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red. -能力者が神様に挑む話し-  作者: テオネオ
第二十三話 やっと主人公と敵が揃った編
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23-④ 世界を滅ぼせますか

 ライナックスがオープンキッチンの中で食器を片付けている。


 カウンターにテレビを置いて、ニュースを流していた。

 

『昨夜、世界を包んだ歌声は、大きな混乱をもたらしています。歌声と共に同時多発的に事件、事故が相次ぎ、金融情勢に影響を与える大企業が大きな方針転換に打ち出すなど続き、世界の金融市場が今日、かつてないほどの激しい混乱に見舞われています。為替市場では主要通貨が急激に変動し、各国の株式市場でも株価が暴落と急騰を繰り返すなど、極めて不安定な状況となっています。----市場ではパニック的な売買も見られ、証券会社には問い合わせが相次いでいます。為替市場でも異常ともいえる値動きが続いており、トレーダーの間では『前例のない混乱だ』という声も上がっています。この影響は世界中に広がっています。-----市場に続き、-----の主要株価指数も急落。-----市場でも先物取引が大幅に下落するなど、金融システム全体への警戒感が急速に高まっています。さらに、一部の国では資本流出を防ぐための緊急措置が検討されているとの情報もあり、各国政府や中央銀行が相次いで緊急会合を開く可能性があるとみられています。今後の動きによっては実体経済への深刻な影響も懸念されています。』

 

 ライナックスは表情を変えずに食器を拭いている。


 ニュースキャスターは続ける。

 

『昨晩、全世界に響いた歌声は"核師"と呼ばれる特殊集団による可能性が示唆されています。"核師"の中枢を担う"タイヨウバイオカンパニーグループ"理事であるタイヨウは昨晩から失踪。理事代理であるユウビに説明責任の追求がなされていますが、タイヨウカンパニーから未だ返答は無いとの事です。』

『………………只今、速報が入りました。三国象徴である統治主総大が緊急会合を開き、その結果、エレメント統治主総大による命名で約80年ぶりに統治主総大令が発令されました。更には、具体的に"核師"に対する文言が記載されており、特定の職種や体質の者を指定した統治主総大令は史上初の、前代未聞の事態となっております。』

 

「…………ライナックスさん……。」

 

 マリがオープンキッチンのカウンターに腰掛けた。


 ライナックスが優しく声をかける。

 

「コーヒーでも飲む?」

 

「…………はい。」

 

 ライナックスはホットコーヒーを準備する。


 コポコポと暖かい音と、小さなニュースの音が流れる。

 

「ライナックスさん……。」

 

「どうしたの?」

 

「…………。」

 

 マリの表情は浮かない。


 少ししてから、ポツリポツリと話し始めた。

 

「私の…………せいですよね……。」

 

「いいえ。違うわ。」

 

「………………。でも……。あの時……。私がラランを怒らせなければ……。」

 

「あの時のラランの歌声は、種を発芽させるもの。自殺した者も、他者を殺した者も、いつかはその結果に至る者達だったのよ。ただ、本当は、時期がバラバラに起こるはずが、同時多発的に起こったせいで、世界は混乱に落ちた。それだけのことよ。」

 

「…………。」

 

 ライナックスが、マリにホットコーヒーを差し出す。


 マリが言う。

 

「でも…………。私は…………。…………まるで他人事のようで…………。おかしいんだって…………。自分のおかしさに気づきました…………。私は…………。私は…………。私を責めないと…………。人では無くなってしまいそうで…………。そんな心配ばかりを…………。そんな…………!心配…………!ばかり!!!…………。」

 

 ライナックスはカウンターの中から出てくると、マリに近づいて優しく抱きとめた。


 ライナックスが言う。

 

「……他人の命なんて、自分が思っている以上に軽いものよ。そうやって悩んでいるだけで、あなたは正常で、何もおかしくないわ。」

 

「でも!……死んだ人にも!家族が……!悲しむ人が……!この世界の混乱で困っている人も!!たくさんっ!!…………。」

 

「……それは貴方が背負うようなものではないわ。大丈夫よ。」

 

「……………………私は…………ずるい…………。そう言って…………欲しかっただけじゃ…………。」

 

「いいのよ。そんなものよ。」

 

「………………。」

 

 マリは静かに涙を流していた。


 ――――――――――

 

