが口を開く。
「疑問なんだけどさ。ナズナさんのことをユキハルパパに頼んだのはタイヨウでしょ?なんで、ユキハルパパが立場弱いみたいな話しになってたの?」
「…………パパって……。面白がってますよね……。ユウトさん。」レン
「ま。そこは惚れた弱みだろ。タイヨウからしたら、ラッキーだったろうなぁ。」イーネ
「パパがママのことを?」ユウト
「………………パパとママって……やめてもらえません……?」レン
レンの言葉は無視されてイーネが言う。
「お前。気づかねぇのかよ。」
「なにが?」ユウト
「ユウト。お前がアルバラを逃してから、ユキハルの術はマシロの協力のもと完成したんだ。」イーネ
「うん。」ユウト
「目の前の、お前の弟は何なんだよ。」イーネ
「…………………………あ。マリアで出来た子じゃない。純粋な性交渉。あ。ごめん。間違えた。愛か。」ユウト
「わざとですよね?!!」レン
そんな事を話していたら、目的としていた部屋の前についたようだった。「つきましたよ?!」なんてレンが半分怒りながら襖を開ける。
中はテンジョウ家にしては珍しい、洋風の要素もある大きな客間。長いローテーブルの周りを高級そうなソファが並んでいる。
「お。来たな。」
アンカが言ったのをかわきりに、それぞれが喋りだす。
「い、いいいイーネさんっ!ちちちちちわっす!!」ケイト
「イーネ!貴方も女の子なの?!ちょっと訳わかんない話し聞いたんだけ……。」ポッツォ
『遅いよー。まちくたビれた。』ニコ
来客用のソファに、アンカ、ニコ、ポッツォ、ケイトが座っていた。
レンは案内が済めば退席するようで、イーネとユウトが合流してソファに腰掛ける。
一旦落ち着いた所で、ユウトがイーネに言う。
「でさ。女の子のイーネ見てみたいんだけど。」
そう言った瞬間に、また部屋の中が賑やかになる。
『見てみたーイ。マリだけずるーい。』ニコ
「それ!その話し!何度聞いても分かんないですわ!!それよりちょっと!私も見たいんだけどっ!!」ポッツォ
「ままままま!まって下さいっす!!ちょちょちょ!まだ!!まだ心の準備がっ!!!」ケイト
「ほらー。早くぅ。」ユウト
「ふざっっっけんなっ。見せもんじゃねーんだよ!!…………っつか!馬鹿話ししてねぇで!時間ねぇっつってんだろ!!」イーネ
イーネはキレながら、勢いよくテーブルに無色で六角形の石を叩きつけた。
イーネが言う。
「俺らに首輪がつく2日後。それまでに確実に。お前らにはクリアしてもらうからな。」
全員が、少し真剣な顔をして静かになった。
イーネが続ける。
「色色灯を点けろ。ハーネスへの対抗策は、それしかねぇ。」