―核師に関する国際管理およびジャンク討伐に関する統治主総大令―

第1条(目的)

本令は、核師という職能の適正な統制および運用を図るとともに、世界各地に残存するジャンクの速やかな討伐を通じて、国際社会の安全と秩序を維持することを目的とする。

第2条(核師の統制)

締約国は、核師という職業およびその活動に対し、国際的合意に基づく厳格な抑制および監督措置を設けるものとする。核師の任務、権限および行動範囲は、本条約および関連規定に基づき制限されなければならない。

第3条(ジャンク討伐義務)

核師は、本条約発効後、世界に残存すると推定される二十八体のジャンクの討伐任務を直ちに遂行するものとする。締約国は、当該討伐作戦の遂行に必要な範囲で協力および支援を行う。

第4条(任務完了後の措置)

前条に定めるジャンク討伐任務の完了後、締約国は核師から血清を取り除く措置を実施するものとする。当該措置は、核師の能力の恒久的な停止または無効化を目的として、国際的に合意された安全な方法により行われる。

第5条(履行および監督)

本条約の履行を確保するため、締約国は監督機関を設置し、核師の活動、ジャンク討伐の進捗および任務完了後の措置について監視および報告を行うものとする。


 

 ダンッ

 

 ハナは理事長専用の机に、両手の拳を振り下ろした。


 手に、表情に、力がこもる。

 

「……………………っ…………テステオーレっ…………!!」

 

 核師の能力を抑制、除去する研究はジーベルを中心にして行われていた。


 核師の力の抑制については、"治験1型:ハーネス"が利用される。これは首輪型の機器で、核師の能力を50%削減することができる。


 そして、能力の除去については"試作段階:ホープ"を利用することが政府の決定として打ち出された。


 問題なのは、このホープであり、注射器を用いて対象に打ち込む物になるが、現段階でのマウス実験の結果は。


 全てが死亡。


 人に投与した際にも同様の結果になるだろう事は目に見えていた。

 

 そして核師を監視する為の監督器官が設置された。


 名を"イージス"とされた。

 

 ――――――――――

「……本当にやるのか?」

 

 いつもの白衣姿のジーベルが、向いに座るトラヴィスに再三の確認を取る。


 それにトラヴィスが答える。

 

「俺は、世界のことはよく分かんないけど、仲間がピンチに立たされているっていうのは分かる。」

 

「…………。」

 

「俺が核師であれば、"アッシュカスター家"は核師側に付く。でもそれは、俺が"核師"でなきゃいけないんだ。」

 

「…………。」

 

 ジーベルは横に立つリン。に抱きかかえられるアルバラに目をやった。


 これも再三の確認を取る。

 

「……本当に……。可能性はあるんだな……?」

 

 ジーベルの言葉にうんざりしたかのように、アルバラが答える。

 

『何度言わせる。そいつが元々適合していた血清は"雷地(らいち)"の性質だ。そしてレティ。麒麟である奴の性質も"雷地"。貴様らの研究とやらでは適合率0%だろうが、私の見立てでは50%程度は可能性がある。』

 

「…………それでも……。50%だろう……。それに…………!」

 

 ジーベルは、苦い顔をして、これからトラヴィスに打とうとしている血清に視線をやった。


 トラヴィスが言う。

 

「ジーベル。」

 

 ジーベルがトラヴィスに視線を移す。

 

「俺を信じろ。」トラヴィス


 ――――――――――――――

 理事長専用の椅子にハナが座っている。


 机を挟んで向いには、イーネ、ベリー、ユウトが立っていた。


 イーネが言う。

 

「その首輪をつける前に。頼みたい。」

 

 それにハナは苦い顔をして答えた。

 

「具体的には、何日間の猶予が必要ですか……。」

 

 それにイーネが答える。

 

「長くて2日。移動を考えて3日は欲しい。」

 

「…………。」

 

 ハナは顔を顰めて言う。

 

「既に幾度とない催促を受けている状況です……。善処はしますが…………。3日以上は期待しないで下さい……。」

 

「分かってる。……ありがとう。」イーネ

 

 ハナの言葉を聞いて直ぐにイーネは振り返った。

 

「行くぞ。」イーネ

 

「今すぐにか?」ユウト

 

「当たり前だ。聞いてたろ。急ぐんだよ。すぐ連絡しろ。」イーネ

 

 イーネが言う。

 

「テンジョウ家にな。」

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